バスク旅行で、どこよりも行きたかったのは、サン・セバスチャンの旧市街をうずめるバルだ。コンチャ海岸に沿った市の北東端。ほぼ3百50メートルX3百メートルが、バル、レストランでほぼ埋められている。
同市内に4泊したうち、3日、日暮れから1~2時間、バルに入り込み、多種多様な美味と地酒白ワインのチャコリを楽しんだ。どこも6時過ぎにはカウンターの椅子が客でふさがってしまうバルだが、多くの客たちは、はしごしながら楽しむ。バルはすべて、カウンターに、高い椅子。数少ないレストランはもう少し広く、イスとテーブルがある。店の後ろがレストランになっているバルもあった。
バルは英語のバーと同じ言葉だと思うが、バスク旧市街の多くのバルは、真ん中が馬蹄形のカウンターで囲まれ、両側の壁にもカウンターがあり、いずれも高い椅子がある。椅子の数は全部で40~60ぐらいか。真ん中にはほとんど男性の調理人が2,3人。 サービス係の女性は若い子から中年まで、数人が夕方から遅くまで、注文と支払い、食べ物と酒のお運びまで、忙しく働き続けている。どの店でも、6時ぐらいにはすべての椅子が埋まり7時ぐらいには、通路も客でほぼ埋まってしまうが、店の女性たちは、その仕事を確実にこなしてくれる。当初、混んでくると注文するのも容易でなかったが、すぐ慣れて、カウンター内に山積になっている食材とメニューを指させば、すぐわかり確実に料理を運んでくれた。
スペインはじめ欧州諸国のバカンス・シーズンはこれからなのだが、ともかくここは毎晩、飲み食いの人でいっぱい。バル内で話声を聞き分けると、ざっとした感じでスペイン語が2,3割。英語はじめフランス語や他の欧州語が1割ぐらい、それ以外はバスク語らしく、聞いても全くわからない。最初、客がいっぱいでカウンターの空席が全くないので、どうなることかと思ったが、カウンターの席の客たちは、注文の料理を一皿、二皿、ワインととともに平らげると席を空けて、やさしく座らせてくれ、次の店への出て行くのがわかった。だから、バル内は、和気あいあい。
バルの混雑が嫌いな客には旧市街にも新市街にもレストランがある。テーブル席でゆっくりできるが、超高級レストランは別として、メニューには新鮮な海鮮、ハム、チーズ、キノコ、野菜類がぎっしり並んでいるが、旧市街のバルのような威勢が欠ける気がする。
▼海山のとりたて食材満載、地酒白ワイン・チャコリ
バルの料理の主役はバゲットに具をたっぷり乗せたピンチョス。具は、アンチョビ、タコ、イカ、カニ、エビはじめ海産物の酢漬け、店につるしたイベリコ豚の生ハム、さまざまなキノコ料理、野菜類の揚げ物・・・メニューには百を優に超える料理名が載っている。 店ごとに、持ち前の味付けを競っているようだ。飲むのは地酒白ワインのチャコリに限る。さっぱり系でほどよい甘さがバスク料理にぴったり。赤なら言うまでもなく世界的に著名なリオハ・ワイン。バスク中部からその南にかけて産地だ。ただ、海産物が多いバスク料理には、やはり白が似合う。
バスクは、間違いなく世界有数の美味の地だと思う。さっぱり系で、海産物を好む日本人には最適だ。一冊だけ、事前勉強して行った、驚くほど詳細な参考書を挙げておこうー
『美食の町を訪ねてースペイン&フランス・バスク旅へ』金栗里香著 201ページ イカロス出版株式会社
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