迫りくる世界戦争の危機と反戦闘争の課題   ①中国論      

新左翼各派の機関紙・新年号を読んだ。「戦争と分断・対立」(『戦旗』)など、それぞれの情勢認識で、米国・日本と中国の戦争の危機に対して反戦闘争を呼びかけている。
①両方が帝国主義戦争 戦争の真実を批判しないと反戦闘争は組織できない
「『対等な2つの大国』の間の対立・戦争ととらえることはできない」。「中国スターリン主義の台湾周辺や南中国海での軍事的活動のエスカレーションは…『覇権主義』『帝国主義』的動きというものではない」。「米帝の台湾強奪の中国侵略戦争に向けての軍事的重圧の激化にとことん追い詰められて…必死の対抗である」。『前進』はこう言う。
実は納得できない。最大党派なのでなおさらに。米日の「中国侵略」は真実ではない。これでは反中国・祖国防衛主義を突破できず、反戦闘争を組織できない。もちろん中国の日本侵略でもない。真実は覇権争奪、両方が帝国主義戦争である。問題は中国論である。
ブンド系の『戦旗』は「アジア太平洋および世界の覇権をめぐる米中対立」と言う。中国を覇権主義とは規定するが、帝国主義とは規定しない(と理解している)。反面、第4インターの『かけはし』は「資本主義」「新興の帝国主義」「国家資本主義」と規定している。
②中国は官僚制国家資本主義 それを基礎とする帝国主義
ソ連も中国も、生産手段の基幹は国家所有であるが、実際は官僚が管理し支配し、労働者は管理から排除されている。実質は官僚が所有し独占して階級化し、無産の労働者階級を隷属させ搾取している。官僚制国家資本主義である(それがスターリン主義)。
マルクス主義の資本主義規定は「労働と所有の分離」である。資本家と労働者の関係、それを、新左翼の多くが依拠する宇野経済学は、対等な商品交換関係と見る(「労働力商品化論」)。しかし、それは仮象である。真実は、生産手段を独占する資本家に無産の労働者が奴隷的に従属し搾取される階級関係である。それをソ連論・中国論へ適用する。
・文化大革命の破綻と天安門事件と習近平政権
文化大革命は、官僚主義と闘争した。しかし、労働者階級が、管理を独占する官僚を統制し、やがて取って代わって自主的大衆的に管理する、そういう持久的な階級闘争を組織できなかった。最後は「私心と闘う」など、観念論の主観主義に転落し、悲惨に破綻した(→カンボジア・ポルポト政権や日本・連合赤軍につらなる)。結局、官僚主義が勝利した。
中国で官僚制国家資本主義が確立するのは、天安門事件(1989年)である。ここで国家は官僚ブルジョア階級の独裁へ転化した(それが共産党独裁の本質)。「計画経済」が桎梏に転化したのがソ連崩壊の原因の一つだが、中国は市場経済(「改革開放」)で官僚制国家資本主義を発展させた。習近平政権の「一帯一路」は資本輸出と勢力圏、帝国主義化である。
③世界史的に総括 1970~80年代は大転機 不均等発展と地殻変動 米中覇権闘争へ
中国革命は破綻し、続いてベトナム革命も、「ドイモイ=刷新」で官僚制国家資本主義化し、変質した。20世紀を通じて、マルクス・レーニン主義はプロレタリア階級のヘゲモニーによる社会主義革命への転化(主観的能動性)を追求してきたが、破綻した。革命は全てブルジョア革命に終わり、資本主義化した(唯物論的必然性)。
19世紀の後発資本主義は専制君主制のドイツと日本であるが、官僚制国家資本主義は、20世紀の後発資本主義である(もう一つが韓国・台湾とASEANの開発独裁で双生児)。
グローバリズムは、資本主義の世界化と世界の資本主義化である。「北」の先発資本主義による「南」への資本輸出で始まった。資本主義の移植。それを、「南」が官僚制国家資本主義と開発独裁、2つの国家資本主義で内在的発展へ転化した。
民族解放・社会主義が、反対物の後発資本主義へ転化した。現在、世界資本主義の中心はアジアにある。いずれアフリカが続く。不均等発展で地殻変動が起きた。「北」は衰退し没落する「旧世界」、「南」は勃興する「新世界」(「グローバルサウス」)である。
この「南」の後発資本主義の中から、中国が後発帝国主義として登場した(いずれインドが続く)。しかも超大国である。「南」を基盤にアメリカ帝国主義に挑戦し、世界覇権を奪取しようとしている(ソ連=ロシアは遅れた「北」)。
・かって英独覇権闘争で2度の世界大戦 現在は米中覇権闘争で3度目の危機
 しかし、沖縄と台湾が対日米と対中国の自己決定権で闘争する。国際的人民闘争は反米から反覇権(反米反中)へ、時代が転換する。それが課題②である。 (続く) (2025.01.10)

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