漂流する国で進む、閉ざされたファシズム化!

著者: 加藤哲郎 かとうてつろう : 一橋大学名誉教授
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2018.4.1 かと 日本はいま、国際社会を漂流しています。2018年の年明けから、平昌冬期オリンピックのIOCを介した南北朝鮮交流を契機に、日本の安倍晋三内閣は、迷走を続けています。南北朝鮮首脳会談、米朝首脳会談、中朝秘密会談の流れを読めなかったのは、 情報機関が弱いとか、外務省の怠慢だけではないでしょう。一方でトランプ大統領のアメリカを従来通りの日米同盟と過信し、他方で経済力も弱まり「美しい国」からの「圧力一辺倒」しかアピールできなかった、無策の結果でしょう。トランプから安全保障ばかりでなく貿易でもこけにされ、「安倍首相はいいやつだが、その顔はほくそ笑んでいる。それは『こんなに長いこと、アメリカを出し抜くことができたとはね』という笑みだ。そんな日々はもう終わりだ」と公言される屈辱。「戦争をしない国」「唯一の被爆国」の看板はとっくに神通力を失っていましたが、福島原発事故後も世界の再生可能エネルギー転換への波に乗れず、原発再稼働原発輸出の時代錯誤、権力を私物化した船長に牽かれる、漂流船の悲劇です。

かと 佐川前国税庁長官を証人喚問に引き出しても、財務省も官邸も責任をとらない、森友問題の深い闇佐川証言に「納得できない」人は7割いても、納税者一揆内閣支持率低下は、どうやら一時的打撃に終わりそうです。日経新聞欧州総局からの悲鳴が聞こえます。 曰く、「公文書の信頼失墜、日本の学術研究に打撃」=<財務省は、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する文書を書き換えたことを明らかにした。行政への信頼が失墜しただけではない。アカデミズムの世界で「1次資料」と呼ばれる公文書のずさんな取り扱いは、後世における正確な歴史検証を妨げ、グローバル水準での学術研究に水を差す。日本の大学の地盤沈下がさらに進む恐れがあり、将来に禍根を残す> 。そうです、公文書の改竄は、「普通の国」なら、政権交代をもたらす深刻な「国難」です。財務省ですから、国際信用も失墜です。昨年の総選挙は、北朝鮮核危機切迫の「Jアラート」をあおり、森友・加計問題を隠して野党分断の策を弄した、ファシスト安倍晋三の勝利でした。その前提が二つながら崩れたのに、「裸の王様」は、憲法改悪まで国民から負託されたと思い込み、まわりをイエスマンで固め、内閣ばかりでなく、国会も、マスコミも、官僚制をも抑え込んで、放送法さえ都合良く書き換え、公営放送に介入し、漂流船の舵取りを続けます。船長を代えないと、座礁か沈没かの悲劇まで、時間の問題です。

かと こんな印象も、久しぶりで外から日本を眺めたから。一年ぶりで、ヨーロッパに行ってきました。昨年はドイツでしたが、今年はイギリスでした。あわただしい旅でしたが、ウェブの情報を除けば、 朝鮮半島は見えても、日本は見えませんでした。ロシアの元諜報員暗殺未遂事件と主権侵害に対する、英国はじめ各国政府のロシア外交官追放、それに対するプーチンの報復が、最大のニュース。 その後、トランプの米大使館エルサレム移転決定がらみの、イスラエルとパレスチナのガザ衝突が、深刻になっています。 安倍晋三は、ロシアのプーチンに媚びを売り、遅ればせながら北朝鮮に近づく弥縫策で、船を進めようとしています。海図なき航海です。昨3月31日、重要なニュースを、共同通信が報じました。「3月9日に習近平主席がトランプ大統領と電話会談をして、朝鮮戦争の当事国である米中と韓国、北朝鮮の4ヵ国による平和協定の締結を含む、『新たな安全保障の枠組み』の構築を提案していた」というもの。6ヵ国協議の日本とロシアが入らないのもポイントですが、問題は、その歴史的射程の長さ。「国連軍と北朝鮮、中国が1953年に締結した朝鮮戦争休戦協定の平和協定への移行を念頭に置いているとみられる。習近平は日本に言及しておらず、南北、米朝の首脳会談後の交渉を、4ヵ国を中心に進める考えを示唆した可能性がある」と。 1950年代朝鮮戦争開始時まで、時計の巻き戻し、歴史の見直しです。沖縄の米軍恒久基地化も、昭和天皇のメッセージを背景に、その頃定まりました。その頃から沖縄現代史を探究し、本土の歴史と結びつけてきた沖縄大学元学長新崎盛暉(あらさき・もりてる)さんが、亡くなられたとのことです。 私も幾度かお世話になりました。心から、ご冥福をお祈りいたします。合掌!

 

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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