これを書いている5月8日から3日間、中国の習近平国家主席がハンガリーを訪問します。 EU から種々の制裁措置を受けているハンガリーは、東方外交を積極的に進め、瀬戸際外交によって自らの地位を確保しようとしています。ロシアや中国との経済取引には法外な裏金が付いて回るので、政権政党の資金基盤の強化や政権周辺の 政商たちに経済的利益を上げさせる重要な手段になっています。
日本からの小包郵便には、書籍であっても書籍代に送料を上乗せした課税基礎額に27%の付加価値税をかけ、配達に際してさらに付加価値税徴収手数料まで請求します。ところが、中国発のインターネット販売では、ハンガリーに設立した会社を介して取引を成立させ、ハンガリーの消費者に中国から商品を直送しています。その際にはハンガリーの消費税抜きで郵便小包が配送されます。
これについてハンガリー郵便(Magyar Posta)は、「中国国内で消費税が支払われているので、ハンガリーの付加価値税は免除される」という、国際慣行に反する奇妙な説明を行っています。明らかに、政府上層部からの指示によって、消費税を免税することで中国商品の流通販売を手助けしています。こうやって過剰生産に悩む中国企業を助けながら、その裏で便宜を図った政治家や政商に裏金が渡るというスキームがあるのでしょう。
ハンガリー政府は中国政府との間で、中国警察のハンガリー国内での活動を容認する協定を結びましたが、中国への忖度が度を越しています。ハンガリーの主権を守るために欧州委員会の理不尽な要求に屈しないと宣言しながら、中国やロシアには主権を渡しても構わないという矛盾した対応です。
5月5日には、フィデス(政府与党)の牙城であるデブレツェン市で大規模な反政府集会が開催されました。マジャール・ピーテルの呼びかけによる大衆集会には数万人が集まり、驚かせました。これまで、ブダペスト以外の都市で、反政府勢力がこれほどの規模の集会を催すことがなかっただけに、政権政党のみならず、既存の野党もマジャー ル・ピーテルの人気に脅威を感じています。無党派層で政治に目を向け始めた人々や、既存の政党に満足しない人々がそれなりの数でいることを証明しました。マジャール・ピーテルは、「オルバン-ティボルツ(オルバン首相の女婿)-メーサーロシュ(政商)株式会社の解体」を叫び、聴衆の喝さいを受けました。
デブレツェン市は欧州最大規模になる中国のバッテリー工場を誘致し、政府は住民投票などの要求を一切受け付けず、国家的事業としてバッテリー工場の建設を進めています。来月の一斉地方選挙へ向けてのフィデスの市長候補のプラカードが中国語でも貼り出されるなど、与党は中国への依存を深めています。 移住許可証を保持している外国人には地方選挙の投票権があります。しかし、デブ レツェン在住で移住許可証を保持している中国人はそれほど多くないと推定されます。数百数千の中国人票が当選に必要になっている情勢なのでしょうか。
Forbes.hu(https://forbes.hu/uzlet/novak-titkarsag-gazdasszony-fizetesek/)には、 辞任したノヴァク・カタリン前大統領の優雅な日常生活が暴露されています。ノヴァク女史は大統領職を辞した後に与えられる住宅の権利は行使しないが、独立事務所開設の権利を行使し、3名の秘書、1名の事務所執事を雇用していることが判明しました。 研究者でもないノヴァク女史に3名の秘書を使うほどの仕事があるとは思われませんが、最大許容限度の秘書を抱えています。
秘書3名の給与(月収)は、240万Ft(フオリント、1Ft≒0.43円)、 100万Ft、85万Ftで、執事のそれは70万Ftだと暴露されています。各秘書には独立した部屋が割り当てられています。もちろん、自らの給与(月額460万Ft)、秘書・執事への給与、事務所賃料、専用車(運転手付き)もすべて国家予算から支出されており、月々の経費は2000~2500万Ftを下らないでしょう。
豊かとはいえない国家財政の中で、国民から27%の消費税を徴収しながら、辞任した大統領にこれほどの待遇を与えているのは驚きです。権力者の自然権のように、 政治家が各種の特権を授与するのは、社会主義体制時代からの悪しき慣習です。ハンガリーの体制転換はいまだ道半ば。ポスト・オルバンとポスト・ジュルチャーニ の世代交代が実現するまで、ハンガリーの政治は旧体制の軛から逃れることはできません。
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