ヒトラー容認の国と見られる日本の軍事化・ファシズム化の現在!

2017.9.1 ドイツ・ハイデルベルグ大学の友人から、緊急メールが来ました。北朝鮮のミサイルを、心配してではありません。ドイツの有力紙『フランクフルター・アルゲマイネ』8月30日にこんな記事が出ている、日本はいったいどうなってるんだ、というのです。曰く、大きな見出しに麻生副総理兼財務相の写真入りで、Minister nennt Hitlers Absichten „richtig“ (大臣がヒトラーの意図は「正しかった」と発言!)。Hitler war nicht gut, aber er wollte das Richtige – so äußerte sich der japanische Finanzminister Taro Aso. Nach Protest rudert er nun zurück. と、抗議されての撤回は一応報じられていますが、英語でググると、2013年には憲法改正に関しナチス政権を引き合いに出したうえで「手口を学んだらどうかね」と語って後に撤回したCNN記事等も生々しく残っていますから、財務相ホームページで英語で弁解した程度では、取り返しがつきません。Japanese minister Taro Aso praises Hitler, saying he had ‘right motives’(麻生太郎大臣はヒトラーを称賛し、「正しい動機を持っている」と述べた)というニュースは、世界を駆け巡っています。「普通の国」なら、もちろん即刻辞任、政界追放です。 こんな人間が、戦後日本の政治家で最も世界に知られた吉田茂の孫であり、今日の日本政府のナンバー・ツーです。来週に予定されていた訪米直前で、副大統領と会えないことになり、訪米そのものが中止されました。

麻生副総理のヒトラー発言は、70年前までの同盟国ドイツのマスコミをも驚かせるものですが、ナンバー・ワンの安倍総理も、その国際的常識・歴史認識を疑わせるに十分です。2013年5月、東日本大震災から復興した宮城県松島の航空自衛隊基地を訪問し、アクロバット飛行団「ブルーインパルス」を視察した際、731号練習機の操縦席に座り、親指を立てるポーズで写真撮影に応じました。これに対して、米国ワシントンの政治・外交情報誌「ネルソンリポート」は「(731という数字が浮き彫りになった)安倍首相のこの写真は、ドイツ首相がふざけてナチス親衛隊の制服を着て登場するようなレベル」とし「ドイツでは(ナチス制服着用が)法的にも許されないだけでなく、個人的にも道徳的な反感のためありえないこと」と非難した話は、私の『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社)プロローグでも紹介しました。8月の関東軍731部隊のエリート医師たちの人体実験・細菌戦関与旧ソ連ハバロフスク裁判の音声資料から生々しく明らかにしたNHKスペシャル731部隊 エリート医学者と人体実験」放映と、それをめぐる「幻の731部隊説」によるネトウヨの批判攻撃が、再び海外でも注目されました。安倍首相の祖父が満州国高級官僚岸信介であること、安倍晋三の歴史認識が、加害国としての戦争の反省がなく全国戦没者追悼式演説に「不戦の誓い」さえないことから 、A Pacifist Japan Starts to Embrace the Military(New York Times, Aug 29, 2017)やERIN MURPHY, North Korean Aggression: Gift to Abe’s Constitution Revision Ambitions?(AUGUST 22, 2017)などと、見透かされています。日本のファシズム化は、すでに初期症状だらけで、世界の脅威です。

この後者のタイトル「北朝鮮の攻撃は、安倍の改憲野望への贈り物?」は、言い得て妙です。ドイツの友人が麻生副総理ヒトラー発言にびっくりした日、日本の新聞は、北朝鮮のミサイル一色でした。まさに、国政で失速する安倍首相への「贈り物」です。当日の日本政府の動きは、奇妙なものでした。安倍首相も菅官房長官も、久しぶりで公邸に泊まり込んでいました。北朝鮮の火星12号発射は8月29日午前5時58分頃、6時6分頃北海道襟裳岬上空550キロの高度で通過し、6時12分頃には襟裳岬東方1180キロの太平洋上に落下したとか。日本政府は6時2分に「頑丈な建物や地下への避難」を呼びかける内容のJアラートの「国民保護サイレン」を北海道・東北12都道府県に、6時14分には「不審なものを見かけても、決して近寄らないように」と配信、要するに、「空襲警報」が出ました。 6時26分には安倍首相の第一声、「我が国へ北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、我が国の上空を通過した模様でありますが、直ちに情報の収集・分析を行います。そして国民の生命に対して、国民の生命をしっかりと守っていくために万全を期してまいります」と、あたかも日本が直接の攻撃目標だったかのような談話。 明らかに、事前に準備されたもののようです。もしも前日からミサイル発射情報を持っていたのなら、なぜその段階で、警戒をよびかけなかったのでしょうか。軌道の予測があり、不慮の墜落等の危険があるのなら、真っ先に原発を止めるべきではないでしょうか。案の定、Jアラートはうまく機能せず、増設予定のミサイル迎撃システムが本当に役に立つのかどうかも不確かなままですが、ちょうど31日に防衛予算増額の概算要求が出される直前で、野党に有無をいわせぬ算段でしょう。おまけにドイツのメルケル首相他国際社会の趨勢は、もはや米国と北朝鮮の直接対話による外交的解決以外にないという方向に向かっており、ハリケーン被害対策で大変なトランプ大統領は、中国や韓国の言い分は尊重しても、日本の方を向いてくれない不安が、安倍首相にはあります。それが、二日続けの異例の電話による日米首脳会談になりましたが、気まぐれトランプの東アジア戦略は、あいかわらず不透明。武力衝突・核戦争を望んでいるのは、金正恩と安倍晋三ではないかと疑われても仕方のない立ち位置に、日本政府は追い込まれています。日本政府の対米依存があまりにも深刻なため、麻生副総理のヒトラー発言が、トランプの白人至上主義容認への援軍と捉えられかねないのが、国際社会での情報戦です。

短い夏が終わりました。猛暑の日本を覚悟していましたが、この点は雨天続きで予想外。ただし、3月の大学教員生活終了を見越して1月に宣言した本サイト改造の基本計画、世界の公文書館で集めた史資料のデジタル化と現代史アーカイヴ作成は、ほとんど進みませんでした。関東軍731部隊の戦後の「隠蔽・免責・復権」を論じた『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』の仕上げと刊行(花伝社)で自由時間がとれるという算段でしたが、NHKスペシャル731部隊 エリート医学者と人体実験」とも関わって、この本の反響や問合せが大きく、講演正誤表や補足説明で、一区切りとはなりませんでした。アントニオ・グラムシ没後80周年にちなんだ寄稿「現代社会科学の一部となったグラムシ」(『唯物論研究』139号、2017年5月)に続いて、ロシア革命100年の雑誌原稿も書かなければならず、蔵書整理や史資料のデジタル化の作業は、秋に持ち越しです。夢見た「自由人」生活 は、まだまだ先のことになりそうです。本サイトも、しばらくは、国際情勢や安倍内閣の行方を追いかけ続けることになりそうです。原爆・原発問題で、私もちょっぴり出演している原村政樹監督の長編ドキュメンタリー映画いのちの岐路に立つ~核を抱きしめたニッポン国」 の東京での上映会は9月9日(土)「たんぽぽ舎」大阪では9月23日ー10月6日淀川文化創造館「シアターセブン」で上映とのことです。ぜひご覧になってください。

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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