◆ 2021.8.1 日本のCOVID 19パンデミックに対する感染・危機管理対策は、 昨年夏に予定されていた東京2020オリンピックに翻弄されてきました。昨年3月24日、オリンピックの1年延期が決まったとき、東京都の新たな感染確認は17人、これでもそれまで最多で、国内累計は1128人、ただしクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」乗客乗員712人は別枠とされていました。それから16か月、東京で連日3千人、4千人、全国で毎日1万人以上の感染爆発なのに、オリンピックは強行されています。「復興オリンピック」招致の口実は、福島第一原発核事故が「アンダーコントロール」なはずでした。しかし実際には汚染水処理もまともにできず、福島県外避難者が3万人近くにのぼります。招致のプランでは、この時期の東京は「温暖」とのことでした。しかし実際には高温多湿の灼熱地獄、熱射病で倒れたり出場できないアスリートも出ています。五輪関係者4万人は、スカスカの「バブル」で、大会関係者も報道陣も街にくりだし、選手もコンビニへ。集団飲食も観光外出も。毎日選手を含め数十人、すでに200人以上の感染者、しかし空港検疫から検査そのものがいい加減で、濃厚接触者も特定できず。多くのボランティアも送迎バスの運転手も食事の運搬人もワクチン未接種どころかPCR検査も不十分ですから、これからアスリートのクラスターや東京発の変異株が世界に広がってもおかしくありません。ジェンダーや多様性の看板は開会式にいたる組織委員会のお粗末でボロボロ、バッハ会長等IOC貴族のマネー体質、電通やパソナの中抜きビジネスも明るみに出て、その日の食事も摂れない人々、補償もないまま仕事を奪われた飲食業、アーティスト、非正規労働者、シングルマザー・ファザーにとっては、憤怒と怨恨の対象でしかありません。
◆ 日本政治の腐蝕は、底知れません。オリンピックが始まれば、みな競技に熱中して「ニッポン・頑張れ」、金メダルが出ると「ニッポン・すごい」となるだろうというのが、緊急事態を宣言しても、感染も人流も止められない政府にとっての、起死回生策でした。しかし首相が電話やSNSでメダル獲得を誇れば誇るほど、一言も発しないコロナ対策は意味を喪失し、全ては将来のワクチン接種と治療薬に委ねられます。確かに、ナショナリズムは差別やヘイトの言説を促進します。しかしPCR検査数やワクチン接種率では、日本は超後進国。ワクチン接種はようやく高齢者で8割、対象者の3割で弾切れ。日本はまだワクチン不足で、国と自治体が責任をなすりつけあう醜態ですが、アメリカなどでは2回接種後でもデルタ株に再感染しクラスター発生という新しい問題の報告。若者のワクチン忌諱ばかりでなく、3回接種や毎年接種の必要性も出てきました。治療薬承認があっても供給不足で、なによりも自宅待機者急増中で、症状悪化しても入院できなくなる可能性大。自分でパルスオキシメーターを準備するのが、せいいっぱいの自衛策。菅政権が、「自助・共助・公助」をいいながら「公助」をケチり構築できず、「自助」=自己責任任せの無策のみで、「バブル」内でさえ「安全安心の大会」とはほど遠い現実。オリンピック開催中の中止はむずかしくても、大会関係者がパラリンピック中止を匂わせる無責任です。8月は、本来なら夏休みにお盆の帰省、昨年のGoToトラベルと同じ役割をオリンピックが担い、「五輪バブル」が、昨年の「ダイヤモンド・プリンセス号」に似た、日本公衆衛生学の後進性・「失敗の教訓」をもたらしそうです。「カミカゼ・オリンピック」ともよばれるとか。「緊急事態」は、最後ではありません。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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