興味深い世論調査結果

ブタペスト通信

1.ウクライナのEU加盟をめぐる世論調査
2025年4月に、ハンガリー政府はウクライナのEU加盟反対キャンペーンとして、<ウクライナのEU加盟に賛成か反対か>の国民コンサルテーションを実施した。国民コンサルテーションという国民投票まがいのアンケート調査は、Fidesz政権が支持者の基礎固めに使っている政策手段である。日本円にして何十億円もの費用をかけて全有権者に賛成か反対を問うアンケート調査用紙を郵送し、2カ月もの時間をかけて回答を待つというキャンペーンである。((「ブダペスト通信」2025年4月19日号に詳細))。頻繁に実施される「国民コンサルテーション」という名を借りたFideszの政治宣伝に辟易した有権者のほとんどは回答しない。郵送された用紙を開封しないで捨てる人も多い。積極的に回答するのはFideszの熱狂的支持者だが、その数も次第に減少している。「国民コンサルテーション」の回答数はFidesz支持の現状を知るための興味深いデータになっている。
昨年4月の国民コンサルテーションでは、ウクライナのEU加盟反対のキャンペーンを張って、有権者にアンケートの返送を求めた。返送期間は2か月である。短期間には十分な回答数を確保できないので、長期の時間をかけて、TV・ラジオ・インターネットで「投票」を呼び掛けていた。1か月かけても100万をやや超えた程度の回答しか回収できず、途中からインターネットでも回答できるようにした。「回答用紙が届いていないという苦情が多くきているので、ネットでも回答できるようにした」というのがその理由だが、誰でも簡単にネット回答ができるようになった。すでに回答を郵送した人でも簡単にネット回答できる。メイルアドレスを変えれば、何度も回答できる仕組みである。Fideszの活動家を動員したキャンペーンによって、最終的に217万((回答数は227万))ほどの反対回答を得た。オルバン首相はハンガリーの95%人々がウクライナのEU加盟に反対していると主張し、「EUの首脳会議にハンガリー国民の民意を伝える」と意気込んだ。
Fideszは公金を使った「国民コンサルテーション」をFidesz支持者のつなぎ止めに利用し、支持率の現状を測るバロメーターとしても利用している。民意の汲取りを装って、Fidesz支持層を固めることを狙っている。二重三重の回答があっても、とにかく回答数を増やし、賛成数を増やすことを至上命令にしている。しかし、それでは正確な情報が得られない。だから、次第に国民コンサルテーションを繰り返すごとに、政治的キャンペーンの色を濃くしている。

野党から見ても、国民コンサルテーションの回答数は、Fidesz支持率の現状を知る上で参考になる。このウクライナのEU加盟反対の国民コンサルテーションで、実際に賛成回答を返送した実数はどれほどだろうか。筆者の大雑把な概算では、二重三重回答を差し引いて、ほぼ160-170万程度だと推計される。そのなかでも、岩盤支持者は130-150万程度と推定される。これは回答返送開始から1か月過ぎた時点での回答数である。さらに、 extension是が非でもFidesz政府を支持しなければならないと考える層は郵送された「投票用紙」をすぐに返送するはずだが、その数は100万に満たない。

非常に興味深いいことに、この筆者の推定を裏付けるような世論調査結果が公にされた。

大規模規模な「国民コンサルテーション」から数カ月経った10月から12月にかけて、政府から補助金をもらっている研究センターSzázadvégが、政府委託にもとづき国際世論調査を実施した。ところが、その結果は政府が主導した国民コンサルテーションとはまったく異なるものになっている((下段のウクライナのEU加盟をめぐる世論調査のグラフ参照))。

この調査によれば、ハンガリーではウクライナのEU加盟に反対する比率は43%で、所定の手続きを踏んで加盟に賛成の比率は50%と賛成者の方が多い。さらに、可及的速やかに加盟を認めるべきという6%を含めると、加盟賛成数は反対数より13ポイントも多いことになる。何十億円もかけた「国民コンサルテーション」より、この世論調査の方がはるかに現実を反映している。

