日本政府は、4月3日以降、4か月以上、日本国の在留資格を持っている日本在住の外国人の、再入国を原則拒否している。政府側の非公式な説明は、再入国の際の新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査態勢が整っていないためだという。日、米、英、仏、ドイツ、イタリア、カナダの先進7か国で、外国人の再入国拒否を続けているのは日本だけ。
日本の外国人再入国拒否に、国際的な批判が高まり、撤回を求める署名運動もひろがっているのは当然だ。
再入国拒否が長引いているため、困っている外国の会社、ビジネスマンは多い。それ以上に切実なのは、日本の永住権を持っている永住者、日本人の配偶者たち。
なぜか、国内の大手メディア―新聞、通信社、NHKはじめ民放も、この極めて非人道的な再入国拒否の問題を追及する報道は、ほとんど見当たらない。大手メディアは、なぜこの問題の追及をさぼっているのか。
筆者のごく親しい欧州出身の友人は、日本女性と結婚し、永住権を取得しているが、母国にいる一人住まいの母親を支援するため、毎月1週間ほど帰国していた。4月3日以後、それができなくなった。入国の際の、検査態勢が混乱しているための一時的な措置と思っていたら、4か月も続き、まだ解除の見通しは全くない。他の親類が助けてくれているようだが、長男である友人が帰国しないと困ることもあるという。
感染対策に極めて重要なPCR検査態勢が、日本は欧米、中国、韓国に比べ、ひどく遅れている。最近、あちこちの強化プランが報じられているが、空港での検査態勢の強化は、なぜ後回しにされているのか。
英字紙ジャパン・タイムズは5月9日、“foreign residents stranded abroad by Japan`s coronavirus controls”(日本のコロナウイルス対策で、外国人住民は国外で立ち往生している)と題して大きく報道しているが、私が毎日、チェックしているNHK ニュースも朝日新聞もこの問題をしっかり報道したことはなかったのではないか。
やっと日本経済新聞は7月28日、「日本が再入国制限、米欧が日本問題視、自国民と待遇差」の見出しで、やっとこの問題を報道した。同記事には、次の表もある。
再入国は出国日で線引き
4月2日以前に出国 4月3日以降に出国
再入国の可(○)、非(×) 〇 ×
永住者、日本人の配偶者ら 10万3,000人 5,000人
留学生、ビジネス関係者ら 近く容認8万8,000人 1万2,000人
(8月4日追加)外務省は8月5日から、日本に在留資格を持つ外国人のうち、4月3日以前に出国した留学生や企業関係者にも再入国をできるようにした。これまで、4月3日以前の出国者のうち、再入国を認めていたのは、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」に限られていた。
しかし、4月3日以前に出国した、在留資格を持つ外国人の再入国は、依然拒否したままだ。
上記のように、先進7か国のうち日本以外の6ヵ国は、在留資格のある日本国民の再入国を拒否してこなかったが、ワシントン・ポスト紙の報道によると、日本に対抗して、ドイツは在留資格を持つ日本国民の再入国を拒否するようになった。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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〔opinion9994:200804〕