日本会議や電通に負けない選挙運動とメディア報道を!

著者: 加藤哲郎 かとうてつろう : 一橋大学名誉教授・早稲田大学客員教授
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かと 2016.6.15 権力亡者・舛添東京都知事が、ようやく辞任しました。政治資金規正法疑惑に加えて、次々に明らかになる公私混同・公金私消の数々、なによりも、傲慢で自分勝手なウソとごまかし。メディアには、次の知事候補選びや世論の分析のみならず、真相究明の課題が残されています。四面楚歌での辞任も、参院選への波及をおそれる首相官邸の圧力があったからでしょう。7月参院選が、本丸です。各種世論調査結果や週刊誌の予想では、一人区すべてでの野党共闘成立にもかかわらず、与党勝利と出ています。しかしこれは、消費税増税を先送りし、ほころびの目立つ「アベノミクス」での景気浮揚を争点に設定した、自公与党の選挙戦術の効果。実際は、安保法制も沖縄も原発再稼働も争点からはずして、憲法改悪を可能にする参院3分の2の改憲議席獲得のための選挙です。憲法第9条と自衛隊の戦争参加こそが、隠された真の争点です。プロモーターも隠されています。舛添要一は自信過剰の一匹狼ですが、もう一人の権力亡者、無知で無恥な安倍晋三は、オトモダチに囲まれています。もちろん財界・官界・宗教界・マスコミも、安倍型「強い政治」の支持者により支配されています。2017年参院選の演出者として、日本会議電通を挙げておきましょう。
かと かつて宗教法人「生長の家」は、初代総裁・教祖の復古主義的思想にもとづき、自民党の集票装置の一つで改憲運動の先鋒でした。その「生長の家」が、今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針「与党とその候補者を支持しない」を公式に発表しています。<来る7月の参議院選挙を目前に控え、当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました。その理由は、安倍政権は民主政治の根幹をなす立憲主義を軽視し、福島第一原発事故の惨禍を省みずに原発再稼働を強行し、海外に向かっては緊張を高め、原発の技術輸出に注力するなど、私たちの信仰や信念と相容れない政策や政治運営を行ってきたからです>と明快です。<時間をかけて教団の運動のあり方や歴史認識を見直し、間違いは正すとともに、時代の変化や要請に応えながら運動の形態と方法を変えて>きた現在の「生長の家」は、2代目・3代目の総裁のもとで、<地球環境問題への真剣な取り組み><“脱原発”や“自然エネルギー立国”>を教義としています。絶対平和主義から出発した創価学会が、政権与党になって安倍自民党を支えていくのと、真逆の動きです。

かと 現在の「生長の家」は、<組織としては政治から離れ、宗教本来の信仰の純粋性を護る>ことに専念していますが、なぜ安倍政権への批判を明確にしたのでしょうか? その理由は、<最近、安倍政権を陰で支える右翼組織の実態を追求する『日本会議の研究』(菅野完、扶桑社刊)という書籍が出版され、大きな反響を呼んでいます。同書によると、安倍政権の背後には「日本会議」という元生長の家信者たちが深く関与する政治組織があり、現在の閣僚の8割が日本会議国会議員懇談会に所属しているといいます。これが真実であれば、創価学会を母体とする公明党以上に、同会議は安倍首相の政権運営に強大な影響を及ぼしている可能性があります。事実、同会議の主張と目的は、憲法改正をはじめとする安倍政権の右傾路線とほとんど変わらないことが、同書では浮き彫りにされています。当教団では、元生長の家信者たちが、冷戦後の現代でも、冷戦時代に創始者によって説かれ、すでに歴史的役割を終わった主張に固執して、同書にあるような隠密的活動をおこなっていることに対し、誠に慚愧に耐えない思いを抱くものです。先に述べたとおり、日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質のものであり、はっきり言えば時代錯誤的です>と「今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針」は述べています。

かと この菅野完『日本会議の研究』は、『週刊朝日』によると、日本会議のルーツで事務局というべき右翼団体「日本青年協議会」は、70年安保の頃、左翼学生運動に対抗する民族派学生運動として出発し、「生長の家」の周辺に集う若者たちが牽引し、ついに今日、政治を陰で操るところまで来た。70年代後半に地道な活動を通して元号法制化を成功させた彼らはその後も同様の活動を続け、1995年の「村山談話」が発表される過程で横やりを入れ、2000年代には「保守革命」として「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」をターゲットに定めた。安保法制の審議中、菅官房長官が名前を出した集団的自衛権を合憲とする3名の憲法学者も日本会議の息のかかった団体の役員だった、と要約されています。しばらく売り切れで入手できませんでしたが、ようやく手に入れて読んでみると、よく調べた読み物です。他にも類書が次々と出ており、参院選を前に、「アベ政治を許さない」運動の糧になるでしょう。同時に、自民党の選挙とメディア戦略全体を、グローバル広告代理店電通が担当していることに注目しなければなりません。

かと 日本会議は、安倍政権のイデオロギー政策と、地方議会決議等草の根保守運動の裏方ですが、電通は、候補者選びから選挙ポスターから演説の小道具、テレビCMから討論会の出演者までを仕切ります。熊本大震災、アメリカ大統領選挙、舛添スキャンダルがワイドショーを埋めているあいだに、参院選が近づくと、パナマ文書の日本関係税金のがれや、東京オリンピック招致の2億円裏金疑惑が後景に退き、報道が少なくなっています。どちらにも、電通と与党政治家の関与が疑われます。その電通内部からも、ようやく、「総理もキャストのひとりに過ぎない」という内部告発が現れました参議院議員選挙の政治舞台が、彼らによって仕切られているとすれば、野党は、それを見越した政策と運動を必要とします。学術論文データベ ースに、久方ぶりで、神戸の弁護士深草徹さんの寄稿。深草徹「安保法廃止のために」(2015.11)の延長上での「緊急事態条項と憲法9条・立憲主義」(2016.6)をアップ。日本会議に支えられた安倍政権の危険な道を読み解き、電通のメディア操作に負けない運動とジャーナリズム、何よりも自分自身の政治選択を決める一助に!

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://members.jcom.home.ne.jp/tekato/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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