ルイ=マリア=デ=アラウジョ首相に起訴取り下げを求める!
「ちきゅう座」読者のみさままへ、
首相に起訴撤回を求める署名活動のご協力のお願い!
「東チモールだより第324号」でも書きましたが、ルイ=マリア=デ=アラウジョ首相が財務省の顧問だったときの行動について『チモールポスト』紙が汚職疑惑として報じた記事内容は事実無根だとして、首相は同紙のジャーナリスト2人を名誉毀損で訴えました。
この記事について『チモールポスト』側は誤りを認め首相に謝罪し、訂正記事を掲載するなど規則に則った処置をしました。しかし首相は刑事訴訟を起こしたのです。この2人のジャーナリストは3年の禁固刑を受ける可能性があります。
もしジャーナリストが誤った記事を書き、過ちを認めて謝罪しても刑務所送りなる先例がつくられたら、独立を勝ち獲ってまだ14年と半年にしかならない東チモールの「言論の自由」「報道の自由」は畏縮して儚い命となってしまいます。国際的なジャーナリスト組織も首相に起訴の取り下げを強く求める書簡を送りましたが、いまのところ効果がありません。裁判は10月7日に始まる予定とのことです。
賛同してくださる方は、下記のサイトを開き、首相に起訴撤回を求める署名にご協力ください。よろしくお願いいたします。
生涯年金の見直し、国会審議が始まる
9月22日、「国会は生涯年金制度の見直し審議を始めました。国会で採決される見直し法案の内容しだいでは、大統領が辞職する可能性を含むだけに、どのような見直し案が国会から大統領府に送られるかが大いに注目されます。
大統領は見直しではなく完全撤廃でないと認めない、完全撤廃でないと拒否権と行使する、そして発布するくらいない辞職すると発言しています。また、大統領は自分が大統領職から離れても年金は受けないとも断言しています。
各新聞報道によれば、職を離れても年金を受け取らないという大統領表明をファースト・レディであるイザベル夫人は支持すると発言しました。しかし、夫が政党に参加するのは賛成できないともいいます。そのへんのところ、夫婦は議論を重ねているに違いありませんが、大統領自身を含めてタウル=マタン=ルアク大統領の“その後”の去就について明言を徹底的にはぐらかしています。なお、タウル=マタン=ルアク氏への大統領再選を望む声もまだまだ根強く残っています。
大統領への個人攻撃が始まった
このような状況のなか、9月初旬、大統領にたいする“口撃”の動きがありました。『ディアリオ』(2016年9月8日)の記事によくまとめられているので、それを読んでみましょう。以下、同『ディアリオ』より。
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最近、ソーシャルメディア、とくにフェイスブックで話題になっているのは、デリ市内のクリストレイ町のメティアウト地区の山の上に建っているタウル=マタン=ルアク大統領の家である。
大統領のこの私邸は、夜は一つの村のように遠くから見え、昼間は個人の宮殿のように見える。フェイスブックで大統領は宮殿のような贅沢な個人宅を国家のお金で建てたのではないかといわれているのだ。
この批判の意図は一体何なのだろう?気持ちの病んだ悪意なのだろうか?あるいは本当に大統領は国の金を使って私邸を建てたのだろうか?もしそうなら犯罪であるが、そうでないなら中傷であり起訴すべきだ。
このことに対応するためファースト・レディが口を開かざるを得なくなった。公になっている疑問や懸念はまったくの事実無根であり、宮殿のようだといわれている家は汗水たらした結果であり、国のお金は使っていないと話す。
「控訴裁判所で報道機関は、2012年から現在までの大統領の資産が増えたのか減ったのか比較できる。毎年毎年(資産を申告をして)わたしはわたしたちの資産が増えていないことを知っている。その年(2012年)に宮殿といわれる家を建てたからです。そうです、その宮殿はわたしたちの苦労と汗から建てたもので、国の金を使ったとか誰かのお金を使ったというものではありません」とイザベル夫人は語る。
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まあ、たしかにタウル=マタン=ルアク大統領の住む家は、デリ市内に接する山の中腹部を整地して建てているので目立ちます。デリ市内からちょうど見上げる場所に位置し、デリ市内中心部の海岸沿いならばだいたいの所から見ることができるのです。夜は上の方に輝いて見えるかもしれません(わたしは夜のその風景は見たことはありませんが)。わたしも何回かそこを訪問したことがあります。急な坂道を登らなければたどり着けない山の中腹部にある邸宅から見る景色はそれなりに絶景です。目立つし、不便な場所だし、なぜこんな場所に家を建てなければならなのか、正直いって不思議に思ったりもしますが、あくまでもこれは個人的な問題で詮索は野暮というもの。
