1月2日のBBC電子版は、“アラン・クルディの伯母さんは「私の死んだ甥の写真は何百人もの命を救った」と語った”の見出しで、SNS(ツイッターやフェースブックなどのネット・メディア)に掲載された写真の巨大な影響について伝えた。昨年9月3日、SNSに掲載された、トルコの海岸の波打ち際に打ち上げられた男の子の遺体の写真に、全世界の何百万人の人々が衝撃と悲しい共感で反応した。英語版では150万人が“Refugees Welcom”(難民を歓迎する)のハッシュタグ(挿入言葉)に同調した(見た人はその何十倍あるいはそれ以上だろう。英国では国民の80%とBBCは推定)その衝撃は、ドイツ、英国をはじめ欧州諸国やカナダの世論に大きく影響、増え続けるシリア難民受け入れに反対する右派勢力の運動を押し返し、ドイツのメルケル首相をはじめ、各国政府の難民受け入れ政策を力付けた。
日本では今年、憲法改悪を狙う安倍政権が、参院選挙で改憲勢力による3分の2を確保すべく、大規模なキャンペーンをしつつある。平和憲法を守り、政権が強行採決・成立させた安保諸法(戦争法制)廃止を目指す私たちは、安倍政権を圧倒する憲法擁護のキャンペーンを大いに展開しなければならない。SNSでも安倍政権と護憲勢力は激しく影響力を争うことになる。とくに今回の国政選挙から投票に参加する18歳以上の若者をはじめ若い有権者たちへの影響力は、テレビや新聞よりも電子メディア大きいだろう。私の世代はあまり役立ちそうもないが、護憲勢力はそのための態勢づくりを進めたい。この写真については、さまざまなメディアで既に伝えられているが、4か月後のBBC電子版の報道を見て、SNSの巨大な影響力を改めて思った。
(写真説明)
1. 昨年9月3日早朝、トルコ東岸の浜辺に打ち寄せられ、うつぶせになって波に洗われるアラン・クルディ君(3歳)の遺体。トルコのドガン通信社のカメラマン、ニリュファー・デミールが撮影。同日中にSNSで全世界に流された。
「アラブ人として、わたしはとても恥ずかしい。全人類から、安らかにお眠りください」と記されている。
アラン君(3歳)の遺体がトルコの海岸に流れ着いたのは、昨年9月2日。アラン君の一家4人は、シリア北部国境の町コバネの少数民族クルド人住民。占領しようとする「イスラム国(IS)」と地元クルド人民兵との激戦が長く続いている故郷からトルコ領に脱出した。トルコ地中海岸から、業者の手配するゴムボートでギリシャ領の島を目指した。しかし、荒天でボートが転覆、乗っていたシリア難民のうち12人の遺体がトルコの海岸に打ち寄せられた。アラン君の父親のアブドラさんは助かったが、母親と兄は死亡した。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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