青森からの報告 -高レベル放射性廃棄物、イギリスから六ヶ所村へ返還-

 2011年9月15日朝6時半ごろ、イギリスから返還された高レベル放射性廃棄物のガラス固化体76本を積んだ輸送船「パシフィック・グリーブ号」(Pacific Grebe)が、青森県六ヶ所村のむつ小川原港に姿を現し、7時前に着岸した。

 9月半ばにもなればストーブが欲しくなるここ三八上北地方であるが、この日30℃を超える暑い日ざしのもと、正午、ガラス固化体の入った容器が輸送船から引き揚げられ、特別仕様の専用輸送車に積まれた。青森県内や仙台・東京から駆けつけた市民(約30人)が陸揚げ作業を観察し、抗議の声をあげた。

 福島第一原発事故後、高レベル放射性廃棄物の搬入は初めてである。ゆうゆうと危険な放射性廃棄物が陸揚げされている光景は、福島の原発事故を日本はなにも反省していないことを示している。

 今回の高レベル放射性廃棄物搬入でとくに印象的だったのは、記者の人たちが港の前に集まったわれわれに、この輸送船の到着の日時をいつごろ知りましたかと聞いてくることであった。市民はもちろん記者たちも今回の搬入日の確かな情報が寸前まで得られず手探り状態が続いたのである。原発推進側の隠蔽体質は相変わらずである。

 日本の電力会社は原発から発生した使用済み燃料の再処理をフランスとイギリスに委託し、フランスからの高レベル放射性廃棄物返還は2007年に終了、イギリスからのものが去年始まり、今回が2回目である。今後イギリスからは約10年間で約900本のガラス固化体が、“単一返還“と称して低レベル放射性廃棄物を含めて、六ヶ所村に搬入される計画で、フランスからは2013年に低レベル廃棄物の返還が始まる。なおこのたび返還された76本のうち関西電力と九州電力から発生した分がそれぞれ28本、四国電力分が20本である。

 六ヶ所村は高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵地として30~50年保管する予定だが、最終処分地の決まる見通しはまったくない。現在、高レベル放射性廃棄物は全世界に少なくとも25万トン存在するといわれ、放射性廃棄物が人体に危険を及ぼす期間は少なくとも10万年といわれる。最終処分地はすなわち永久保存地である。今すぐ原発を止めたとしてもわれわれは現存する放射性廃棄物の危険性を“一生”背負わなくてはならない。今すぐ原発を止め放射性廃棄物をこれ以上発生させないことが現実と向き合う第一歩である。

 青森県内では、5日に六ヶ所の古川健治村長が核燃サイクル事業の継続を、14日に大間の金澤満春町長が大間原発の工事再開を、国や県に求めていく方針をそれぞれ示した。(終)

高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を入れた容器が運搬車に降ろされる。
2011年9月15日正午ごろ、青森県六ヶ所村むつ小川原港にて。
写真:青山森人