「台湾有事」に対する日本人民の態度を考える

 高市首相の、中国の台湾武力統一に対しては日米安保の集団的自衛権を発動し米国と同盟して参戦する、という「台湾有事発言」を契機に、日本と中国の対立が激化している。
(1)中国の侵攻に反対し台湾の祖国防衛を支持する しかし日米の参戦には反対する
 中国が軍事侵攻する「台湾有事」はありうる。それに対して、日本人民は、侵略・併合として中国に反対し、反侵略・祖国防衛として台湾を支持・支援する。しかし、米国・日本が日米安保体制を発動して参戦するのに対しては、戦争が帝国主義国間の覇権闘争へ転化してしまうので、反対する。こういう態度をとるべきであると考える。
 ウクライナ戦争に対する態度、ロシアを侵略と批判しウクライナを反侵略・祖国防衛と支持するが、米国・NATOの参戦には反対する、これと同じである。
(2)台湾の自己決定権を支持する 歴史的な経緯と現在の政治状況が基礎にある 
 台湾は、長く中国の統治下にはなかった。統治下に入ったのは1683年、清の時期である。その後、日清・帝国主義戦争(1894~95年)で清が敗北し、日本に割譲され植民地支配された。さらに、1945年に日本帝国主義が第二次大戦で敗北した後、国民党政権の統治下に入り、開発独裁の国家資本主義で工業化した。
 中国は、1949年に人民民主主義革命が勝利した。しかし、社会主義革命(文化大革命)が破綻して変質し、官僚制国家資本主義化して工業化し、現在は帝国主義化している。
 開発独裁の国家資本主義は、台湾・韓国からASEAN・インド(さらに中東・アフリカ)など。官僚制国家資本主義は、ソ連から中国・ベトナム・朝鮮など。両者は、米国・西欧・日本など「北」の先発資本主義(先発帝国主義)に対して、かっては植民地であった「南」における後発資本主義、その双生児である(ソ連=ロシアは「南」ではなく「北」の最後尾)。
 資本主義の工業化は労働者階級を増大させ、人民の民主化闘争となる。その結果だが、台湾と中国は、同じ資本主義国家(ブルジョア階級独裁)でも、対照的である。台湾では、人民が、日本の支配に抵抗し(1995年「乙未戦争」)、「二・二八事件」(1947年)をはじめとする国民党の圧制にも抵抗し、ついに1990年前後、開発独裁=権威主義に対する民主化闘争に勝利した。現在はブルジョア民主主義である。中国は逆、1989年天安門事件で人民の民主化闘争が敗北し、現在は共産党一党独裁の全体主義である。
 台湾人民の意志は、事実上の独立国家という現状の維持。中国による台湾統一は、軍事的侵攻によらず、政治的圧力で平和的であっても、併合。台湾人民は、反侵略・祖国防衛で闘争するだろう。それは自己決定権である。それを日本人民は支持するべきである。
・中国は帝国主義へ変質し「一つの中国」は進歩から反動へ転化した
 自己決定権の最大は、国家的な分離・独立=「一つが二つに分かれる」である。台湾問題は「中国の内政問題」から国家間の「外交問題」に転化している。
 「一つの中国」は、かっては進歩的であった。被抑圧民族の立場で帝国主義と植民地主義に反対した。しかし、現在は反動的、帝国主義と抑圧民族の立場である。対外的に台湾を圧迫するだけではない。対内的に、「分離主義」と批判して少数民族の自己決定権を否定し、漢族がウィグル・チベット・モンゴルなどの諸民族を抑圧し同化させている。
 国内の被抑圧民族と近隣の被圧迫国家の抵抗、それでソ連帝国主義は崩壊した。ウクライナ戦争も長期的には、縮小したロシア帝国主義の再崩壊へ転化する。さらに長期的であろうが、台湾侵略・併合は中国帝国主義の崩壊へ転化するだろう。
(3)日本人民が要求する国の進路 戦争と覇権主義と帝国主義に反対しアジアに合流する
