寓話「アベのミックソ」 (続)

第二話 「アベのミックソ」結末
真正維新議員「アベのミックソ総理。金融緩和政策とインフレターゲットについて、質問いたします。まず、追加的金融緩和政策ですが、すでに対GDP 比でみた日銀保有の国債残高は先進国の中でも一番高い水準にあります。すでに金融緩和をおこなって15 年以上にもなります。金融政策で景気回復しようという政策の効果がないことははっきりしています」
アベのミックソ総理「今までですね、日銀が行ってきた緩和政策はですね、中途半端なんですね。少しずつ資金枠を増やしていってはですね効果がないんです。だから、私が無制限に緩和政策をやると言った途端、どうですか皆さん、すぐに株価が上がり、円安になったでしょう。これなんですね。思い切ってやることが、大事だと」
真正維新議員「ミソクソ総理、いや失礼、アベのミックソ総理、株価が上がったのは、将来の長期金利の上昇を見込んだ欧米のヘッジファンドなどが、資産価格の上昇を見込んだ投機的な投資を始めた結果だと思いますが。これではマネーゲームが始まるだけで、実物経済の活性化に結び付きません」
アベのミックソ総理「仮にそうだとしても、株価が上がり、円安が始まったことが大切なんですね。これは今まで誰もできなかったことなんですね。私が主張して初めて、こういう良い方向に動き出している。とにかく、景気が上向くという実感がでるということが大事だと」
真正維新議員「実物経済に資金需要がないのに、金融緩和だけが先行すれば、1980 年代後半のような資産バブルが発生するリスクはありませんか。そうなれば、日本はさらに深刻な打撃を受けることになります」
アベのミックソ総理「現在はですね、まだあの時のような資産インフレが始まっていません。ですから、とにかくデフレからインフレに転換できるような政策を展開することが大事だと」
真正維新議員「現在は、賃金が上昇しなくても、物価も上がらないので生活はなんとか維持できますが、賃金が上昇せずに物価だけが上昇すれば、国民生活は苦しくなります」
アベのミックソ総理「インフレへの転換過程で、仮にそういうことがあっとしてもですね、いずれ経済は活性化して景気が良くなりますから、賃金の上昇も始まって、すべてが好転するんですね。それを信じて思い切った緩和策をやることが大事だと」
真正維新議員「日本のような成熟した経済で実物経済の量的拡大が見込めない以上、通貨量だけを一方的に増加すれば、資金は実物経済に回らず、金融資産や不動産の売買に資金が集中することになります。そうすれば、再び、同じバブルが始まって、手がつけられなくなります」
アベのミックソ総理「たとえですね、そういうことになったとしたら、引き締めをやればよいわけです。何も今からその心配をする必要はないと。とにかく、景気を上向きにすることが大事だと」
真正維新議員「1980 年代のバブル当時、日銀は金融引き締め政策に転換するのが遅れました。そのためにバブルの後遺症を深刻なものにしました。金融界だけでなく、政治の世界までもが押せ押せムードで動いている時は、すべての人が引き締めに反対しますから、日銀はなかなか引き締めに転じることができません。同じ轍を踏まないという保証はありません」
アベのミックソ総理「それはですね、その時になって考えればよいことであって、まだですね、何も起こっていない時から、そういう心配をするのは意味がないですね。とにかく大胆な緩和を始めることが大事だと」
真正維新議員「次に、インフレターゲットについてお聞きします。現在、日銀は1%の物価上昇目標を掲げています。これでも十分だと思いますが」
アベのミックソ総理「目標を掲げるだけでは駄目なんですね。それを実現する強い政策がないと。だから、目標を設定したら、何が何でもそれを達成する姿勢がないと駄目なんですね。だから、政府と日銀が一体となることが大事だと」
真正維新議員「1%でなくて、2%に設定する意味はなんでしょう」
アベのミックソ総理「理想的にはですね、名目で3%の上昇で実質1%が望ましいんですね。そうすれば、20 年たてばGDP は倍近くなりますから。そういう経済発展の見通しをはっきりさせることが大事だと」
真正維新議員「意味不明な説明ですが、所得倍増論などの古い考えに影響されているのでしょうか。日本のような成熟経済ではもはや量的に大きくしようとする時代は終わっており、これからは経済の構造や質をどう変えていくかという視点が大切です。人口が減り、労働力が減っていく時代に、高度成長期のような考え方は時代遅れです。経済学者のハマ教授は、このような旧来型の思考のアベのミックソ政権を、ウラシマ・タロウ政権と呼んでいます。50-60 年前の発想から抜け出ることができない人たちだと」
アベのミックソ総理「私は寡聞にしてハマさんを知りませんが、失礼なレッテル張りですね。もしかしてイカサマ維新のハシモトさんが『ハマと言う紫頭おばはん』と呼んで物議を醸した人のことでしょうか。おばはん、失礼、ハマさんが何を言っていようと、私はですね、日本のGDP をもっと大きくして、シナ、いや中国に負けないほどの大きさにすることが大事だと。そうすれば、シナ、失礼、中国も簡単に日本を見下せないと。尖閣諸島の問題もここにあるんですね」
真正維新議員「実際に2%の物価上昇が実現した場合、日本の財政赤字は急激に増大します。今は巨額の国債残高を維持しながらも、金利が低いので国債金利負担は横ばいですが、2%も物価が上昇したら、国債の金利負担だけでも毎年20 兆円近く膨らむことになります。そうすれば、5%の消費税引き上げなど吹っ飛んでしまい、日本の国家財政は泥沼に落ち込んでしまいます。まさに、これこそヘッジファンドが狙っていることです」
アベのミックソ総理「確かに金利負担は大きくなりますが、他方でインフレによって国の借金は目減りするんですね。アメリカの経済学者もこうやって日本の国家債務を減らすのが望ましいと言っているんですね。だからインフレが大事だと」
真正維新議員「インフレで国の負債が目減りする分、他方で市中の銀行が抱える国債資産が目減りして、銀行経営が立ち行かなくなります。そうなれば、再び大きな金融危機が起こり、日本経済は大混乱に陥り、ただでさえ巨額の債務を抱える国家財政は現在の年金制度も健康保険制度も維持できなくなります。そうなった時に、総理、あなたは責任を取れますか」
アベのミックソ総理「そういう深刻な事態になる前にですね、私は再びお腹が痛くなって、総理の座にいません。ですから、私は責任の取り様がないですね。これは私が率いる党を選んだ有権者の責任でもありますから、国民の皆さん全員に責任があると。そういうことではないでしょうか」

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