安倍内閣の災害便乗型「ショック・ドクトリン」にご注意!

著者: 加藤哲郎 かとうてつろう : 一橋大学名誉教授・早稲田大学客員教授
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かと 2016.5.1  熊本県・大分県の群発地震は、まだ続いています。最初に予測できず「前震・本震」としたものが、北東阿蘇・大分方向(伊方原発)へ、南西八代・鹿児島(川内原発)方向へと新たな地震を誘発し、気象庁HPの記録を見ると、震度1以上はすでに1000回をこえ、4月29日にも、大分県中部で震度5強の地震がありました。すでに家屋の倒壊被害は阪神・淡路大震災をこえ、なお2万6000人が避難所生活。連休でボランティアの市民が多数入っていますが、余震・倒壊・地滑りをおそれながらの、苦難の日々が続きます。4月24日投票の衆院補選への効果のタイミングを狙ってか、激甚災害指定はなぜか引き延ばされましたが、いまだに「大震災」とは認定されていません。たぶん消費税引き上げのタイミングに関わる、安倍内閣の思惑でしょう。被災者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

かと 私の地震学の友人は、元大学新聞の先輩・島村英紀さんぐらいですが、その活断層の定義の曖昧さ中央構造線上で初めて体験した巨大地震火山噴火と大地震の関係等の指摘には、説得力があります。わからないことはわからないとして、「想定外」に備えるべきだといいます。雄大な自然の営みを前にした、科学者の謙虚さを感じます。それに対して、原子力規制委員会の田中俊一委員長の態度。「科学的根拠がなければ」と一見独立性・中立性を装いながら「国民や政治家が止めてほしいと言ってもそうするつもりはない」「いまの熊本地震がどういう進展をするかについて不確実性があるということは承知していますが、その範囲でどういう状況が起こっても、いまの川内原発については、想定外の事故が起こるというふうには判断していません」。文部科学省が世界水準を推奨する日本の自然科学は、5年前のフクシマから、いったい何を学び得たのでしょうか。

かと 社会科学・人文科学の世界には、ようやく災害社会史や「災害ユートピア」「エリート・パニック」(レベッカ・ソルニット)、「ショック・ドクトリン」(惨事便乗型資本主義、ナオミ・クライン)などの研究が、定着してきました。熊本大震災についても、現在進行中です。「エリート・パニック」後の「ショック・ドクトリン」には、平時の重要な争点をそらして政治を災害対応に集中させ、その争点そのものをエリートに有利な方向で忍び込ませ、変容させる作用があります。熊本での「前震」段階から官房長官が憲法への緊急事態条項挿入を示唆し、自衛隊の大量投入、米軍オスプレイ出動などが進められたのも、その事例です。与党候補苦戦が言われていた衆院北海道5区補選での、千歳・恵庭における自衛隊関係票動員による辛勝も、熊本大震災と無関係とは思われません。シリア内戦も、パナマ文書も、アメリカ大統領選挙も、情報戦の後景に退きました。かのNHKは、地震に便乗した原発安全神話の再構築。そして自衛隊の「国土安全隊」風活動映像、北海道での野党共闘敗退を見計らっての、安倍首相の正面突破作戦。憲法9条について曰く、「(自衛隊を)憲法学者の7割が『違憲だ』と言っている状況のままでいいのかということに真剣に向き合わなければいけない」と述べて、改憲を改めて争点化。5月3日は憲法記念日。まずは前文から音読して、「ショック・ドクトリン」への抵抗力をつけましょう。


かと2016.4.17   熊本大震災の被災者の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。まだ20万人近くが厳しい避難所暮らしですが、稼働中の川内原発は、本当に「異常なし」でしょうか。16 日未明におきた「本震」の規模、午前10時現在の報道では、気象庁HPはマグニチュード7.1、日本のテレビ・新聞報道は7.3、米国CNNは7.0コンマ2違うとエネルギーは2倍といいますが、いったいどれを信じたらいいのでしょうか。 記者発表はM7.3に統一されたようですが、「前震・本震・余震」という流れは想定外で、しかも阿蘇と大分の地震は別の震源だと言います。大きくは西日本全体を貫く中央構造線に沿った九州の活断層がひずみ集中帯上にあり、熊本で溜まっていたエネルギーを放出し、北東方面に震源地が移動して阿蘇・大分の地震を誘発し、八代など南西方面でも活性化してきたそうです。北東の延長上に伊方原発があり、南西に移動すると稼働中の川内原発に近づきます。川内原発の耐震対策は「震源距離10km圏内でマグニチュード6.8を想定、最大加速度は620ガル」で、免震重要棟も作らず動き始めました。ところが今回14日の「前震」震源地益城町では、マグニチュード6.5で、上下動1399ガルを記録したとのことです。安倍内閣は、あの丸川環境相原子力規制委員会に、原発の判断を委ねる無責任。その一方で、自衛隊2万5000人に加え、米軍に要請して問題のオスプレイを被災地支援に投入世界中が心配しています。日本は、あの3/11から、何を学んだのか、と。

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://members.jcom.home.ne.jp/tekato/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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