はじめに 倉塚さんの訃報を友人たちに伝えたとき、「偲ぶ会」をもてないか、という声を届けてくださったのが松沢弘陽氏であり、それに直ちに賛同してくださったのが和田春樹氏であった。このお二人に登場していただければ、倉塚さんの
本文を読むスタディルームの執筆一覧
フランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(8)
著者: 二本柳隆著(石塚正英編)4.ヘルダーにおけるナショナルなものの基本的性格 前節で述べたように、ヘルダーの社会観をなしていた前提には、近代自然法の流れがあったものの、ホッブズやルソーの捉え方と異なって、歴史的・実在的・具体的・実証的な仕方だった
本文を読む学問の道を歩む―3―
著者: 石塚正英1998年7月、私は20世紀が終わる前に、どうしても出版しておきたい単行本の編集に取りかかった。それは、過去に発表してあった論文群を次の3点の著作にまとめる作業であった。「ソキエタスの方へ――政党の廃絶とアソシアシオン
本文を読む学問の道を歩む―2―
著者: 石塚正英むかし、マルクスがもてはやされていたころ、マルクスはいつマルクスになったか、という問題が真剣に議論された。①或る人は、経済学哲学草稿のとき(1844年)と言い、②或る人はドイツ・イデオロギーのとき(1845~46年)と
本文を読む三木清と西田幾多郎の人間学 (3・完)
著者: やすい・ゆたか十、実在としての薔薇の意識 やすい:西田哲学ではあくまで経験を実在として捉えますから、現象即実在なのです。それは人間の感覚によって構成された事物が実在だということですが、その場合、ノエシスつまり意識の作用面とノエマつまり
本文を読む人間がすることは自然の手助けをすること――『土に生きる』第5号を手にして(6)
著者: 野沢敏治本会は1978、発足してから5周年に入った。本号はそれを記念した特集号である。1979年3月31日発行。表紙のデザインと本文中のカットは杉野和子作であり、表紙は私が知る限り第4号から18号まで変わらない。会誌も5年にな
本文を読むフランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(7)
著者: 二本柳隆著(石塚正英編)2.ヘルダーの専制政治への批判 ヘルダーが生まれたのは1744年だが、フリードリヒ2世(大王)が即位したのはその4年前であった。ヘルダーが19歳になるまで、大王は2度大きな戦争を行なった。一つは、オーストリア継承戦争(
本文を読む三木清と西田幾多郎の人間学 (2)
著者: やすい・ゆたか1.三木から西田へ 2.存在論的人間把握 3.交渉的存在としての人間 4.交渉的存在の存在構造 5.三木清のアントロポロギー (以上前回、以下今回) 6.基礎経験とアントロポロギー 7.内的人間と歴史的人間 8.純粋経験
本文を読む近代的自我の横超と歴史知研究
著者: 石塚正英思想家の吉本隆明は、著作『未来の親鸞』(春秋社、1990年)の中で、作家宮沢賢治の宗教観にかんしてこう記述している。「宮沢賢治という人は「あの世」をわりに実体化していましたから、「あの世」にいった妹さんとさかんに交信し
本文を読む〔休憩室〕19・20世紀古典読書会―3―
著者: 石塚正英このコーナー〔休憩室〕は「ちきゅう座」田中正司初代運営委員長の提案で設置されましたが、しばらく開店休業でした。田中精神は継続する価値がなお持続しています。本コーナーはちきゅう座のエッセンスです。今後、これを軸にいっそうの
本文を読む三木清と西田幾多郎の人間学 (1)
著者: やすい・ゆたか1.三木から西田へ 2.存在論的人間把握 3.交渉的存在としての人間 4.交渉的存在の存在構造 5.三木清のアントロポロギー (以上今回、以下次回) 6.基礎経験とアントロポロギー 7.内的人間と歴史的人間 8.純粋経験
本文を読む消費税増税に待ったあり(第1回)
著者: 醍醐聡野田首相はさる5月30日に行った小沢一郎氏との会談で、「少子高齢化の問題等にかんがみ、消費税の増税は待ったなしだと認識している。協力してもらいたい」と発言した。この記事はこうした野田発言に対する反証を意図して書きとめるも
本文を読む中山元訳『資本論』を読む ―価値対象性(Wertgegenständlichkeit)とは如何なる事態か―
著者: 内田弘翻訳家・中山元による『資本論』第1部の前半の翻訳が2分冊で刊行された。 『資本論-経済学批判』第1巻(I・II)(日経BP社、2011年12月5日、2012年2月27日)がそれである(付記:最近、その第3分冊[Ⅲ]が
本文を読む音と音楽――その面白くて不思議なもの(11)
著者: 野沢敏治・石塚正英第11回 男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり >往< 石塚正英さんへ 野沢敏治から 石塚さんと今回のテーマのことを話してから、『土佐日記』の冒頭を思い出し、それを標題に掲げました。『土佐日記』は高
本文を読む三芳の鶏の身になってもみませんか――『土に生きる』第4号を手にして(5-2)
著者: 野沢敏治C 座談会・「鶏と卵、ざっくばらん」 この座談会は本号の白眉と言ってよい。知らなかったことを、でもやはりそうでしかないと思ってしまうことを教えてくれる。自然農業と生活様式の見直しは現代文明を批判するものだが、それは同時
