所得倍増でも資産倍増でもなく、軍備倍増に邁進する岸田宏池会内閣!

●2023・2・1  新年早々、ついにコロナ感染を体験しました。正月に家族が集まったさいに、ウィルスが残っていたようです。PCR検査陽性後の1週間、自宅自室蟄居の不便な生活を余儀なくされました。ただし38度5分の熱が出てPCR検査を受けた以上には進行せず、重症化はしませんでした。発熱外来でコロナ用の薬を勧められましたが、昨年の手術・入院後大量の薬品を摂取していますから、副作用を恐れて断りました。コロナ用の発熱外来は大変な混みようで、おくすり手帳の提示は求められませんでした。どうやら感染症対策と基礎疾患医療は、別なものとして扱われているようです。5回のワクチン接種が重症化予防に効いたのかどうかはわかりません。ワクチンが感染予防に無力だったことはわかりました。病院の様子からすると、現在の第8波は、この3年間で最も感染が広がり、入院病棟は逼迫しているようでしたが、発熱ぐらいでは入院できないこともよくわかりました。陽性判明後、スマホによる保健所への体温・酸素飽和度申告、病院からの症状チェックの電話はありましたが、「症状が悪化したら救急車を呼んでください」という対応で、救急車をよんでもたらい回しになる状況は自治体マターで、病院側チェックの範囲外のようでした。

● 3年前から、日本における新型コロナウィルス感染症の進展を追いかけてきました。コロナ禍前に戦時関東軍731部隊の人体実験・細菌戦を書物にしていた関係で、日本の感染症対策が731部隊の影をひきづってきたことを本サイトで問題にし、『パンデミックの政治学』(2020年)、『731部隊と100部隊』(小河孝との共著、2022年)などにまとめてきました。コロナ感染の実体験は今回が初めてですが、昨年は半年以上を2回の入院・手術・リハビリですごし、日本の医学と医療の問題を、いやでも考えざるをえませんでした。欧米で支配的だったロックダウン・国家補償方式でも、一部地域で採られた集団免疫獲得のための不作為とも違い、「ダイヤモンド・プリンセス号」以降のクラスター潰し中心の日本の初動対策は、端的に言って、安倍晋三による談合・汚職がらみの東京オリンピック開催のためのスケジュール合わせでした。そして、アメリカの国家非常事態宣言解除に追随でしょうか、5月8日を目処に感染症2類相当からインフレエンザ並みの5類に変更するという対策解除です。5月の広島G7サミットをマスクなしで成功させたいという岸田文雄の願望から出た、またしても科学と医療を政治に従属させた決定のようにみえます。つまりパンデミックの入り口から出口まで、日本ではワクチン以外の有効な対策がないまま、感染者数・死者数の正確な統計も作れぬまま、年末年始に世界一の感染を記録し、高水準の死亡率を保った状態で、パンデミックの舞台そのものから退出しようというのです。基礎疾患を持つ高齢者にとっては、不快かつ不安です。

● 安倍晋三が銃撃された後の2022年後半、戦後日本政治の宿痾というべき自民党と旧統一教会の奇怪な癒着が明らかになり、安倍国葬を強行した岸田内閣の支持率は低下し続けました。その統一教会との関係断絶も曖昧にしたまま、5月19−21日のG7ヒロシマサミットを政権浮揚・反転攻勢のターゲットに設定しています。COVID19感染症の2類相当から5類への転換、ゼロコロナを諦めウィズコロナで人獣共通感染症に対処しようとしています。インバウンド需要再興など経済再建を最優先し、医療弱者切り捨てになるでしょう。そればかりか、ウクライナ戦争の継続、米中対立激化を見据えて、日本の安全保障戦略の大転換、原発依存エネルギー政策への切り替えも、世界にアピールしようとしています。今日の岸田派は、池田勇人・大平正芳・宮澤喜一ら財務省OB・自民党宏池会の流れを汲むハト派なはずで、それがイデオロギー色の強い安倍派=清和会に対抗し反転する振り子理論で、自民党の派閥政治はバランスを保つはずでした。ところが21世紀の長い清和会支配の中で、どうやら宏池会はハト派=軽武装・平和経済色を失ってしまったようです。池田内閣の所得倍増計画や宮澤内閣の資産倍増計画の継承のはずが、なんと敵基地攻撃を「反撃」と言い換えて、防衛費をNATO並みのGDP2%に倍増しようという「軍備倍増計画」を目玉にしようとしています。憲法も国会・弱小野党も無視されて、すべては行政府の閣議決定です。本来世界に核廃絶をアピールすべきヒロシマ・サミットが、日米同盟強化と世界第3位の軍事大国化への示威機会です。小選挙区制を導入した1990年代「政治改革」の歴史的帰結です。

● 昨年療養中に書いたka「 コミンテルンの伝統と遺産」が活字になりました。東京唯物論研究会の『唯物論』誌96号(2022年12月)の特集「歴史的存在としての『共産主義』運動」への寄稿ですが、もともと『初期社会主義研究』第29号(2021年)に寄稿した「コミンテルン創立100年、研究回顧50年」の基本内容の再使用で、「はじめに」「おわりに」のみ書き加えたものです。その理由も書いてありますが、同時期に「日本共産党100年」に関連した出版企画が相次ぎ、二度の入院・手術中だったのでお断りし、早くに頼まれていた『唯物論』誌のみに寄稿したものです。その「日本共産党100年」ものは、中北浩爾さんの労作をはじめいくつか刊行され、党首公選制を主張したり、基本政策の変更を求める動きも見られ、かつての討論サイト「さざ波通信」も復活したとか。20年前は「インターネットは民主集中制を超える」と述べたことがありますが、状況はあまり変わっていないようです。博物館入りした党名や高齢化した指導部人事ばかりでなく、なぜ日本の実質賃金は上がらず韓国以下なのか、中国をどう見るのか等、安倍=岸田政治に対抗する本格的なオルタナティヴの構築へと、議論を開いてほしいものです。

● 昨年は、獣医学の小河孝教授とコラボした共著『731部隊と100部隊ーー知られざる人獣共通感染症研究部隊』(花伝社)、私が代表をつとめる尾崎=ゾルゲ研究会のシリーズ第一弾、A・フェシュン編・名越健郎・名越洋子訳『ゾルゲ・ファイル 1941−1945 赤軍情報本部機密文書』(みすず書房)が刊行されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「等身大のゾルゲ解明へーー尾崎=ゾルゲ研究会発会主旨」(毎日新聞、2022年2月13日夕刊)