(新・管見中国 2)
中国には「五毛族」といわれる人びとがいて、ネット上に反権力的な文章などを見つけるや、よってたかって攻撃を加え、相手を炎上させるという話を御存じの方も多いだろう。「毛」というのは中国の最小の通貨単位で1元(約20円)の100分の1、最近は元が高くなったと言っても日本円で20銭くらい、だから「五毛」で1円というところだが、とにかくネットで反権力的言動を見つけて、それを攻撃すれば1回ごとに五毛が報酬として与えられるので「五毛族」という。
しかし、そういういわば烏合の衆では力不足というわけか、中国共産党の下部組織、幹部の養成機関ともいえる「共産主義青年団」が組織的にネット志願軍部隊を作り始め、その数なんと一千万人を目指すという。
これは香港紙『明報』が4月7日に報じたものだが、共青団中央が今年2月13日に下部組織に発した「通知」は、習近平総書記の重要指示の精神を貫徹するために共青団員および各領域の優秀な青年を動員して、彼らの先進性と責任感をネット上に反映し、「中国の優良ネット利用者」からの「良い声」で「晴朗なるネット空間」構築するための「青年ネット文明志願者隊」を組織することを呼びかけている。
「通知」には、志願者は各省、市、県の共青団の団員数の20%を下回ってはならないとされ、その目標は1050.3万人とされている。しかもその内の400万人は大学、高等専門学校の学生でなければならず、広東省の場合、最多目標は中山大学の9000人、最少は香港中文大学(深圳)の100人である。
共青団の広東省委員会から下部組織に出された指示では、この任務は「一票否決」の対象となる。つまりこの任務を達成できなければ、ほかの活動がどうあろうとも、その組織の活動は「不合格」とされるというきびしいものだ。
組織された志願者は共青団中央が提起する「陽光一体化」(共産党や共青団の政策支持)行動に積極的に参加し、社会主義の核心的価値観を支持する言論を広める一方、それに反する言論は論駁して斥けなければならず、「沈黙の大多数」であってはならないとされている。
(志願軍参加の青年たちの記念写真・「网络」=インターネットの意味)
最近の中国の新聞やテレビはどこも、いつでも習近平一色でこれ以上なにを宣伝する必要があるのか首を傾げるほどであるが、それでなおこういう志願軍を組織しなければならない理由はなんなのか。
ある人権活動家は次のような見方をしている。「民衆は官制メディアを信用していないから、人々は真実の情報を求めるのはネットである。だから政府はネットに大量の水を注ぎこまなければならないのだ。だから五毛党は『ネット水軍』と呼ばれており、今でも大部分は共青団が組織したものだ」
アジア・インフラ投資銀行の創設では50か国以上の参加申し込みを得て、外交的には
米や日本を慌てさせる存在感を示した中国だが、国内的な政権の威信は逆にますます低下しているのであろう。そっぽを向く民衆を振り向かせるのは、外貨や武力がものをいう外交よりも、じつははるかに難しいのかもしれない。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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