4月28日を、どんな日として迎えるべきか?

著者: 加藤哲郎 かとうてつろう : 一橋大学名誉教授・早稲田大学客員教授
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◆2013.4.1 前回更新が遅れ、新学期のあわただしい時期で、今回更新はごく簡単にすませ、前回分に続けます。TPPといい日中・日韓関係といい、安倍内閣の暴走はアメリカ国務省筋からさえ心配されています。ちょっとした景気好転と世論調査結果を後ろ盾に、沖縄も憲法改正も原発再稼働も、前のめりに動き出しています。北朝鮮の金正恩体制がこれまた暴走しているのが、米中チャイメリカの懸念にもかかわらず、安倍政権への援護・追い風になっている構図です。東アジアとの関係を修復しないと、アメリカとの関係さえ、困難を抱えるでしょう。対決すべき民主党は無力に内部崩壊しつつあり、維新の会が憲法改正をはっきりかかげて自民党と基本政策が近い第二党になりそうな気配。7月参院選後 と私も予想していた政界再編は、どうやら前倒しがありそうです。

3・11で、日本社会は生まれ変わるはずでした。経済成長一本槍で自然を征服するのではなく、自然と共生し身の丈の豊かさで自治と協同をすすめる地域社会の再生、新しい文明社会を作る方向に、動こうとしていました。しかし、政治がそれを妨げました。東日本では地震・津波の復旧さえできておらず、福島原発は「収束」どころか毎日新聞調べで31万以上の避難民、事故現場は数千人の被曝労働者の日々の戦場になっています。それは同時に、すでに人口減少に転じ、2040年には2010年比2000万人減るという世界最先端の少子高齢化社会です。アベノミクスなる金融カンフル注射の効果はせいぜい数年、雇用にも賃金にもまわらぬ株価・不動産のミニ・バブルと格差をつくるだけでしょう。少子・高齢社会化には無力です。その動力源がまたしても原発では、20世紀への逆戻りです。経済学が「経世済民」の気概を取り戻し、政治が権威におもねる「マツリゴト」から「自治・協治」になることが求められています。

4月28日に、安倍内閣は「主権回復の日」として政府主催の記念式典を準備しています。1952年のサンフランシスコ講和条約発効の日ですが、同時に日米安保条約が動き出した日です。復帰前の沖縄では「屈辱の日」とされ、本土でも「428沖縄デー」として、返還運動が毎年もたれてきた日です。今でも沖縄では「屈辱」が続いています。ちょうど60周年の昨年ではなく、今年2013年からあえて「主権回復」記念日にしようとするのは、別の意図があるからです。「主権・領土・国民」というドイツ国家学の古典的「国家」概念を復活し、日中・日韓・日露の間の「領土」係争問題を「国民」の踏み絵にしようという閉鎖的ナショナリズムが見え見えです。沖縄県議会は抗議を決議し沖縄県選出国会議員5人はすでに欠席の意を表しています。東京の新大久保大阪の鶴橋では、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の街宣活動と地域住民の対立が激化しています。長期的には外国人移民との共生が不可欠と小渕内閣時の政府報告書もいっていたのに、「国籍」をことさらに持ち出して「国民」対「非国民」を境界づける排外主義運動。「いつかきた道」はごめんです。

「加藤哲郎のネチズンカレッジ」から許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔eye2225:130402〕