9日から始まった、パレスチナ自治区・ガザへの凄惨なイスラエル軍の爆撃と同地区を支配するイスラム武装勢力ハマスの対イスラエル・ロケット攻撃の応酬は19日、エジプトの仲介でやっと、停戦を双方が受け入れた。バイデン民主党政権下の米国は、ガザへの、イスラエル軍の大規模な爆撃が継続できるよう、国連安全保障理事会の停戦要求決議を妨げ続けた。これによって、イスラエル軍はガザへの爆撃を連日続けた。英BBCの報道によるとこの11日間にー
ガザでのパレスチナ人の死者は少なくとも240人(うち子供65人)。イスラエル軍の爆撃で、16,800戸の住宅が損傷し、うち約1,000戸が完全に破壊された。
イスラエル軍によると、ハマスはイスラエルに向け約4,300発のロケット弾を発射。その90%はイスラエル軍の迎撃ミサイルで撃墜されたが、残りが着弾、12人の死者(うち子供2人)が出た。
ガザでは、イスラエルの爆撃で多くのビルが破壊、倒壊した。そのうちの中層ビルの一つには米国のAP通信社の支局、中東では通信社として最も国際的信頼度が高いアルジャジーラの支局がある。今回、イスラエル側から攻撃1時間前に通告があり、ビル外に避難したために人命だけは助かった。ビルが倒れる映像は世界中に報道されたから、観た方も多いと思う。
安全保障理事会は、国連の任務の中でもっとも重要な機能と権限を担い、「国際平和と安全の維持に主要な責任を負う。」イスラエル軍のパレスチナ・ガザ地区への、大規模、残虐な攻撃に対して、バイデン政権下の米国は、国連安全保障理事会の停戦決議を引き延ばし、成立させず、イスラエルに爆撃やり放題の時間稼ぎをさせたのだ。
安保理は常任理事国5か国、非常任理事国10か国で構成される。国際紛争が起こるたびに、紛争の拡大防止、解決のために重要な役割を果たしてきた。世界各地の戦争、紛争の多くで、米国も安保理を活用してきた。それが、今回は、米国が安保理を避け続けたのだ。
私は昨年の米大統領選の初めから、大統領選挙での勝利、1月の民主党政権スタート、そして精力的に展開した国連、外交まで、バイデン政権を好意的に見つめ、書いてきた。
最近では、トランプ前政権がぶち壊したイラン「核合意」の復活へのバイデン政権の努力について、本ブログでも最近書いたばかりだった。
イスラエルとの関係については、トランプ前米大統領が共和党の中でも異常なほどの親イスラエルだったが、民主党のほうが全体に親イスラエル傾向が有力だと思う。しかしそれ以上に、米民主党の政策の根底にあるのは、1948年のイスラエル建国、その後のアラブ諸国との4回の中東戦争の終結・調停に果たした米国の役割だ。4回の中東戦争の結果、パレスチナは自治区として、聖都エルサレム東半分を含むヨルダン川西岸地区、ガザ、ゴラン高原(イスラエル占領下)が国際的に認められている。
その一つガザは、イスラエルのほか、西部国境をエジプトと接し、人と物資の交流が自由だったが、2013年のエジプトの政変で軍が支配して以来、エジプトが事実上国境を閉鎖した。
人口200万人余のガザ地区の住民は、国際的な支援に大きく助けられながら、パレスチナ人としての誇り維持し、生活を続けている。
しかし、パレスチナ自治政府があるヨルダン川西岸地区とは、間にイスラエルを挟んで遠く離れ、生活環境も厳しい。政治的には、パレスチナ本体は、故ヤセル・アラファト以来、穏健派で国際的にも承認されているファタハが政治的に支配してきたが、ガザではイスラム過激派とされるハマスが次第に勢力を伸ばし、支配している。ハマスが住民の支持を集めているのは、ヨルダン川西岸ラマラの自治政府へのガザ住民の不満・不信が強いことと、ハマスのメンバーには不正が少なく、住民の様々な困難に対応してくれる、とみる援助関係者も少なくない。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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