もっと検査を! 無責任な政府と「専門家」に任せず、自分自身で情報評価を![パンデミックの政治 5]

かと 2020.4.15  世界はいま、21世紀最大の危機のなかにあります。それも日々、変わっています。世界中が国境を閉じ、隔離と閉鎖、自粛と自制を求めています。ただし、マックス・ウェーバーの生命を奪った100年前のスペイン風邪の時代とはちがって、テレビやインターネットを通じて、無数のパンデミック情報が飛び交っています。今回は、CIAがホワイトハウスの米国大統領に確かな情報のみを届けるための仕分けの手法、シャーマン・ケントが開拓した「情報評価」を試みました。

かと 2020年新型コロナウィルス(COVID-19)パンデミックの蔓延は、止まりません。すべての大陸で、猛威をふるっています。刻々変わる世界の感染の広がりは、ジョンズ・ホプキンス大学の特設サイトが、世界の定番になりつつあります。Worlddata.info や WHOの公式発表で補いましょう。

https://coronavirus.jhu.edu/map.html

https://www.worlddata.info/coronavirus-covid19.php

https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019

かとジョンズ・ホプキンス大調査では、2週間前に184か国、757,944人感染、死者も36,674人(3月31日午前4時現在)というデータでしたが、いまや感染者は185か国192万人、死者も三倍近くで12万人です(4月14 日現在)。感染爆発の中心は、中国・ヨーロッパからアメリカに移りました。アメリカの感染者は58万人、死者2万人以上です。ただし、ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)データにはPCR検査数も出ていて、アメリカはすでに、無保険者・非白人を含め300万人近くを無料で検査済みです。つまり、市内感染率の概要をつかんでいます。発祥地中国は、8万3000人感染で第一波のピークを越え、最近欧米からの帰国者を中心に、第二波が始まりました。イタリア、スペイン、フランス、ドイツなどは10万人以上の感染爆発が続き、皇太子も首相も感染したイギリスは中国を越えて10万に迫る勢いです。パンデミックは、オーストラリア、中南米から、医療システムの脆弱なアフリカ大陸に広がっています。WHOやIOCが恐れるのは、アフリカでの爆発です。それが進むと、来年に延期された東京オリンピックどころではないでしょう。最近のIOCバッハ会長の発言は、中止の可能性を含め、それを示唆しています。

かと 世界経済は、リーマンショックを上回る打撃を受けています。国際通貨基金(IMF)さえ、世界恐慌をリアルな見通しとして述べています。世界中で都市閉鎖(ロックダウン)が行われていますが、それは、日本で言われる「感染対策と経済政策のバランス」などではなく、感染症第一で、コロナとたたかえなければ、経済も社会も壊滅しかねないからです。西村担当相は「自粛」のみを述べて国民の生活を保障できない緊急経済対策のお粗末を、「休業補償している国は見当たらない」などと述べていますが、とんでもありません。医療崩壊をまねがれても、申請2日後に3か月分の休業補償が振り込まれるドイツをはじめ、休業・休職補償は世界の常識です。医療崩壊をはじめ大きな犠牲を出しているスペインでは、経済再建の柱にベーシックインカムを導入しようとしています。初動の遅れで世界一の感染国となり、WHO に責任を押しつけるトランプのアメリカでさえ、失業者1600万人突破の現実と秋の大統領選を前にして、一人大人13万円、こども5万5千円の直接給付を開始しました。ちょうど日本で、466億円かけて世帯毎に布マスク2枚が配られるのと同時でした。日本のメディアでは大きくは報じられませんが、CNNBBCニューヨークタイムズニューズウェークを見れば、いくらでも情報を得られます。コロナ収束後の世界地図は、これまでとは大きく違ったものになるでしょう。

かと コロナばかりでなく、「安倍ウィルス」にも汚染された日本は、悲惨です。「クラスター」「オーバーシュート」等、「安倍ウィルス」にまみれた「専門家」のいう「日本式対策」に、欺されてはいけません。まずは徹底的な感染症対策、「検査・隔離・治療」が必要です。信頼しうるデータなしの日本の今は、まるでミッドウェー海戦前夜、いやインパール作戦突入中です。ちなみに、当初トランプの唱えた「チャイナ・ウィルス」は、FD・ルーズベルトの「リメンバー・パールハーバー」にちなんだものです。黄禍論と結びつけば、アメリカでは人種差別や経済格差を隠して「戦意高揚」が可能になります。日本では、医師も看護士も、国会議員の家族や秘書・運転手も、自衛官も警察官も、介護施設まで、次々と感染しています。中国との距離とクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から早期に感染者が見つかったものの、東京オリンピック延期決定までの6週間を、感染者数を少なく見せるために、PCR検査をサボタージュしてきました。それが日本式「クラスター作戦」でしたが、所詮「水際対策」の延長上での後進国型で、大都市の市内感染には、無力でした。2か月あれば、医師や医療機関、保健所・保健士、防護服や医療用マスク、人工呼吸器等、緊急医療資源の準備ができたはずなのに、「安倍ウィルス」に汚染された厚生労働省、「専門家会議」は、それさえも怠ってきました。行き当たりばったりの後手後手の対策です。JHUの世界感染地図で見れば瞭然、極端に検査数が少なく、」まともな疫学的国際比較さえできません。日々の感染者数増の数字も、熱があり不安を持った市民の相談者の2%しか、PCR検査を受けられません。90%が検査の窓口にも届かず、断られました。そのうえ、日々の検査数が記者会見等では発表されず、検査人数中の何人が感染者であったかの陽性率がわかりませんから、市民は一喜一憂するのみで、不安は募るばかりです。