 「南」の後発資本主義(「グローバル・サウス」)が「北」に対して不均等発展し、「南」の後発帝国主義=中国が覇権を奪取しようと「北」のアメリカ帝国主義と対立し闘争している。台湾統一は「天王山」である。「南北逆転」。アメリカは急速に衰退し没落している。
 トランプ政権は「国家安全保障戦略」を転換した。「新モンロー主義」と「G2」。①南北アメリカ(西半球)を独占的勢力圏とする(→ベネズエラ攻撃)。②アジアやヨーロッパなどでは、中国・ロシアに対して日本・西欧を対抗的に動員しながら「ディール」する(「融和主義」は老大国の習性)。しかし、米中関係は対立と闘争が基調である(→第三次大戦の危機)。中国は「G2」では止まらない。かってのアメリカと同じく「G1」まで突き進む。
 日本帝国主義は、日米安保体制で存立する。米国の大覇権の中で日本の小覇権がある。トランプ政権の戦略転換に動揺している。しかし、高市政権ならずとも、結局は、米国を後ろ盾と頼り引き出し、対中国・帝国主義戦争に突進するしかない。
・日本人民は台湾と沖縄の自己決定権を支持し「日米安保離脱」と「九条護憲」を追求する
 現在、沖縄人民が、帝国主義戦争に反対して闘争している。米軍にも自衛隊にも反対し、非軍事化を要求している。それは沖縄の自己決定権である(広範な自治の要求)。
 沖縄の歴史は台湾と似る。長く独立国であったが、1872年に日本に併合され、1941~45年の日米・帝国主義戦争で戦場にされ、米国に占領されて軍事植民地支配された。それに反対して闘争し、日本との国家的結合を選択し、1972年に「本土復帰」した。日本人民は、沖縄の自己決定権を、たとえ国家的分離・独立になっても、支持しなくてはならない。
 その意義は大きい。中国人民に対しては、自国政府の台湾侵略に反対し台湾の自己決定権を支持するよう、大きなアピールになる。台湾併合の中国政府に対しては大きな打撃になり、祖国防衛の台湾に対しては大きな支援になる。沖縄と台湾は、戦争に反対し、米国・日本と中国、両方の覇権主義と帝国主義に反対する最前線である。沖縄の自己決定権は対日本で、台湾は対中国であるが、似通った歴史と地位が沖縄と台湾を結びつける。
 戦争に反対し両方の覇権主義と帝国主義に反対する闘争は、韓国・朝鮮とASEANへ、アジア全体へと拡大していくだろう。アジアは「南」の後発資本主義の中心である。資本主義の工業化は、労働者階級を増大させ、人民は民主主義を要求し、同時に国の独立と自主を要求する。アジアには反戦・反覇権・反帝の闘争に大きな基盤がある。
 そこに合流する。日本人民は国の進路をそう追求するべきである。そのためには、過去の侵略と植民地主義の反省と謝罪、および現在の覇権主義からの離脱、これが必要である。それが「九条護憲」と「日米安保離脱」、日本人民はそれを一貫して闘争してきた。
(4)「中国侵略戦争」では大衆的反戦闘争にならない 「中国論」で社会主義を「ルネサンス」
 新左翼系には米国・日本の「中国侵略戦争」とする見方がある(『前進』)。これでは、中国を「反侵略・祖国防衛」と支持することになり、人民の大衆的な反戦闘争は組織できない。原因は現在の中国を(かってのソ連も)帝国主義と見ない「反帝反スタ」にある。
 現在、「北」は、工業的空洞化と金融化で労働者階級が「没落」し「差別・分断」され、ブルジョア民主主義が崩壊する体制的危機である。トランプ主義などファシズム=予防反革命が早くも登場している。社会主義革命が問われている。しかし、中国(とソ連)の変質が重くのしかかる。官僚制国家資本主義化と帝国主義化を総括し(眼目は労働者階級が自主管理する階級闘争)、社会主義を「ルネサンス」しなくてはならない。(おわり)

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