5.ホモ・サピエンスの構造 ホモ・サピエンス(叡智人観)とホモ・ファーベル(工作人観)という代表的な人間観の対立を見直しておこう。ホモ・サピエンスという言葉は分類生物学のリンネ(Carl von Linne1707
本文を読むスタディルームの執筆一覧
フェティシュを投げ棄てる布村一夫―生誕100年を記念して―
著者: 石塚正英1960年代末からの大学生活において、私がまずもってテーマに設定したものの一つに、共同体とその解体に関連するものがある。1970年、マルクスの『ドイツ・イデオロギー』『資本主義的生産に先行する諸形態』、エンゲルスの『家
本文を読む人間論の構造構成 (上)
著者: やすい・ゆたかはじめに 人間とは何かというテーマは古今東西さまざまに論じられてきた。百人百様の人間論があり、それぞれ人間の一面を捉えている。しかしそれぞれ人間に対する捉え方の問題関心がずれているので、互いに他の人間論は人間の核心を捉
本文を読む神と戦う哲学者大井 正―生誕100年を記念して―
著者: 石塚正英久しぶりに、恩師大井正(1912-1991)の「罪について―ときには思想史的に―」(明治大学『政経論叢』59-1・2、1990年)を読み返した。大井は言う。「タブーを呪術とみて、これを宗教とは区別する見方がある。しかし
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(17)
著者: 岩田昌征48、彼等は少しも努力しなかった 1995年4月初、駐オランダ・ユーゴスラヴィア大使が面会に来た。大使はヴラディミロフのほかにミラン・ヴゥイン弁護士(ベオグラード)をやとうように示唆した。更にバニャルカの弁護士も私の弁護
本文を読む知識創造理論と西田哲学 ―下―
著者: やすい・ゆたか三、暗黙知と純粋経験 西田哲学を使って知識創造理論を深めるとしたら、まず暗黙知を純粋経験として捉えられるかという問題提起から検討してみるべきだろう。暗黙知は水泳とか自転車操縦のように身体が覚えこん
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(16)
著者: 岩田昌征41、強い痛み それから十日間、緑色の警察車が私をシタデルハイム監獄からミュンヘンのゲーテ・インスティテュートへ運んだ。朝早く出て午後遅く帰った。ゲーテ・インスティテュートの中庭で手錠のほかに足錠もかけられた。一歩10セ
本文を読む「自然に順応する」ことは新しい「自立」――『土に生きる』第2号を手にして(3)
著者: 野沢敏治すでに問題が出され始める 「有機農業」は現在ではあちこちで実行されているが、その一つひとつが人間と自然との関わりを示す縮図となっている。縮図はただ寸法を縮めたものではない。それは広く深く伸びる内容をもっている。そのこ
本文を読むフランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(6)
著者: 二本柳隆著(石塚正英編)第3章 ヘルダーの「ナショナリズム」論――18世紀後期のドイツ社会思想の一形態 フランス革命後のドイツ社会思想界に現れた動向は、革命によって触発され、革命の賛否をめぐる論争に揺り動かされた、といってが過言ではない。いず
本文を読むアメリカ政治社会の“ねじれ”と大統領選挙
著者: 近藤 健大統領選挙年の今年のアメリカで、より重要なのは、大統領選挙そのものよりも、下院議員全員と上院議員約三分の一を選出する連邦議会選挙にあるかもしれない。というのは、その結果によっては、政治権力構造の“ねじれ”が、強いてはアメ
本文を読む知識創造理論と西田哲学 ―上―
著者: やすい・ゆたかはじめに 私が西田哲学を学ぶきっかけになったのは、大学院生の頃西田哲学を使って『資本論』を読むという独特の方法論を用いた梯明秀に師事したからである。それは経済哲学の領域であった。その頃はマルクスの議論は理解できたが、西
本文を読むくるりとベケット
著者: 木村洋平これは、くるりとベケットについてのエッセイなのですが、「くるりと」は副詞ではありません。「くるり」と「ベケット」について、なのです。「くるり」は、J-POPのアーティストで、ポップソングを作詞・作曲して、歌っています。
本文を読む歴史における神話のアクチュアリティ(3)
著者: 石塚正英三 20世紀における近代化=合理化神話 世界大で環境破壊が進行し、その悪影響を懸念する今日、先進諸国の人々はもはや近代化=工業化・合理化の神話に騙されはしない。ただし、そのように悟るには甚大な対価を払うこととなった。け
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(15)
著者: 岩田昌征36 牢から牢へ それからの7日間は真の悪夢であった。無情な裁判官僚制の鉤爪にかけられていた。まるで玩具のように私は牢から牢へ移された。新聞もテレビも拒否されて、誰が何故に私の生命をもてあそぶのか分からなかった。 カフカ
本文を読む音と音楽――その面白くて不思議なもの(9)
著者: 野沢敏治・石塚正英第9回 再生装置について >往< 石塚正英さんへ 野沢敏治から 近ごろ、パソコンから取り入れた音楽をイヤホンで聴いている若者をよく見かけます。ちゃちな器具に見えるけれど、楽しめるんですね。考えてみれば、高級な再生装置だ
本文を読む生産者と消費者が解りあうことをめざした会誌――『土に生きる』創刊号を手にして(2)