家そのものについては、フェイスブックで「宮殿」のようだといわれているようですが、中身を吟味したわけでもないし他の要人の住む公邸・私邸の中身も知らないので比較のしようもないしコメントのしようがありません。町から見上げられる場所というのが、おそらく「宮殿」というイメージがつくられる余地を与えたのだと思います。
ただし黒澤明監督の『天国と地獄』に出てくるような、これ見よがしの、こんな小高い所に家を建てやがってと誘拐犯人を駆り立てるような金持ちの邸宅というたたずまいは、大統領の私邸にはありません。この映画の家とは違って、大統領邸は遠くそして小さく見える家だからです。そのような家はいくらでもあります。
とにもかくにも、この大統領宅は2012年からすでにあったことおさえておくべきです。なぜ、このタイミングで話題にのぼるのでしょうか。同『ディアリオ』紙は、フェイスブックによる大統領批判にたいして逆に批判しています。以下に続きます。
* * *
まったくです、イザベル夫人。宮殿のような家を建てて良い生活をするために正しい道を歩んだならば問題ないことであり、贅沢な家が嘘や汚職の結果ならばいけないことだ。
宮殿のような私邸にたいするこの批判は自然に広がったのではなく、元首相で「オイクシ経済特区」の最高責任者であるフレテリンのマリ=アルカテリ書記長から発せられたのである。
大統領にたいするマリ=アルカテリ氏の批判について国民はすでに、事実に基づくかそうでないかということを見ておらず、この批判は恨みと報復によるものだと見ているのだ。
この批判は、大統領が国会で「オイクシ経済特区」などの事業は関係者の家族のみに特権を与えるものだと発言したことを想起させる。
仮に大統領にたいする批判が事実に沿ったものだとしても、この批判は大統領がマリ=アルカテリを批判したことにたいする恨みと報復として見られているというわけだ。
選挙が近づいてきたので、政治家たちは勝つために、悪口を言い合い、批判合戦をしだした。
汚職はいけないことであるが、汚職をしていないなら贅沢な家であろうが個人宮殿であろうが、タウル=マタン=ルアク氏の権利である。
個人のお金で個人の館を建てたならば、それは仕事をして汗を流した結果なのであって、他人がとやかくいうべきことではない。それは個人の権利である。汚職のお金で宮殿のような家を建てたとなるといけないことである。
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タウル=マタン=ルアク大統領は、生涯年金の撤廃を訴え、年金を受け取らないとかっこよく主張しているが、宮殿のような豪華な家に住んでいるではないか、国のお金をかすめとって建てた家ではないのか、という不信を誘う個人攻撃の発信源は、この『ディアリオ』の記事によれば、フレテリンのマリアルカテリ書記長だというのです。もしこれが本当ならば嘆かわしいことですが、解放闘争の指導者の一人であった人物がこんなマネをしたとは信じたくありません。
白黒をはっきりさせたいタウル=マタン=ルアク大統領の性格ならば、根も葉もない中傷にたいして裁判に訴えたいところでしょうが、ことは極めて政治的なのでそうもいきません。自分で反論せず、イザベル夫人に反論してもらったのは、ことを荒立てない最善策のように思えます。東チモールの政治情勢がこれからさらに熱くなっていくことでしょう。
タウル=マタン=ルアク大統領は、生涯年金の撤廃を訴え、年金を受け取らないとかっこよく主張しているが、宮殿のような豪華な家に住んでいるではないか、国のお金をかすめとって建てた家ではないのか、という不信を誘う個人攻撃の発信源は、この『ディアリオ』の記事によれば、フレテリンのマリアルカテリ書記長だというのです。もしこれが本当ならば嘆かわしいことですが、解放闘争の指導者の一人であった人物がこんなマネをしたとは信じたくありません。
白黒をはっきりさせたいタウル=マタン=ルアク大統領の性格ならば、根も葉もない中傷にたいして裁判に訴えたいところでしょうが、ことは極めて政治的なのでそうもいきません。自分で反論せず、イザベル夫人に反論してもらったのは、ことを荒立てない最善策のように思えます。東チモールの政治情勢がこれからさらに熱くなっていくことでしょう。
~次号へ続く~
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6288:161006〕