◆2014.2.1 沖縄の名護市長選挙は、沖縄県民の明確な意志を示しました。自民党の露骨な札束攻勢も跳ね返して、辺野古移転ノーと回答しました。普天間基地移転を沖縄県民の分断でのりきろうとする日本政府への異議申し立ては、海外からも、続いています。ノーム・チョムスキー、オリバー・ストーン、ジョン・ダワー、マイケル・ムーア、リチャード・フォークら29人がよびかけた「沖縄への新たな基地建設に反対し、平和と尊厳、人権、環境保護のために闘う県民を支持する」声明には選挙後も署名者が続き、ノーベル賞受賞者、世界の日本研究を代表する人々、国際法の権威、アカデミー賞受賞の映画監督ら100人を越え、「平和研究」の父とされる政治学者ヨハン・ガルトゥング氏、オランダのジャーナリスト、カレル・V・ウォルフレン氏、ピュリツァー賞受賞の歴史家マーティン・シャーウィン氏、医師で国際的反核運動指導者のヘレン・カルディコット氏らも加わりました。でも本土のメディアは、糸数慶子参院議員の渡米記者会見を小さく報じているだけのようです。
◆安倍内閣の施策については、ご本人はアベノミクス景気・株価と国会議席・内閣支持率を根拠にイケイケのようですが、国際的には、中国・韓国にとどまらない包囲網がつくられつつあります。昨年末の靖国参拝がアメリカ政府から「失望」されたのに続いて、その弁明のために出たらしい1月末の世界経済フォーラム(ダボス会議)で、中国側出席者王外相からA級戦犯合祀を追及され「ドイツ首相がヒトラーの墓に参るようなもの」とされたばかりでなく、ちょうど第一次世界大戦100周年で、20世紀の世界戦争の過ちを起こしてはならないと歴史的教訓を汲み取ろうとしているヨーロッパまででかけ、第一次世界大戦前の英独関係に現在の日中関係を重ね合わせるという大失態。しかも自分がなぜ非難されるのかもわからないらしい、歴史認識の鈍感さ。1月29日の国連安全保障理事会では、まさにこの第一次世界大戦100周年の特別会合で、日本が「国連憲章が作り上げた戦後秩序への挑戦」と非難されているのですが、必死で反論せざるをえない外務官僚にとっても迷惑なことでしょう。安倍首相の歴史認識を、それこそ「国家機密」にしたいところですが、本人が国連・EUが生まれた意味や「チャイメリカ」の現在を理解できず、国会中も外に出て、靖国参拝や集団的安全保障を「理解」してもらおうとするものですから、どうにも止まりません。そのうえ、同じ歴史認識を共有する人物が、公共放送と国営放送の違いもわからずNHK会長になり、「国際放送」を時の政府の進軍ラッパにしようとしている状況に、イギリスBBC放送が驚いているのは当然でしょう。早速NHKラジオで原発コストを取り上げようとした解説者に、現場のディレクターが難色を示し、放送中止・降板になりました。そのラジオ原稿案がウェブで公表されたのは救いですが、国内の言論の自由も、大きな危機です。このところ本サイト学術論文データベ ースに重要な問題提起を立て続けに発表している神戸の弁護士・深草徹さんから、新たに「立憲主義を守るために秘密保護法が必要との謬論を駁す」という長谷部恭男教授批判と、「核燃料サイクルから撤退を」という新稿が寄稿されました。ぜひ、ご一読ください。
◆現在進行中の東京都知事選挙は、これ以上の安倍内閣の暴走を許すのか否か、原発再稼働を許さず、原発ゼロへとリセットできるのかどうかの、国政に大きな影響を持つ選択になってきました。案の定マスコミは、「原子力は都政の争点になじまない」「景気対策や福祉やオリンピックにならぶ一つの争点にすぎない」という争点誘導・拡散を進めていますが、3・11を経験した日本への世界からのまなざしは、福島や東北の被災者たちの関心と期待は、東京都政から脱原発へと舵が切れるかどうかに、注がれています。「原発ゼロ」候補が複数いるのは、有権者にとっては戸惑い、まぎらわしいところですが、投票日前の状況によっては、当選可能な最有力候補に集中することもありうるでしょう。選ばれるのは一人だけですから。この機会を逸すると、私が『日本の社会主義ーー原爆反対・原発推進の論理』で自戒を込めて描いたように、 チェルノブイリ後の日本で、故高木仁三郎さんらが死力を尽くした「脱原発法」制定運動が、反核運動内部の分裂で挫折し、葬り去られた歴史の二の舞になるのでは、とおそれます。安倍内閣の方は、エネルギー基本計画決定を一時的に遅らせたものの、都知事選の結果次第では、再稼働ばかりか新規建設・稼働延長まで狙っていますし、原発輸出を加速させ、集団的自衛権から憲法改正、いや中国との武力衝突・戦争まで突っ走りかねない勢いですから。メディアの責任は、重大です。STAP細胞を発見した小保方晴子博士は、「研究成果に関係のない報道が一人歩きしてしまい、研究活動に支障が出ている状況」に直面して、「報道関係者の皆様へのお願い」を発表しています。過熱するメディアへの抗議です。博士の発見した細胞の「初期化」とは、「単細胞生物にストレスがかかると胞子になったりするように、(多細胞生物である)私たちの細胞も、ストレスがかかると何とかして生き延びようとするメカニズムが働くのではないか」 というロマンを孕むもの。人間社会も、自然の一部である以上、そうした再生メカニズムを働かせてほしいものです。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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