ガザ抵抗の2か月.死傷者1万3千人以上(2) - 世界最悪の生活環境の中に閉じ込められた190万住民 -

トランプ政権下の米国が大使館をエルサレムに移し、国際管理都市としてイスラエルの首都と認めることを拒否してきた国際社会に挑戦した翌日、英BBCは国連諸機関の報告を基にして、詳細な「イスラエル、パレスチナ紛争―ガザの生活」特集を報道した。その要点を紹介しよう。

▼ガザ出入域の自由を極度に制限、閉じ込められた住民
幅約10キロ、長さ75キロの海岸に沿った細長い地形のガザには、約190万人のパレスチナ人住民が、これだけの規模としては世界最悪の生活環境の中に閉じ込められている。
外の世界との出入り口は、北東端のイスラエルとの境界のエレツ検問所と南西端のエジプトとの境界のラファ検問所だけ。エレツ検問所からイスラエル側に出国したパレスチナ人は、記録が明らかにされている2017年前半には240人以下だった。2000年9月には1日平均2万6千人だったが、その後イスラエルが出入域とくにガザへの入域を厳しく制限したために、激減した。
エジプトとのラファ検問所では、2011年2月のエジプト民主革命後に通行がほぼ自由化し、急増、世界保健機関(WHO)によると医療目的だけで平均1日あたり4千人が医療のためにガザからエジプトに入国した。しかし、13年7月、シシ国防相に率いられた軍のクーデターで、ムスリム同胞団のモルシ政権が打倒され、以後、シシ政権がエジプトを支配。14年10月以降、ラファ検問所がほとんど閉鎖され、国境の地下に掘られていた地下トンネルもすべて埋められた。この結果、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、2018年4月までに17日間だけラファ検問所が開かれたが、積み残されていた医療目的を含む2万3千人の通行許可申請のごく一部だけが許可されただけだった。

▼経 済
世界銀行の報告によると、2017年のガザの経済成長率は0.5%。1人あたり収入は1994年2,659ドルから、2018年予測1、826ドルに低下した。
2017年失業率44%は、世銀開発データベースで最悪で、平均値の2倍以上だった。
とくに、若者の高齢層の失業率が60%を超えていることが懸念される。
最近のデータによると、世銀基準の貧困者の割合は39%で、もう一方のパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の倍以上の貧困率。世銀によると、住民の80%が、おもに国連難民救済機関(UNRWA)の援助を受けている。

▼増え続ける人口、世界最悪級の人口密度
ガザの人口は現在約190万人、人口密度は1平方キロ当たり5,479人、2020年には総人口220万人、人口密度は6,192人、2030年には総人口310万に増加すると予想される。

▼保健・医療
イスラエルとエジプトの境界での出入域規制によって、保健、医療状態が悪化した。
イスラエル経由の出国許可率は、2012年の93%から2017年には54%に縮小した。さらに医薬品、透析器材、心臓検査・治療器具の運び込みがすべて阻止された。多数の病院、医院が破壊か損傷した。2000年から人口は倍増したのに、初動医療施設の数は56から49に減少した。
最近の発電用燃料不足によって医療施設は打撃を受けている。パレスチナ保健省によると3か所の病院と10か所の医療センターが電力不足のため、休業した。

▼食 料
国連によると、約100万人のガザ住民の多くが何らかの支援食糧を受けているが、それでも「中程度~きびしい食料不足」状態にある。
イスラエルは、ガザ市民の農地、漁場への立ち入りを制限している。
イスラエルによって、ガザ住民はイスラエルとの境界からガザ側1.5キロ以内での農作を禁じられている。このため、ガザ側は推定毎年7万5千トンの食糧を失っている。この地域はガザで最も農業に適した土地であり。農業生産がGDPに占める比率は1994年の11%から2018年(予測)の5%以下に減少した。
海では、ガザ住民の安価なタンパク源であり、職業である漁獲を、海岸から一定の距離以内にイスラエルが制限した。2012年11月のイスラエルとハマス(ガザ最有力の政治・武装勢力)の休戦協定で、ガザ住民の漁業は海岸から6カイリ以内に制限された。しかし、イスラエル海軍はしばしばガザ側からのロケット攻撃を理由に、3カイリに制限し、それを超えるガザ漁船を攻撃している。(続く)

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