カルザイ前アフガン大統領、最終演説で米国を批判

2001年の9月の米同時多発テロ事件に続き、米ブッシュ政権が開戦したアフガン戦争。タリバン政権崩壊直後の12月、国際会議で選ばれ、米国の支援でアフガニスタンの最高権力者の座を2期13年務め続けたハミド・カルザイが、大統領官邸での最後の演説で後任のガニ新大統領に、「アメリカは平和を望んでいない」と米国に用心するよう警告していた。
カルザイはかねてから、アフガン国民が深く恐れ、嫌悪している米特殊部隊の夜間索敵作戦を行わないよう繰り返し要求し、米軍駐留継続を取り決める防衛協定については米軍兵士の免罪特権を認めないことを主張、調印を拒否し続けてきた。また、反政府武装勢力タリバンとの和平交渉を進めようとしていたが、米国が消極的で進展しないことに不満を漏らしてもいた。
しかしその一方、親族を州知事や政府要職につけて、アフガンの悪名高い腐敗構造の中心と目されており、反米的な発言もパフォーマンスではないか、とも見られていた。それだけに、最後の演説での反米姿勢が本音だったと、改めて注目された。
アフガン戦争の報道では、英BBCが最も客観的、包括的だったと思うが、最後のカルザイ演説をBBC電子版(2014.9.23)は次のように伝えたー

アフガン大統領カルザイ、米国に気を付けるよう後継者に警告
 ハミド・カルザイ大統領は、アフガン新政権に対し、米国との関係に気を付けるよう警告することに、大統領としての最後の演説を使った。
 大統領官邸を離れる前の全国民への演説で、カルザイ氏は、タリバンとの和平交渉は『アメリカが平和を望んでいなかった』ために失敗した、と述べた。
 カルザイ氏は、米国の攻撃であまりにも多くの一般市民が死傷したと主張してきた。
カルザイ氏はこの最後の演説で、この戦争はアフガン国民の間のものではなく、『外国人の目的のため』のものだった述べた。
彼は、米国との友好関係は可能だが、彼らの行動が言葉と一致する限りだ、と述べた。彼は隣国パキスタンについても、『もし米国とパキスタンが本当に望んでいるなら、アフガニスタンに平和は来る』
『アフガニスタンの戦争は、外国の目的に基いている。外国の利益のための戦争だ。両側のアフガン人は、いけにえの羊であり、戦争の犠牲者なのだ』とカルザイ氏は言った。
カニンガム米大使は、カルザイ氏の発言には驚かされたと、次のように語ったー『彼の発言は的外れだ。アメリカ国民に対してのひどい仕打ちであり、巨大な犠牲を払ったアメリカ国民の名誉を傷つけるものだ。しかし私は、アメリカがこの国の将来に向けて、犠牲と約束を果たすことに寛大であることを確信している』
米国と他の協力国は2001年のタリバン政権追放以来、巨額の費用を使い、数千人が命を失い、それよりはるかに多数の負傷者を出している。

▽新政権発足翌日に米軍駐留協定に調印
 アフガニスタンでは9月29日、カルザイに代わるアシュラフ・ガニ新大統領の就任式が、首都カブールの大統領官邸で行われ、新政権が発足した。憲法で3選を禁じている大統領選挙の決選投票は、6月14日行われ、選挙管理委員会はガニ元財務相の当選を暫定的に発表したが、対立候補のアブドラ元外相が大規模な不正があったとして選管発表の受け入れを拒否、激しく対立した。このためケリー米国務長官と国連代表が必死の調停工作を続け、大統領と同等の政治権限を持つ行政長官職を新設し、ガニを大統領、アブドラを行政長官とすることで、ようやく妥協がまとまった。
新政権発足の翌日、ガニ新大統領は、昨年11月に合意していた米軍駐留継続を定めた二国間の安全保障協定に署名した。新協定では米軍兵士への事実上の免責特権が保障されている。イラクでは、米軍全面撤退を望んでいたマリキ前首相が免責特権を最後まで受け入れなかった。米軍は大規模基地の維持をはじめ駐留継続を強く望んでいたが、オバマ政権は11年末をもってイラクから全面撤退させた。
アフガニスタンでは発効した新協定により、ピーク時に9万人を超えた米軍兵力(現在約3万人)を年末までに1万人程度に減らし、タリバンに対する政府軍の作戦支援や訓練を行うが、再増派も可能。2016年末までに完全撤退を目指す。昨年1年間をかけて行われた協定交渉では、米国側は5万~3万人程度の軍駐留と、バグラムはじめカンダハル、ジャララバードなど巨大米軍基地の維持を免責特権とともに求めたが、アフガニスタン側は縮小を主張して、交渉が難航した、最終的にはオバマ大統領の意向で、一万人規模の駐留継続に落ち着いたという。巨大米軍基地の使用権は維持され、活動規模を縮小する一方、無人機の偵察・攻撃行動などの基地として使用する可能性が大きい。
なお、最大時29か国4万人以上に達した、米軍以外のISAF(国際治安支援部隊)は英軍の一部を除き撤退をほぼ完了している。

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