国際水泳連盟主催の短水路世界選手権は12月6日~11日の間、カナダのウィンザーで開催された。本大会の最優秀選手として、女子はハンガリーのホッスー、男子は南アフリカのル・クロスが選ばれた。なかでも、ホッスーは記録破りの活躍を見せた。実に13種目にエントリーし、棄権した200m平泳ぎを除く12種目に出場して、そのすべての種目で決勝に進出し、7個の金メダルと2個の銀メダルを獲得した。本大会は女フェルプスともIron Ladyとも呼ばれるホッスーの一人舞台だったと言って良い。
国別メダル獲得数では、アメリカが金8個(銀15個、銅7個)でトップ、ハンガリーは金7個(銀2個、銅2個)でアメリカに次ぐ2位となった。日本は金2個、銀2個、銅11個で8位だった。
本大会前のFINA(国際水泳連盟)の総会で、本年度の最優秀選手として、男子がフェルプス、女子はホッスーを選んだ。ホッスーはその栄誉に応えるべく、獅子奮迅の活躍で2016年短水路世界選手権の最優秀選手も選ばれた。
ホッスーのトレーニング日課
ホッスーの活躍を支えているのは、アメリカ人の夫でコーチでもあるトゥスップである。彼女の日課は、朝4時50分の起床から始まる。6時から8時30分までフィットネスでのウェートトレーニング、その後11時30分までプールでのトレーニング。昼食の後はIron Ladyブランドの自社の管理の仕事。再び、16時30分から18時30分までプールでのトレーニング。その後は、マッサージと夕食を終えて、早めの就寝となる。
このすべてのトレーニングは夫でコーチのトゥスップが管理し、あらゆるビジネスの交渉にも彼が同伴する。四六時中、二人三脚での毎日である。とくにウェートトレーニングは夫がコーチになってから始めたものだという。W杯の大会で世界を駆け巡る間も、このトレーニングが続く。だから、比較的体の負担が軽い短水路なら、1日に4~5レース出場しても、大丈夫な体力が備わっているのだ。
いかなる分野であれ、世界を制する者は、凡人にはとても真似できない厳しい日課を自らに課している。
ホッスーの反乱
短水路世界選手権が始まる直前、ホッスーはハンガリー水泳連盟に宛てた公開書簡で、水泳連盟会長ジャルファシュの辞任を求めた。2017年世界選手権開催にあたって、何かと黒い噂があった会長で、すでに20年以上もハンガリー水泳連盟に君臨している。若手の選手がホッスーを支持したり、政府も暗に辞任を促したりして、ジャルファシュは渋々辞任することに決まったが、ジャルファシュが選任したヘッドコーチは依然としてそのポストに留まっており、ホッスー・サイドとの折り合いがうまく行っていない。そうしたごたごたの中で、ハンガリー選手団はウィンザーの世界選手権に参加することになった。もともと、ホッスー・サイドは水連ヘッドコーチから助言を受けることなく、世界各地の大会を転戦しているから、ヘッドコーチの苦言を聞き流し、本大会に臨み、所定の計画通りの大活躍を見せた。
こうしたホッスー・サイドの言動を快く思っていない関係者は多い。しかし、水連側もお金で問題を解決しようとして、公開書簡が公になった段階で、連盟会長は1000万Ft(およそ400万円)のボーナスを支払うことで決着を図ろうとする姑息な提案を行った。2017年ブダペスト国際水泳世界選手権を前に、ハンガリーの水泳連盟は、抜本的な改革を迫られている。
ネットの意見を見ると、ホッスーの言動を批判するものが多く、彼女が自らの肖像権をベースにしたビジネスを展開していることを批判している意見も見られる。しかし、短い競技生命のなかで、人生の土台を築こうとするホッスー夫妻の血のにじむような努力に、敬意を表せざるを得ない。
2017年水泳世界選手権
ごたごたが続く水泳連盟だが、2017年7月14日~30日、FINA国際水泳連盟主催の世界選手権が、ブダペストとバラトン湖で開催される。種目別の開催地は以下の通りである。オープン・ウォーター競技以外は、すべてブダペストで開催される。この期間、ブダペストの競技会場に近いHotel Heliaは選手の宿泊用に使用されるので、一般客の予約は受け付けない。
1. 競泳・飛び込み種目:新設のDagaly Swimming Arena (Dagaly通りに新設される競泳・飛び込みプール)
2. 水球:ドナウ河マルギット島、ハヨーシュ・アルフレード国民プール
3. バラトン湖(バラトンフュレッド):オープン・ウォーター競技
4. スィンクロナイズド・スイミング:ヴァ―ロシュリゲット公園(特設プール)
5. バッチャーニィ広場(ドナウ河沿い)に仮設される33mの塔:ダイヴィング競技(男子27m、女子20m)。河向こうの国会議事堂が、ダイヴィングの背景になる。
なお、新設のDagaly Swimming Arenaは常設6000席、仮設6000席の観客席が用意されることになっている。例に漏れず、この建設は当初予算から10倍に膨れ上がった。2024年の五輪立候補へのアピールもあり、豪勢なプール建設となった。建設費が高騰すれば、自然と水泳連盟の幹部と建設会社との癒着が始まる。しかし、ハンガリー、いやヨーロッパではこの種の癒着が犯罪として立件されることはきわめて稀だ。
各競技のチケット販売は12月1日から開始され、インターネットで購入できる。最高額は1500Ft(600円)で、以下サイトから購入可能である。
http://www.eventim.hu/en/tickets/17th-fina-world-championships-budapest-budapest-balatonfuered-167/events.html
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