かと  ほとんどの国では、パンデミックの危機にあたって、政治の最高指導者は連日記者会見を開き、国民に直接語り、働きかけています。ようやく日本でも、東京オリンピック延期決定直後から、安倍首相と利害の一致していた小池東京都知事がオモテにしゃしゃりでて、夏の都知事選を見据えたパフォーマンスをはじめました。安倍首相も、全国一斉休校から緊急事態宣言へと、「やってる感」演技を始めました。ただし、記者会見ではプロンプター原稿の読み上げだけで、まともに質問には答えませんでした。緊急経済対策には、こっそり「感染症を巡るネガティブな対日認識を払拭するため,外務本省及び在外公館において,SNS等インターネットを通じ,我が国の状況や取組に係る情報発信を拡充」する24億円の情報戦予算の他、「新型コロナウイルス感染症対策や経済対策に盛り込まれた各施策の内容を始めとした喫緊の取組等についての国内広報を実施」という100億円広報予算も、忍び込ませました。公共放送を大本営発表用メディアとし、「安倍晋三がんばれ」らしい35万人のネット応援団を使って、批判的メディアの封じ込めに使おうとしています。もともと今年度厚生労働省予算には、「医療法上の病床について、稼働病床数ベースで1割以上の削減を行った病院に対し「将来、当該病床を稼働させていれば得られたであろう利益」の補助を全額国費で行うこととし、全国での病床数削減を狙う」として、国費84億円が入っています。それがいまやベッド数不足で、あわててアパホテルを借り上げる、無為無策の医療後進国日本です。国民には布マスク2枚のみで、まともな休業補償もなく、ひたすら自粛を促すのみのこんな状況下では、信頼できる情報を見分け、自分自身でいのちとくらしを守る情報仕分けが必要不可欠です。

 

 

かと 一つのフォークロアが、静かにネット上で広まっています。京大人文研・農業史の藤原辰史さんのエッセイ「パンデミックを生きる指針——歴史研究のアプローチ」が、三人の友人から届きました。100年前のスペイン風邪の事例を振り返りつつ、「起こりうる事態を冷徹に考える」ための、心を打つ一文です。ちょうど21世紀の初めの9.11同時テロの際に、「100人の地球村」が広がったように、眼前の世界を理性的に理解しようと、読まれているようです。特にオンデマンド授業で、学生たちに読ませたい文章です。皆さんも、ぜひ拡散してください。

https://www.iwanamishinsho80.com/post/pandemic
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200410-00010000-kyt-cul

藤原辰史さんのいう「事態を冷徹に考える」うえで、ホンモノの「専門家」の力と知恵が不可欠です。前回も紹介しましたが、ノーベル賞受賞者・山中伸弥教授の「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」には、最新医学情報ばかりでなく、「証拠(エビデンス)の強さによる情報分類」のページがあって、極めて有意義です。東京も大阪も毎日の検査が500人以下なのは「異常」と認めています。

https://www.covid19-yamanaka.com

山中さんに呼応するかのように、同じくノーベル賞受賞者の本庶佑さんも、緊急提言を出しました。その第一は、「PCR検査の大幅増」です。その検査の具体的進め方について、すでに600人以上の医師たちによって、保健所を通さない検査態勢の仕組みも提案されています。直ちに実施すべきです。

かと 立命館大学・医療社会学の美馬達哉さん『<病>のスペクタクルーー生権力の政治学』(人文書院、2007年)には、「<感染症>とは何よりも政治学の対象」と出てきます。2002-03年のSARSの出現と人間の対応を、M・フーコーらの「生権力」の観点から論じて、有益です。現局面については、『現代ビジネス』誌上に寄稿しており、「科学がいえるのはここまで」という留保が誠実で、好感を持てます。政治学者の私の方は、2009年の新型インフルエンザ時のメキシコ滞在・隔離体験と、この間の731部隊研究から、本「ネチズンカレッジ」に「パンデミックの政治学」を連載しています。

