ボイコットに苦慮するイスラエル―英BBCの報道

英国の公共放送BBC電子版は23日、「ボイコット運動への対策を探すイスラエル」のタイトルで、パレスチナ占領地の過酷な支配を続けているイスラエルへの、国際的ボイコット運動「BDS」の活動とその影響を、エルサレムから伝えた。筆者はケヴィン・コスナー記者。イスラエルと占領地(ヨルダン川西岸とガザ)で生産した農工製品の不買とイスラエルへの投資ストップを掲げるこの運動は、設立から10年。BBCの電子版はいま改めて、この運動について紹介し、ボイコットを含む国際的な圧力で人種隔離政策(アパルトヘイト)を遂に放棄した、南アフリカの先例を意識していること、イスラエル側が「南アとは違う」「南アのようにはならない」と反論していることを報道した。

boycottイスラエル・ボイコット運動について報道したBBC電子版(6月23日)

BBCの報道を抜粋して紹介しようー
世界の国際関係の中で、不承認の意思を表明するために、貿易制裁、旅行制限から武器禁輸までの、さまざまな手段が執られている。
しかしそのどれもが、成功した消費者のボイコット運動のように、大きな反響を呼んだものはすくない。現代のキャンペーン運動の模範例は、少数白人の支配を倒した南アフリカでのアパルトヘイト(人種隔離政策)反対運動である。
その運動家たちは、南アフリカ人たちが特に憎んでいた南アフリカ・チームと試合をしないように世界を説得し、そのことをケープタウンから輸出する果物の購買を拒否するかどうかのリトマス試験にした。その詳しい経済効果をデータ化することはできなかったが、政治的なインパクトは大きかった。それは、アパルトヘイト白人政権に対して、世界家族の一員ではないというシグナルになったからである。それは疑いもなく、経済的孤立感を深めさせ、南アフリカ政府に政策変更をさせる圧力になった。
▽植民地主義の非難
近年、世界中のパレスチナ支持者たちは、同じような圧力をイスラエルにかけてきたーそしてイスラエルは、人種隔離政権と比較するどんな発言に対してもひどく怒り、それを押し返す外交的な手段を探してきた。
BDSの指導者で、ロンドンにある全国委員会議長のミカエル・デアスは、その運動の潮流が進んでいることを、明確に信じている。
「イスラエル国内では、南アフリカが直面したような、国際的孤立が深まっていることへの恐れが強まっている。10年間にわたり、我われが創り出してきた圧力が、多くの普通のイスラエル人に、現在のような形で植民地主義が続けられるのか、という疑問を生じさせていることは、大変興味深い」とデアスは語った
イスラエル人にとって、「植民地主義」という言葉は、前世紀に欧州諸国がアフリカやアジアその他いたるところで植民地を獲得したのと同様、この聖地でのシオニスト入植地を支えた強い意味を持っているからである。
イスラエル人は、この土地への古代からの権利を主張しているのであり、植民地主義を一つの章に過ぎない見なすべきでない、と言ってきた。
(中略)
BDSは、フランスの投資会社VEOLIAのイスラエル市場への投資を止めさせた、と信じている。BDSは同社の欧州各地の投資家たちに、1967年戦争でイスラエルが占領した土地に建設した入植地を、同社が経営していることを説明して、投資を引き揚げさせたためだという。占領地での入植地建設は国際法違反であり、そこはパレスチナ国家建設に必要な土地だからだ。同社は当時、損失補てんのためイスラエル企業に売却したと発表したが、BDSは投資家たちへの草の根の働きかけが成功したという。
国外からの圧力があっても、ビジネスを売り払ったり、移転したりしなかった企業もある。Yaakov Berg社で、ヨルダン川西岸(同社の呼び方は聖書でのジュデア・サマリア)のPsagoに作ったワイン工場。経営者のYaakovはBDSのボイコット呼びかけを、古臭い反イスラエル・反ユダヤ人の現代的形態だと拒否したという。
(中略)
Yaakov は、自分はパレスチナ人を雇う良い経営者だと思っている。彼がいなければ
彼らに仕事がない、という。他の多くのイスラエル人と同様、彼はBDSについて、イスラエルを害して、パレスチナ人を助けない運動だと非難する。
(イスラエルから輸出される農業、工業製品のボイコット(不買)運動には、占領下入植地の製品と、67年戦争以前のイスラエルの領土からの製品を区別したこともあるが、いまは、両方すべての製品のボイコットをする運動になっている―中略)
ボイコット運動の活動家は、入植地の製品を買うことは、占領下のヨルダン川西岸でのイスラエルの存在を強化することにもなる、という。
これに対し、ホトヴェリ・イスラエル外務次官は、イスラエル・ボイコットは反ユダヤ主義であり、世界中の善良な人々をBDSは騙していると非難、「彼らは入植地の存在を無視し国境を無視する。意識にあるのはユダヤ人国家が存在してはならない、ということだけだ」と攻撃した。
(中略)
同次官は、「イスラエルとアパルトヘイト(人種隔離主義)に共通点は何もない」と主張した。

残念ながら、日本の企業や団体がイスラエル・ボイコットに参加したケースは知らない。取引先を他国に変更したケースは、あるのかもしれない。果物や工業製品は売られている。
安倍首相に至っては、今年1月、昨年夏のイスラエル軍ガザ侵攻で、子供、女性を多く含む2000人以上の住民が殺され、数千の住宅が壊滅してから半年もたたないのに、イスラエルを公式訪問し、首相ネタニヤフと握手した。全世界への恥さらしだった。

 

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5528:150728〕