現在の「生長の家」は、<組織としては政治から離れ、宗教本来の信仰の純粋性を護る>ことに専念していますが、なぜ安倍政権への批判を明確にしたのでしょうか? その理由は、<最近、安倍政権を陰で支える右翼組織の実態を追求する『日本会議の研究』(菅野完、扶桑社刊)という書籍が出版され、大きな反響を呼んでいます。同書によると、安倍政権の背後には「日本会議」という元生長の家信者たちが深く関与する政治組織があり、現在の閣僚の8割が日本会議国会議員懇談会に所属しているといいます。これが真実であれば、創価学会を母体とする公明党以上に、同会議は安倍首相の政権運営に強大な影響を及ぼしている可能性があります。事実、同会議の主張と目的は、憲法改正をはじめとする安倍政権の右傾路線とほとんど変わらないことが、同書では浮き彫りにされています。当教団では、元生長の家信者たちが、冷戦後の現代でも、冷戦時代に創始者によって説かれ、すでに歴史的役割を終わった主張に固執して、同書にあるような隠密的活動をおこなっていることに対し、誠に慚愧に耐えない思いを抱くものです。先に述べたとおり、日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質のものであり、はっきり言えば時代錯誤的です>と「今夏の参議院選挙に対する生長の家の方針」は述べています。
この菅野完『日本会議の研究』は、『週刊朝日』によると、日本会議のルーツで事務局というべき右翼団体「日本青年協議会」は、70年安保の頃、左翼学生運動に対抗する民族派学生運動として出発し、「生長の家」の周辺に集う若者たちが牽引し、ついに今日、政治を陰で操るところまで来た。70年代後半に地道な活動を通して元号法制化を成功させた彼らはその後も同様の活動を続け、1995年の「村山談話」が発表される過程で横やりを入れ、2000年代には「保守革命」として「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」をターゲットに定めた。安保法制の審議中、菅官房長官が名前を出した集団的自衛権を合憲とする3名の憲法学者も日本会議の息のかかった団体の役員だった、と要約されています。しばらく売り切れで入手できませんでしたが、ようやく手に入れて読んでみると、よく調べた読み物です。他にも類書が次々と出ており、参院選を前に、「アベ政治を許さない」運動の糧になるでしょう。同時に、自民党の選挙とメディア戦略全体を、グローバル広告代理店電通が担当していることに注目しなければなりません。
日本会議は、安倍政権のイデオロギー政策と、地方議会決議等草の根保守運動の裏方ですが、電通は、候補者選びから選挙ポスターから演説の小道具、テレビCMから討論会の出演者までを仕切ります。熊本大震災、アメリカ大統領選挙、舛添スキャンダルがワイドショーを埋めているあいだに、参院選が近づくと、パナマ文書の日本関係税金のがれや、東京オリンピック招致の2億円裏金疑惑が後景に退き、報道が少なくなっています。どちらにも、電通と与党政治家の関与が疑われます。その電通内部からも、ようやく、「総理もキャストのひとりに過ぎない」という内部告発が現れました。参議院議員選挙の政治舞台が、彼らによって仕切られているとすれば、野党は、それを見越した政策と運動を必要とします。学術論文データベ ースに、久方ぶりで、神戸の弁護士深草徹さんの寄稿。深草徹「安保法廃止のために」(2015.11)の延長上での「緊急事態条項と憲法9条・立憲主義」(2016.6)をアップ。日本会議に支えられた安倍政権の危険な道を読み解き、電通のメディア操作に負けない運動とジャーナリズム、何よりも自分自身の政治選択を決める一助に!
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://members.jcom.home.ne.jp/tekato/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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