2009年は、政治史の上では、自公連立麻生内閣から、民主党鳩山内閣への転換期でした。しかし、感染症対策の失敗で、政権交代になったわけではありません。日本での新型インフル感染の経過は、現在の首相官邸ホームページ「過去のパンデミックレビュー」に、日経新聞社会部次長・前村聡さんの「2009年新型インフルエンザ ―「未知の感染症」をどのように報じたのか?」が出ています。2020年のメディア報道ともよく似た展開で、参考になります。ただし、政局の上では、すでに支持率10%台で満身創痍の麻生内閣の末期、実際にパンデミックに初動対応したのは、後の東京都知事・舛添要一厚労相と、国内感染が関西から始まったために橋下徹・大阪府知事(当時)で、少なくとも2020年の安倍首相・加藤厚労相・西村担当相(実は陰に今井首相補佐官)体制よりは、まともに指導力を発揮し、感染症に向き合ったようです。

かと こうした過去に学ばないまま、2020年の日本は、EU内でのイタリアと同じように、新自由主義医療政策で高齢化社会なのに医療予算が削られ、病院統廃合・保健所縮小まで進んでいました。今回は、SARS/MERSを経験した中国・韓国の方が素早く、日本が東アジアの医療後進国であることを、世界に証しました。
PCR検査消極論・拡充不要論の「専門家会議」厚労省医系技官プラス国立感染研系御用学者を、戦時陸海軍・731部隊の「亡霊」まで遡って見るのは、私ばかりではありません。医師の上昌広さんも同じです。上さんは、「原子力ムラ」になぞらえて、医・薬・官の「医療ムラ」といいます(『医療詐欺』講談社新書、2014)。日本の「医療崩壊」が、1980年代厚生省の老人医療費削減政策に始まり、21世紀に医療従事者削減・病院再統合・ベッド数削減まで進んできたことは、上昌広さんの『病院は東京から破綻する』(朝日新聞出版)他の著書や、ウェブ上の論文で、詳しく展開されています。私は、上さんの分析に示唆を得て、獣医学や自衛隊・医療メディアも加えて「ワクチン村」と言ってきました。今回改めて調べると、東京の感染クラスターの中心・台東区永寿総合病院創設者倉内喜久雄ペスト・ワクチンとも関係)、「アベノマスク」466億円の政府発注先「興和」創設者・山内忠重が、なぜか共に元731部隊でした(薬害エイズのミドリ十字と同じ)。大きく取り上げられなくなった慈恵医大・慶応病院の院内感染を含め、『悪魔の飽食』の「亡霊」を、今後も追いかけていきます。

かと現局面の最先端医学からの感染対策評価は、東大先端研・児玉龍彦さんが、最も信頼できます。金子勝さんの経済政策批判と共に、you tube 「デモクラシー・タイムズ」で見ることができます。国民をごまかし、検査を妨害してきた「専門家会議」と厚労省医系技官・技監の問題性も明確に語られ、その「司令塔」を変えるべき、と提言されています。深く納得します。

ka「自粛で東京を救えるか」https://www.youtube.com/watch?v=7EtDPtKd4L0

「自分で考え、いのちを守れ!」 https://www.youtube.com/watch?v=RUrC57UZjYk
「東京はニューヨークになるか」https://www.youtube.com/watch?v=r-3QyWfSsCQ
「検査、検査、検査そして隔離」https://www.youtube.com/watch?v=ApAbkrsa7ZU 

かと この国の最高責任者は、自らの権力維持に汲々とし、感染対策は厚労省と御用学者に、経済政策は秘書官と経産省・財務省にまかせ、東京オリンピックの延期が決まると、緊急事態法制の整備と、憲法改正を目標にしています。日本版NSC=国家安全保障局の出番です。今井尚哉と共に、いよいよ北村滋が動きます。感染対策にも、各地の学校児童のマスクは白のみとか、給付金は個人でなく世帯単位とか、日本会議風復古調が忍ばせてあります。国民生活を置き去りにしての次の手は、おそらく、満を持しての天皇の「お言葉」=政治利用と、医療現場への自衛隊大量導入でしょう。野党まで乗ってしまった緊急事態宣言の問題性は、小倉利丸さんの批評、ドイツと比較しての水島朝穂さんの憲法学からの批判が、よく考えられ、すぐれています。これからでは遅すぎの可能性大ですが、ようやく日本も、WHOの言っていた「検査・検査・検査」の局面です。クルーズ船で乗員の検査を後回しにして乗客の集団感染を招いた轍をふまえて、まずは、医療従事者・保健士の安全のためのPCR検査・抗体検査から、始めなければなりません。「検査・隔離・治療・救命」への、壮大な人体実験が進行中です。

初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4705:200416〕