今、日本に到着すると・・・ 空港での水際コロナ対策緩和措置の現状

 3月1日より、日本でも水際対策の緩和が実行された。強制隔離対象国が大幅に減らされ、自主隔離期間も一律に短縮された。また、3回のワクチン接種が済んでいる場合には、自主隔離そのものを求めない措置も導入された。この緩和が実施されたのに伴い、筆者はすでに予約済の3月3日ヘルシンキ発のJAL便で、3月4日羽田空港に到着した。
 以下はその体験記です。なお、日本はまだロシアの航空機の発着を禁止しておらず、筆者が搭乗したJAL便はロシア領空を飛行して、羽田に到着しました。しかし、帰路はロシア上空を避けて、アラスカ経由になるような状況です。

ファーストラック(Fast Track)の導入
 これまで関西空港到着に限って導入されていたインターネットを使用した事前書類審査が、成田・羽田到着にも導入されました。入国者健康居場所確認アプリ(my SOS)に、事前書類審査アイコン(検疫手続事前登録)が追加され、これにそって規定書類を日本到着16時間前までに受付が完了(審査終了)すれば、到着後の書類確認作業をパスできるようになりました。
 事前手続きで提出しなければならない書類は以下の通りです。
1. 質問票(WEB上で回答)
2. 誓約書(WEB上で回答)
3. ワクチン接種証明書(画像を送信)
4. 出国前72時間以内の検査証明書(画像を送信)
 上記の4つの書類のうち、上から3つは簡単に済ますことができます。ただし、接種済ワクチンの種類が日本で受容されているもので、接種証明書には氏名、生年月日、ワクチン種類、ワクチン接種日、接種回数が明記された正式な証明書でなければなりません。EU諸国で公的機関が発行している証明書はそのままプリントアウトして、これをカメラで撮影して、その画像を送れば問題ありません。
 やや面倒なのは、4番目のPCR検査陰性証明書です。検査機関が英文で、氏名、住所、生年月日、パスポート番号、性別を明記し、かつ検査の日時(日・時刻)、検査方法、検査時刻を明記しているものでなければなりません。たんに氏名と陰性証明だけでは受け付けられません。したがって、英文検査証を発行できるクリニックか、分析機関でなければなりません。英文を出せない場合には、検査機関が労働厚生省指定の書式に必須事項を記入し、クリニックの印章とサインが必要です。この場合、一つの事項でも未記入だと受け付けられず、再送付の連絡がきます。
 私は労働厚生省指定の書式をクリニックに渡し、翌日に受け取りましたが、検査時刻が未記入だったことに気づかず、そのまま送付しました。長時間の審査の後に、欠陥書類として再送付の指示が来ました。検査時刻を書き入れ再送しましたが、なぜか「不完全」とまた再送付の指示が来ました。仕方なく、手元にあった分析機関の英文分析書を送りましたが、今度は画像不鮮明のため、未受理という返答が来ました。このため、写真を撮り直し、厚生省指定の書式と分析機関の検査書の2つの書類を送り、数時間経過して審査終了の返答がきました。最初に送付してから10数時間経過して、ようやく審査が完了しました。
 この事前審査が完了しない場合は、終わっていない書類の審査は到着後に行われることになります。完了している場合には、携帯電話の終了審査表示を見せるだけで、この書類審査ポイントを通過できるという仕組みになっています。

