2015.5.15 今回は、敢えて呼びかけます。平和憲法を護れ! 戦争立法に反対しよう!と。訪米で新日米防衛ガイドラインを結んできた安倍首相は、日本国憲法前文「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」という戦後70年間で定着した理想を覆し、第9条「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を、「集団的自衛権」という政府解釈で放棄しようとしています。米国世界戦略への追随を最優先して、第41条「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」を無視し、国会討論以前に安全保障体制の重大な変更を行い、いつでもどこでも「切れ目なく」自衛隊を海外に出し、戦争に加わる方向をめざしています。無論、第99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」という憲法遵守の条項は、無視されています。
昨日閣議決定された法案には、集団的自衛権の行使を可能にする法改正を一括した「平和安全法制整備法案」、外国軍支援を恒常化する「国際平和支援法案」と、どちらも「平和」の名を冠しています。しかし、内実は「戦争法案」です。ジョージ・オーウェル『1984』のニュースピーク、「戦争は平和である」「自由は屈従である」「無知は力である」を想起させます。「存立危機事態」とか「重要影響事態」とか、「事態」が頻出しますが、「事態」への軍事対処が「事変」です。かつて日中戦争を「満州事変」とか「日華事変」とか呼んで、本当は戦争なのに「事変」の名で拡大していった歴史の、性懲りもない繰り返しです。自分の言説・外交で近隣諸国との紛争を拡大しておきながら、「抑止力」と称して、軍事力に頼ろうとしています。詳しくは、神戸の弁護士深草徹さんが、本サイト学術論文データベ ースで50本目の寄稿論文となる深草徹 「戦争立法」の恐るべき真実(2015.5)で解説してくれましたので、急遽緊急でアップします。安倍首相の狙う本丸は、憲法第9条の改定です。「お試し改憲」とか「加憲」に惑わされてはなりません。これまで曲がりなりにも70年の「平和」を作ってきた軍事化への歯止めが、丸ごと取り払われようとしています。丸山眞男「憲法第9条をめぐる若干の考察」(『後衛の位置から』未来社、所収)がいう通り、「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍がおこらぬよう、それを保障することと、人民主権の原則とは密接不可分」であり、「国民的生存権」が危機にさらされようとしています。60年安保の時のような、国民の抵抗運動が必要です
アメリカなど世界で日本研究に携わる187人の歴史研究者が、日本の歴史家を支持する声明「偏見なき清算を」を発表しました。3月シカゴでの米国アジア研究学会でよびかけられたもので、従軍「慰安婦」問題にしぼり、安倍首相への名指しの批判や日米首脳会談の政治的評価は避けていますが、世界の日本研究をリードしてきた主要な学者を、網羅しています。リストには、ジョン・ダワー、エズラ・ヴォーゲル、ロナルド・ドーア、アンドルー・ゴードン、キャロル・グラック、テッサ・モリス・スズキ、等々。声明に加わっていない著名人、ジェラルド・カーチスやケント・カルダーらの名を想い出すことの方が、難しいくらいです。とりまとめにあたったのは、コネティカット大学のアレクシス・ダデン氏とジョージタウン大学のジョーダン・サンド氏とか、学術レベルでこうした声明をまとめあげるのは大変なだけに、日本で現代史研究に携わるものとして、敬意を表します。ちなみに、ジョーダン・サンド氏は、かつて本HP学術論文データベ ースに、「アメリカよりみた『靖国問題』」を寄稿してくれた方です。日本では、国立大学への国旗・国歌要請や学校教員免許の国家試験資格化、教育・研究の大再編も進められようとしています。そんな中で、海外の日本研究者から期待された「日本の歴史家」が、何をなすべきか。沖縄基地問題、原発再稼働、労働法制改悪など、安保体制の大転換に連動する歴史的転換の一つ一つの動きに、「日本の歴史家」の応答が迫られています。
従軍「慰安婦」問題と共に、戦後70年の日本の歴史認識で、海外特に近隣アジア諸国から問われるのは、南京大虐殺、731部隊の人体実験と細菌戦、ヒロシマ・ナガサキ、戦争責任と靖国神社、講和・安保・賠償からフクシマまで、山積しています。私自身は「2015年の尋ね人」=「占領期右派雑誌『政界ジープ』と731部隊「二木秀雄」について情報をお寄せください! 」に専念していますが、皆様のご協力で、戦後70年の解読にふさわしい歴史的資料と情報が集まりつつあります。詳しくは「2015年の尋ね人」ページに書き、逐次改訂していきますが、この間情報が集まった以下の諸点を中間報告しておきます。(1)『現代史史料 ゾルゲ事件4』に入っていた、リヒアルト・ゾルゲによるハルビン細菌戦工場建設情報の1937年モスクワ通報の可能性、(2)二木秀雄の731部隊での人体実験と細菌戦への具体的関与、(3)1945年8月帰国時、731部隊の金沢「仮本部」での連絡網・給与支給ネットワーク構築における二木秀雄の役割、(4)二木秀雄の雑誌『輿論』『日本輿論』、初期『政界ジープ』刊行における印刷者「金沢 吉田次作」の役割、吉田印刷の旧陸軍・満州国・辻政信との関わり、(5)『政界ジープ』発行元の、「ジープ社」から「東京トリビューン社」「新ジープ社」「精魂社」「政界ジープ社」への同一住所・名義変更、編集人・発行人の推移、(6)二木秀雄が政界進出をはかった1953年4月参議院石川地方区選挙が、内灘米軍射撃場誘致をめぐる一大論戦のさなかであったことの意味、内灘誘致派林屋亀治郎と反対派で当選した改進党井村徳二の狭間で、泡沫候補として落選した二木秀雄は、衆参同時選挙の衆院金沢一区当選者・辻政信の旧軍人票・東亜同盟票との相乗り・継承を目指したものではなかったか。これらについて、引き続き情報を求めます。データベース「旧ソ 連日本人粛清犠牲者・候補者一覧」トップの、新たに判明した日本人犠牲者「トミカワ・ケイゾー=たぶん富川敬三」についても、引き続き情報をお寄せください。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2988:150516〕