2001年9月11日の国際テロ組織アルカイダによる米国への同時多発テロ攻撃から20年。アルカイダが根拠地としていたアフガニスタンに対する米国はじめ同盟国の戦争の20年間が、今年9月11日までに終わる。最盛時1万3千人以上いた駐留米軍は2,500人にまで縮小しているが、そのすべてが撤退する予定。NATO諸国からの駐留軍もすべて撤退する。
アフガニスタンの現状は、首都カブールも全国の主要都市も、カブールの政府の支配下にあるが、中小都市から農村の半分以上では反政府武装勢力タリバンが実効支配している。2015年から米国とタリバンは湾岸アラブ国のカタールで和平交渉を断続的に続け、20年2月に米軍全面撤退合意に達し、最終的に今年9月までに実施することとなった。一方、政府側はタリバンが加わる交渉への参加を拒否し続けたままだ。
アシュラフ・ガニ大統領が率いるアフガニスタン政府は、18万人の国軍、9万人の国家警察隊を持ち、米国はじめ多額の国際援助で、約19億ドルの国防予算の6割以上を賄っている。
米軍以下NATO諸国の軍隊が全面撤退した後、タリバンと政府軍の戦闘が激化し、国家の破壊が進む懸念がアフガン国内にあることは勿論だ。しかし一方では、タリバンとタリバン以外の住民が折り合い、協力しあって危機を乗りきる努力も始まっている。すべての国民が、この20年間の苦しみを経験してきたのだから。
ここでは、アフガン報道を、おそらく世界のどのメディアよりも、偏らず、積極的に報道してきた英BBCの現地取材報道を紹介する。
現地状況は地域によって大きく異なるが、この報道は、4月15日のアジア版での現地取材報告で、二人の記者とそのチームによる、アフガニスタン北部の都市マザリシャリフから30分ほどのタリバン支配下の広いバルフ地域からのリポート。
タリバン側の主説明役は、この地域全体の首長に当たるハジ・ヘクマット。彼は、タリバン政権が全国を支配していた1990年代にタリバンに加わったベテラン。黒いターバンを頭に巻き、全身から香水の香りが漂っていた。
この地域に入ったBBCの取材チームを、道の両側に整列した武装市民たちが出迎えた。
彼らは、ロケット手投げ弾発射機か米軍から捕獲したM4ライフル銃を持っていた。出迎えチームの指揮官は、この地域のタリバン軍事司令官のバリャライ。「政府軍はこの地域最大の市場に駐留しているが、われわれの包囲で、彼らはその場を離れられない。この地域は、われわれのものだ」「こうした風景は、アフガニスタンの農村地帯では、いたるところで見られる」と彼は胸を張った。(つづく)
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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