経済衰退・軍事大国化への道を食いとめないと…

●2022.12・1   年を重ねると、時の流れが速くなります。2月に始まったプーチンのウクライナ侵略戦争は、ウクライナのエネルギー・暖房施設を狙い撃ちにし、女性やこどもを寒風のもとにさらして戦闘を越冬しようとしています。だからとりあえず停戦・休戦すべき、もともとロシアにもNATO拡大に対する恐怖とロシア系住民保護の「大義」があったのだという意見もありますが、旧ソ連のスターリン主義やコミンテルン型共産主義を批判してきた私には、プーチンの言い分を認める余地はないと思えます。国連安保理でロシアの戦争や北朝鮮のミサイルに対する非難決議をことごとくガードする中国政府の態度も、国内での香港や新疆ウィグル地区での言論弾圧、直近の「白紙革命」への抑圧と共に、世界の分断を深刻にしています。

● かといって、ウクライナ戦争での国際的エネルギー危機や米中対立の台湾危機、それに北朝鮮の核保有とミサイル攻勢を強調し煽っての、敵基地攻撃(反撃)能力と防衛費倍増をめざす日本政府の国家安全保障政策は、全く賛成できません。経産省主導の原発寿命延長や新規増設案にいたっては、ウクライナの原発危機に照らしても、全くの時代錯誤でバックラッシュです。安倍晋三元首相の銃撃死で明るみに出た、政権与党と統一教会など宗教右翼との構造的癒着、日銀の無策と物価高で国民生活を直撃する経済危機、世界市場の中で突出した長期低賃金・経済衰退、アベノミクスによる「日本沈没」への道を、なんとか食い止めなければなりません。イーロン・マスクの日本ツイッター支配や東京都立大での教授襲撃事件などを見ると、この国でも「白紙革命」が必要になるかもしれません。

● 中国の3年にわたる「ゼロ・コロナ政策」は、中国共産党の習近平独裁と結びついて、民衆の不平不満による怨嗟の的になってきました。1989年の天安門事件は、胡耀邦元総書記の死をきっかけに始まりました。江沢民元国家主席の死は、果たして何らかの変化をもたらすでしょうか? 私の病気療養中の最大の成果は、小河孝教授との共著『731部隊と100部隊』(花伝社)で示唆した、「防疫」政策と「防諜」政策の歴史的リンク、コロナ禍を旧内務省と軍部の創り出した医療とインテリジェンスの合体から見る視点の獲得でした。5月の連休後に見つかった健康上の問題と大きな二度の手術・入院から、その後の静養・リハビリによって、ようやく仕事に復帰しつつあります。年内は遠出を控えますが、都心の研究会にも徐々にですが出席しています。この半年、執筆も講演もお断りしてご迷惑をおかけしましたが、来る2023年の仕事は、懸案のO・マシューズ『ゾルゲ伝』翻訳他、いろいろな皆様の御協力を得て、現役復帰をめざします。

 

● 私が代表をつとめる「尾崎=ゾルゲ研究会」の11月7日(月)午後、愛知大学東京霞ヶ関オフィスでの正式発足が、みすず書房からの4冊のシリーズ刊行案内とともに、発表されました。117日月曜日14時より「尾崎=ゾルゲ研究会」設立会合とそれを記念して、1017日みすず書房より刊行されたA・フェシュン編『ゾルゲ・ファイル 1941−1945 赤軍情報本部機密文書』(名越健郎・名越陽子訳)をめぐる、フェシュンさんと名越健郎さんとの座談会を、愛知大学東京霞ヶ関オフィス(+リモート)で開催しました。

https://www.msz.co.jp/news/event/09514-ozaki-sorge/

https://www.msz.co.jp/book/detail/09514/

https://www.msz.co.jp/news/topics/09514/ 清水亮太郎「ゾルゲ神話を越えて」

「蘇るスパイ・ゾルゲ」『週刊朝日』11月11日号

 

 

 

 

 

 

 

 

● 獣医学の小河孝教授とのコラボで進めてきた共著『731部隊と100部隊ーー知られざる人獣共通感染症研究部隊』(花伝社)が刊行されました。『戦争と医学』誌22巻(2021年12月)に寄稿した「NEW戦前の防疫政策・優生思想と現代」をアップしました。日独関係史がらみで、『岩手日報』2月20日の社会面トップ記事、「可児和夫探索」の調査取材に協力しました。可児和夫は、ナチス・ドイツ敗北後に日本に帰国せずベルリン近郊に留まりソ連軍に検挙された医師・ジャーナリストで、もともとナチスの作った東独のザクセンハウゼン強制収容所に、1945−50年収監されていた唯一の日本人でした。片山千代ウクライナ「ホロドモール」体験に似た収容所体験記「日本人の体験した25時ーー東独のソ連収容所の地獄の記録」(『文藝春秋』1951年2月)を残した、現代史の貴重な証言者です。本サイトの更新も、まだまだ不安定ですが、カレッジ日誌(過去ログ) の方から、論文やyou tube 講演記録をご参照ください。

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4983:221202〕