本文を読む消費者による生産者理解のさまざまと、「納得のし直し」――『土に生きる』第4号を手にして(5-1)
著者: 野沢敏治会ができて5年、「夢中の創成期から安定供給の時期」に入る。 会誌の内容が充実してきた感じがする。ページ数も80頁と前号の2倍半にまで膨れる。3人によって筆耕され、3人の編集者がつく。表紙とカットの制作者の名も出る。編集が
本文を読む歴史における神話のアクチュアリティ(5・完)
著者: 石塚正英五 20世紀神話のアクチュアリティ(2)――ファシズムと家族神話 ユートピア(utopia)には対になる語「ディストピア(distopia)」がつくられている。逆ユートピアである。例えば、共産主義はすべての権力を否定す
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(あとがき)
著者: 岩田昌征2011年12月9日に始まった「ハーグ法廷戦犯1号の日記」(2011年増補版、初版は2010年)、Duško Tadić、Dnevnik Prvog Haškog Zatočenika、drugo prošireno i
本文を読む日本的霊性とは何か(下)
著者: やすい・ゆたかキリスト教は世界最大の宗教ですが、日本人は大きな影響を受けているにもかかわらず、キリスト教について無知な人が多いのです。キリスト教会の礼拝をカトリックではミサと呼び、プロテスタントでは聖餐式と呼びます。礼拝の中に聖餐が
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(20)
著者: 岩田昌征68.下がっていた目線 私が1992年6月18日にオマルスカ収容所にいなかったし、虐待に参加していなかったと言う証人「H」の言明はハーグ法廷の判決の中で次のように解釈された。 証人は事件の様々な実行者を目撃しており、また
本文を読む日本的霊性とは何か(上)
著者: やすい・ゆたかヤマトタケルが伊吹山で深傷を負い、遂に三重の能煩野で身罷りますが、「ここに八尋白智鳥になりて、天翔りて」(『古事記』角川文庫一二〇頁)となっています。ヤマトタケルの霊が人間の身長の八倍もあるような白い千鳥つまり大白鳥に
本文を読む学問の道を歩む
著者: 石塚正英東大法学部教授だった三谷太一郎氏は、昔ある雑誌でこんなことを書いている。歴史研究者は想像力を触発するような史料に遭遇すると、その史料のために、いや、その史料を引用したいがために、一本の作品を構想する、と。三谷氏は、19
本文を読む世阿弥の謡曲にみられる仏教思想(下)
著者: やすい・ゆたか⒉.『蝉丸』―父醍醐天皇に捨てられた姉逆髪と弟蝉丸 聖なるか我が子を捨てて道端の乞丐ならしむ大御心は 世阿弥の子観世元雅の作に『弱法師(よろぼし)』という子捨ての話がある、ワキ高安通俊は息子であるシテ俊
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(19)
著者: 岩田昌征60.弁護士から裁判官へ 1994年にドイツで逮捕され、ハーグ国際法廷で結審されるまで、12人の弁護士が入れ替り立ち替り私の弁護団に登場した。セルビア人、オランダ人、イギリス人、ドイツ人、ボスニア・セルビア人。私は彼等の
本文を読む世阿弥の謡曲にみられる仏教思想(上)
著者: やすい・ゆたかはじめに 「死にたくない!」命の叫び伝へむと生まれたりしか幸なき人よ 二〇〇四年六月二三日のことだ。イラクで斬首された韓国人、キム・ソンイル(キム・イルソンではない)の最後の言葉
本文を読む音と音楽――その面白くて不思議なもの(10)
著者: 野沢敏治・石塚正英第10回 自分なりのサウンドスケープをイメージする >往< 野沢敏治さんへ 石塚正英から 今回は、自分なりのサウンドスケープ(音風景)をイメージすることにします。方法として、周囲からなんらか気にかかる音をひろい、そ
本文を読む歴史における神話のアクチュアリティ(4)
著者: 石塚正英四 20世紀神話のアクチュアリティ(1)――ファシズムとコミュニズム 現代人が未来を生き延びることができるか否か、それは科学技術のみにかかっている訳ではない。それ以上に、資本主義の歪みを克服する新たな社会制度、政治制度
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(18)
著者: 岩田昌征56.たった一人の囚人 (タディチの独房生活の諸条件が列挙されている。裁判の政治的・社会的意味にかかわることではない。省略する。岩田) 57.最初の面会 丸2年間、家族の誰とも会えなかった。弁護士ヴラディミロフの支援で妻
本文を読む自然農業は人を変える―――『土に生きる』第3号を手にして(4)
著者: 野沢敏治どんな運動団体にも問題はあり、その存続が危機に陥ることがある。「作って食べる会」は発足後まもなくしてその時を迎えた。露木裕喜夫と岡田米雄が会の路線をめぐって対立する。そこに他の問題も加わり、会員の間で感情的な対立もおこ
本文を読む黒田寛一にとっての大井正、私にとっての大井正
著者: 石塚正英きょう、職場から帰宅したら黒田寛一初期論稿集第7巻『断絶と飛躍』が届いていた。出版社こぶし書房から新刊を戴いたものだ。その中に、黒田が書いた「退廃せるスターリニスト大井正」(1956年)を見つけた。さっそく読む。そのタ
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