この図から分かるように、右派政権が誕生したチェコとスロヴァキア、親プーチン政権のハンガリーで反対の比率は高いが、それでも国民の過半はウクライナのEU加盟を容認している。反対率が高いブルガリアとオーストリアでも、反対と賛成がほぼ拮抗している。オーストリアの場合は、2015年に始まった難民・移民流入にたいする拒否反応が強く、ウクライナのEU加盟によって、ウクライナからオーストリアに流入する移民を警戒する民意がある。同じ現象はドイツにも見られるはずだが、ドイツの場合は賛成数が反対数を20ポイント上回っている。
いずれにしても、政府が大金をかけて主導した春の「国民コンサルテーション」は、Fidesz政権による一大キャンペーンに過ぎなかったことが分かる。

2. 与党FideszとTiszaの支持状況

4月12日の総選挙を目指して、FideszとTiszaのキャンペーンが激しくなっている。政府の補助金で運営されているNézőpontの世論調査ではFideszがTiszaを常に10ポイントリードしていることになっているが、オルバンを含めたFidesz幹部はTiszaの支持率の方が高いと判断している。しかし、その差は統計誤差の範囲内にあるもので、「逆転可能」というのが現在の与党Fideszの現状認識である。

週刊経済紙HVGによれば、2026年1月のMedian調査ではTiszaがFideszを7ポイントリード((有権者全体の支持率))し、確実に投票に行くと回答した層では12ポイントもリードしているという調査結果を発表している((「ブダペスト通信1月16日号」))。この調査結果に、オルバン初めとするFidesz幹部は驚愕し、Fidesz支持者の票固めのための行動目標が設定されたと言われている。オルバン自身も、Fideszの活動家がもう一段ギアを上げないと、選挙に負けると発破をかけ、Fideszだけの閉じた集会((メディアを含め、外部の人間を入れず、参加者は事前登録))を頻繁に開き、内部の引き締めを図っている。政府系調査機関Nézőpontの調査結果は政治的に利用するだけで、実際の行動決定は民間の調査に頼っている。

HVGはMedian調査にもとづき、データの詳細を発表している((下のグラフを参照、https://hvg.hu/hetilap-print-cikk/20260505magyar2))。

政治学者のケーリー・ラースローは、Tiszaが全体で優勢を保ち、得票数でFideszを上回っても、必ずしも議席数でFideszを上回れるかどうかは分からないと分析している。ハンガリーは小選挙区制で地方の議席のウエイトが高い。だから、ブダペストや他の都市でTiszaが勝ったとしても、地方で議席が取れなければ、多数を制することはできないという。他方、オルバンは「ブダペストで議席を採れなければ、絶対多数の三分の二の議席を確保するのは難しい」と活動家に活を入れている。

Fideszは青年民主連盟を意味する。最初に政権を取った1998年当時、30~40歳代の若い政治家を擁する政党だった。そこから30年近い歳月が過ぎで、主要な指導者は60歳代になった。しかも、ここまで選挙で三分の二の議席を得て、Fidesz一党だけですべてを決めるシステムを作ってきた結果、オルバンはいつの間にか、権力維持に執着する独裁者になってしまった。青年政治家率いる政党が「奢る平家」になってしまった。

現在のFidesz支持基盤は、65歳を超える年金生活者である。「年金生活者党」とでも政党名を変える必要がある。青年層から見放され、昔からの支持者である年配者に依存しなければ、選挙に勝つのが難しくなった。

HVGは中央統計局のデータにもとづき、年代別地域別の有権者数を掲げており、これも選挙の勝敗を占う重要なデータになっている。どの年代の有権者、どの地域の有権者をどれだけ獲得できるかが、勝敗を決する。
【ブタペスト通信2026年No.5((2月3日))から】

「リベラル21」2026.02.10より許可を得て転載
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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