空港内を長距離移動
 機体が着陸しても、国土交通省の指示を受けるまで、機体から降りることはできません。混雑度を見ながら、指示が出るようです。幸い、私の到着時点の混雑度が低かったことから、5分程度の待機の後に、機体から外に出ることができました。
 問題はその後です。機体を降りてから最初のチェックポイントまでの距離がとても長いのです。私の感覚では1.5㎞程度だったと思います。距離を長くとっているのは、行列による混雑を緩和させるだけでなく、空港内には一定スペースを確保できる場所が限られているからです。しかも、「動く歩道」とは逆方向に向かうので、この長い行程のほとんどの部分は「動く歩道」を使えません。手荷物が多いと、この行程はかなりきついものです。
 この最初のチェックポイントで書類が確認されます。事前審査が終わっていれば、ここを簡単にパスできます。事前の審査が終了していない場合には、書類記入や提示書類の確認のために一定時間の拘束を受けます。このチェックが済むと、次はPCR検査を受けることになるのですが、隣接する部屋で行われるわけではなく、再び500mほどの距離を、階段を昇り降りしながら検査場まで歩きます。検査場に着くころには、汗をかき、喉がからからになります。しかし、検査場に入る入り口には、水を飲まないように指示書きがあります。唾液に水が混じると、検査にならないことは理解できますが、喉が渇いた状態で唾液を出すのは簡単ではありません。試験管に2㎝ほどの唾液が必要です。皆さん、かなり苦戦していました。
 係員に「これだけ喉が渇いていると、とても無理です」というと、それならテントの中で鼻咽頭ぬぐい液をとる検査がありますという。「こちらの方は検査に時間がかかるのですか」と聞くと、「唾液検査と変わりません」というので、お願いしました。
 検査が終わると、今度は検査結果待機場へ移動することになります。階段を昇降して、500mほど歩いたところに待機場がありました。ここにたどり着くまで、機体を降りてから少なくとも2㎞は歩いたでしょう。ここで、結果がでるまでほぼ30-40分待機します。
 検査終了番号がモニター表示されると、待機フロアのデスクで陰性(陽性)証明が得られます。陰性の場合は、そこから入国審査(パスポートコントロール)に向かい、それを終えてトランクを引き取るためにターンテイブルに向かいます。この距離もそれなりにあり、3-400mの距離を移動する必要があります。空港内の建物をぐるぐる回って、およそ2.5-3㎞の距離を歩いたことになります。
 私の場合、機体を降りてからここにたどり着くまで、およそ1時間半でした。すでにトランクはターンテイブルの横に並べられており、それをピックアップして税関コントロールを通過し、ようやく外に出ることができます。機体到着から1時間50分でした。

何を改善すべきか
 2月末まで維持された強制隔離措置を含む検疫体制は、カオスのような状況を生み出しました。機体を降りてから隔離指定宿泊所へ移動まで少なくとも7-8時間を要したと報告されています。しかも、どこへ連れていかれるのかは最後の瞬間まで分からないというのがほとんどだったようです。すべての入国者を強制隔離しようとすれば、宿泊施設を確保するのは至難の業です。初めから無理のある態勢でした。入国者を事前に分類して、接種回数と事前のPCR検査陰性を基準にして、強制隔離者を減らす必要がありました。
 3月1日から実施された緩和措置では強制隔離のほとんどが解除されて自主隔離に移り、3回接種者の自主隔離免除も初めて導入されました。これで入国者の身体的な負担が大きく減じられました。しかし、まだ、この態勢では一般旅行者を受け入れることはできません。そのネックになっているのが、空港でのPCR検査です。空港でPCR検査を実施する限り、1日に検査できる数に限りがありますから、多数の一般旅行者を受け入れることはできないでしょう。
 ヘルシンキ空港も羽田空港(国際線ターミナル)も、お土産屋さんはほとんどがシャッターを下ろしています。開いているのは飲食店だけで、しかも通常の半分程度のお店しか開けていません。旅行客が少なくて、店を開けても赤字が増えるだけだからでしょう。

PCR検査体制の変更が必要
 現在、接種証明があれば、欧州への入国は問題ありません。事前のPCR検査も空港でのPCR検査も必要ありません。ところが、日本への入国には接種証明だけでなく、出発72時間前のPCR検査陰性証明に加え、到着時のPCR検査の陰性証明が必須となっています。このうち、入国者受け入れの最大のネックになっているのが、空港でのPCR検査です。これを維持している限り、一定数以上の入国者を受け入れることができません。
 出発72時間以内のPCR検査陰性を求めているなら、少なくともワクチン2回接種者の空港でのPCR検査は不要とすべきでしょう。そうすれば、コロナ以前の状況に近い入国者を受け入れることは可能です。空港での検査は接種回数が1回、あるいは2回目の接種から半年以上経過している入国者(さらにサーマルカメラで発熱が確認できる入国者)に限定して、PCR検査対象者を限定することが必要です。そうすれば、混雑度を緩和できるし、ワクチン接種者の多くを検査なしでパスさせることできます。
 事前のPCR検査結果を前提にするなら、基本的に空港での検査数を限定しても問題ないはずです。こうやって入国条件の自由度を高めないと、国際旅行にかかわる事業者の存続が不可能になります。規制することを自己目的にするのではなく、より多くの入国者を受け入れても問題ない態勢を構築することが必要です。その最大のネックは空港でのPCR検査態勢です。この態勢を緩和しない限り、1日に入国できる人数を制限せざるをえません。いっそうの緩和が必要です。

初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11834:220310〕