最新の世論調査結果

オルバン首相はクチェの演説で、政府の補助金で運営されている調査機関Nézőpont Intézetの「FideszがTisza党を10ポイントリード」という忖度結果に依拠して、秋に総選挙をやれば、Fideszは再び2/3の議席を確保して政権を継続できると支持者を鼓舞した。
ところが、Nézőpont以外の世論調査はどこも、Tisza党の10ポイントリードを伝えている。Fidesz幹部は劣勢をひしひしと感じているが、権力移譲を認めないオルバンは忖度結果を信じ(信じようとして)、自ら陣頭指揮を買って支持者を鼓舞している。劣勢にあることはオルバン自身も分かっているが、それを認めるわけにはいかない。権力を失うことはすべての利権の喪失を意味する。Fidesz統治下で莫大な富を蓄えてきた政治家と周辺実業家への厳しい捜査を公言するTisza党の権力奪取は、何がなんでも阻止しなければならない。権力を失うことは政治家オルバンの死を意味する。だから、Tisza党の躍進を止めるために、大将が表に出て、形振り構わぬTisza党批判を展開している。「最後の悪あがき」とはこのことだ。
忖度が蔓延する独裁政治
世論調査機関が与党に忖度する結果を公表するのは調査機関としての自殺行為である。Nézőpontはブダペスト市長選挙でも、与党候補が10ポイントリードと調査結果を発表したが、選挙結果は真逆だった。調査と結果が15ポイントあるいは20ポイントも異なるのは尋常ではない。Nézőpontは調査機関というより、政府広報機関に堕している。道徳的な退廃である。
同じことは大学でも起きている。各大学は政府の補助金の削減を恐れて、政府の施策を批判する言動や施策とは相容れない主張や研究にたいして非常敏感になっている。Pride行進の時期にパズマーニィ大学の二人の心理学研究者は、「家族においては夫婦の性別よりも、子供にたいする愛情がより重要である」という趣旨の論文(hvg360: Egy keresztény szellemiségű egyetem oktatóiként és pszichológusként valljuk: minden szeretetre épülő kapcsolat egyenértékű)を週刊経済紙HVGに投稿した。この投稿にたいして、パズマーニィ大学の当該学部長は倫理審査委員会を立ち上げ、投稿者に戒告処分を下し、キリスト教方針にもとづく大学の理念を再教育する措置をとった。これにたいして、2名の研究者は辞職することになった。
以前にも、HVGでの対談でコルナイ・ヤーノシュとロシュタ・ミクローシュが、「現政府は反民主主義だ」と述べたことを理由に、コルヴィヌス大学の所属長はロシュタに退職勧告を行った。ロシュタはそれを拒否して裁判に訴えた。ロシュタは大学に残ることになったが、ロシュタが学科長を務めていた比較経済体制学科は廃止となり、給与の引上げが止められた。
他方、ミシュコルツ大学付属研究所がマジャル・ピーテルの前妻ヴァルガ・ユーディット(法務大臣を歴任)にたいして、月額200万Ftを超える客員研究員報酬を払っていることが暴露されたが、これは機密保持にたいする政権からヴァルガへの報酬である。大学にこれほどの給与を払う余裕などないが、政府がミシュコルルツ大学に特別予算としてヴァルガの報酬を渡している。機密報酬を提供するFidesz政権だけでなく、何の恥じらいもなくそれを受け取るヴァルガ・ユーディットも含め、Fidesz体制における市民社会的モラルの崩壊を教えている。
独裁政権が各種の忖度行動を惹き起こし、政権が大学を政治的に利用するのは、一方の当事者だけでなく、他方の当事者の道徳的退廃である。正常な市民社会の倫理や規範が崩れている。しかも、それを実行している人々は自らのモラルの退廃を意識することすらできない。
各種調査機関の結果
さて、忖度機関の調査結果を信じたいオルバンだが、Nézőpont以外の調査機関は9月初めの世論調査結果を発表した。夏の間、Fideszはオルバン陣頭指揮のもと、公金を使って、Fidesz支持者の結束と反Tiszaの膨大なキャンペーンを張ったので、その効果が注目された。しかし、調査結果はほとんど大勢に影響を与えていない。オルバンがどれほど鼻息を荒くして入れ込んでも、Fidesz離れは止まらない。辛うじて、年金生活者と小規模町村でTisza党を上回っているが、それ以外はすべてTisza党に押されている。
Publicusの9月8日-12日の調査によれば、Tisza党はFideszを37%対31%(投票に行くと回答した人々)、46%対37%(選択政党があると答えた人々)の結果を公表している。もしここで選挙が行われた場合、Tisza, Fidesz以外に、DKとMi Hazankが議席を得ると予想している。全回答者のうち、40%が政権交代を予想し、37%がFideszの継続を予想している。ここはかなり接近している。
一番信頼されているMediánの9月第1週の調査によれば、全有権者の37%がTisza、30%がFidesz支持となっているが、必ず投票に行くと答えた人々の間では、Tisza51%、Fidesz38%と大差がついている。意識的な投票者はTisza党を選ぶという結果である。
IDEA Intézetの調査結果はTisza48%、Fidesz39%、Závecz ResearchのそれはTisza33%(260万票)、Fidesz28%(220万票)、Republikon Intézetの8月末の調査結果はTisza30%、Fidesz26%と差が縮まっている。
Mediánの調査結果(詳細)
HVG(9月11日号)はメディアンの世論調査結果を詳しく紹介している。これに沿って、結果を見てみよう。


上記の二つの図から分かることは、2/3に近い有権者が政権交代を望んでいる。これが現在の国民の政治的雰囲気を反映している。Fideszの長期政権に批判的な有権者が多い。6割もの人々が政権交代を望んでいる結果は、非常に重い。

Tisza勝利(緑)、Fidesz勝利(橙)、回答なし(赤)、黒(別の政党)
有権者が望む方向と政権交代の実現度予想は、やや相反している。国民はFideszが膨大な公金を費やして、がむしゃらに選挙勝利に向かうだろうと予想している。だから、ここの数値はかなり接近している。

有権者のうち、必ず投票すると答えた人で見ると、Tisza党がFideszをかなり引き離している。投票行動を選択する人々の意識的行動が強くみられる数値である。年齢別の分布は次のようになっている。

50歳以下の若年層や実年層は圧倒的にTisza党を支持し、年金生活者は圧倒的にFideszを支持している。
Tisza(緑)、Fidesz(橙)、そのほか(黒)
グラフ上から、ブタペスト、県部、その他の都市、町村

都市と地方の政党支持率を見ると、ブダペストではTisza党が圧倒しているが、県都では二つの政党の支持率はさらに広がっている。中小の都市では二つの政党の支持率は拮抗しており、町村ではFideszがTiszaを上回っている。マジャル・ピーテルは地方遊説を重視しており、支持率の差は縮まっている。

グラフ上から、小学校卒、専門学校卒業、高校卒業、高等教育卒業
低学歴の有権者ほどFideszを支持し、高学歴になるにつれてTiszaの支持率が上がっている。
ブダペスト通信2025年No. 31(9月16日)
初出:「リベラル21」2025.10.01より許可を得て転載
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-6874.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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