著者: 野沢敏治手仕事のガリ版刷り 創刊号は1975年11月20日の発行。ガリバン刷りで簡素な仕上げ。今では見ることはできないがある世代にとってはなつかしいスタイルである。全28頁。表紙はタイトル・ページで目次がつく。裏表紙に手書きで千
本文を読む「岩田弘の人と経済学」(「岩田弘先生を偲ぶ会」前半の動画記録)
著者: 「ちきゅう座」編集部1月31日急逝された岩田弘先生を偲ぶ会が、4月8日・明治大学リバティタワーで開催されました。 この中から開会の言葉・主催者経過報告と発言前半「岩田弘の人と経済学」の模様を動画で報告します。 岩田弘先生を偲ぶ会 開会の
本文を読むネオヒューマニズム入門 (下)
著者: やすい・ゆたか6 現代ヒューマニズムの超克 ネオヒューマニズムというのは現代ヒューマニズムを超克するという面があるからで、現代ヒューマニズムとの区別をはっきりさせなければならない。それは何故脱ヒューマニズムではないのかもよく問われると
本文を読む元素発見競争と命名から透けて見えるもの―ゲルマニウムの場合を中心に―
著者: 犬伴 歩はじめに 昨年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第1原発事故以来、放射能汚染の報道ではセシウムという元素名をニュースや新聞でしばしば見聞きするようになった。飛散したセシウム以外にもヨウ素、キセノン、ストロンチウ
本文を読むフランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(5)
著者: 二本柳隆著(石塚正英編)4.1792年のマインツ――フォルスターとマインツ革命の烽火 キュスティースを指揮官とするフランス革命軍に対し、マインツの人々は力をもってするよりは従うことを選んだのである(1)。占領されたマインツでは、フランスのジャ
本文を読む意志で記憶する自然農業と提携、生活――『土に生きる』を手にして(1)
著者: 野沢敏治待っていた本が出る こういう本を私は求めていた。『村と都市を結ぶ有機野菜』である。それは「安全な食べ物をつくって食べる会」が編集して2005年に発行したもの。出版はブロンテ。同会は今から40年ほど前に千葉県南房総市にあ
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(14)
著者: 岩田昌征33 路上拉致 ドイツ秘密警察は監視カメラや通報者を用いて一カ月ほどミュンヘンにおける私の行動を追跡していた。1994年2月10日午前、私が弟(or兄)の店に一人でいた時、私服の警官が数人やって来て身分証明書の提示を求め
本文を読むネオヒューマニズム入門 (上)
著者: やすい・ゆたか1 人間は生物学的概念ではない 倫理学入門『鉄腕アトムは人間か?』のリポートで、ロボットは機械だし、子供も産まないし、修理次第で不死なので人間ではないという反応が多い。そういう意味では人間ではないのは前提である。既成の人
本文を読む歴史における神話のアクチュアリティ(2)
著者: 石塚正英二 ミュトスからロゴスへ、あるいは神話の非神話への転用 先ほど記したメソポタミヤ最古の叙事詩ギルガメシュ神話には、「エンキドゥ」という始原の人間が登場する。彼は、主人公でウルクの王ギルガメシュがあまりの暴君であったため
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(13)
著者: 岩田昌征29 協力者 私は10年後にハーグの国連拘置所でケラテルム収容所元看守ドシェン・ダミルから収容所やコザラツで起きた諸事件のそれまで知られていなかった詳細を話された。(p.78)ハーグ法廷の検察当局に協力して、ドシェンはコ
本文を読むホワイト・シューベルト
著者: 木村洋平シューベルトは白い。真っ白い。それは、曇り空の下の雪原のようでもあり、そこには寒さと死も横たわっている。 シューベルトは、1797年にウィーン郊外に生まれた。わずか31歳で人生を閉じる。1828年のこと。ベートーヴェン
本文を読む哀愁の漂う小話一つ二つ――「流れ勧進」と「冬の三十日荒れ」に涙して(下)
著者: 石塚正英「冬の三十日荒れ」 高い山に雪のおとずれがきかれ、人のはく息も白く、荒涼とした日本海のうえを渡り鳥が北の国から南へやってくる秋十一月も末。陽気な三味線や太鼓、四つ竹で賑わしていた渡り芸人達が「では来年までお達者で」と言葉
本文を読むフランス革命後のドイツ社会思想――フォルスター・ヘルダー・フィヒテ・カント・ノヴァーリス(4)
著者: 二本柳隆著・石塚正英編第2章 ドイツのフランス革命――マインツ革命におけるゲオルク・フォルスターの場合 フランス革命が、実際、ドイツの知識人に大きな影響を及ぼしたということは、いくら強調してもしすぎることはない。因みに、その影響の跡を拾い上げ
本文を読む旧ユーゴスラヴィア戦争をめぐる、「ハーグ戦犯1号の日記」(12)
著者: 岩田昌征27 堅固な証拠かファンタジーか 収容所開設の初日から収容所の仕事を意識的に調整し方向付けた一群の人々がいた。彼等はそうすることで全セルビア人にどれだけの損害をもたらすかを考えもしなかった。ドイツ人ジャーナリスト・グルー
本文を読む日本はどんな社会に向かうのか(その2)
著者: 岡本磐男まえがき 以前に書いた論稿において、私は日本の資本主義のシステムが、商品販売が円滑に行われず限界に近付き、ついには破綻に陥れば、民主主義国家自身も財政危機を中心に危機に陥ることがありうると指摘しておいた。実際、大阪市長橋
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