子安宣邦の執筆一覧

第二江戸思想史講義   徂徠「制作」論の成立とその射程―荻生徂徠『中庸解』を読む

著者: 子安宣邦

「老氏の徒、動もすれば天を言い性を言う。而して聖人の道を譏りて偽りと為す。故に子思性に本づけ天に本づけ、以て聖人の道の偽りに非ざることを明かす。性とは性質なり。人の性質は上天の畀うる所、故に天の命ずる之を性と謂う。聖人は

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中国の「新天下主義」について ―許紀霖『普遍的価値を求める』を読む

著者: 子安宣邦

「世界に影響を与える大国としての中国が今日実現すべきは、民族と国家の復興という夢だけでなく、民族の精神を世界へと方向転換することだ。中国が再建すべきは一国一民族に適した特殊な文化ではなく、人類にとって普遍的価値を有する文

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明治維新の近代・18  「天皇の本質的意義に変わりはない」―和辻哲郎『国民統合の象徴』を読む

著者: 子安宣邦

「国民の全体意志に主権があり、そうしてその国民の統一を天皇が象徴するとすれば、主権を象徴するものもほかならぬ天皇ではなかろうか。国民の統一をほかにして国民の全体意志は存しないであろう。かく考えれば「日本国民なるものが統治

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明治維新の近代・16 : 「戦没学生の手記」と日中戦争ー『きけわだつみのこえ』『夜の春雷』を読む

著者: 子安宣邦

泥濘は果てしない曠野を伸び 丘をのぼり林を抜け それは俺達の暗愁のやうに長い 田辺利宏「従軍詩集」 1 「戦没学生の手記」 東大戦没学生の手記『はるかなる山河に』が刊行されたのは昭和22年(1947)11月であった。私が

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 明治維新の近代・15「支那民族運動」に正面する者 ―尾崎秀実『現代支那論』を読む

著者: 子安宣邦

「今日、抗日民族戦線運動として現われているやや畸型的な支那の民族運動は、根本的には支那社会の半植民地性、半封建性を解決してその長き歴史的な停滞性を脱却せんとする要求をもっているのである。支那民族運動の大乗的解決は、まさに

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明治維新の近代・14 「シナ」の消去としての近代日本 その二   ―津田左右吉『シナ思想と日本』の再読

著者: 子安宣邦

「一方に於いては文化の妨げるいろいろのじゃまものをできるだけ早く棄ててしまわねばならぬ。このじゃまもののうちには、過去に支那からうけ入れたものが少なくないのであるが、支那文字の如きはその最も大なるものである。支那文字その

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明治維新の近代・13 シナの消去としての日本近代その一   ー津田左右吉『シナ思想と日本』の再読

著者: 子安宣邦

「今日の日本があらゆる点でいわゆる西洋に源を発した現代の世界文化、その特色からいうと科学文化と称すべきもの、を領略し、民族生活の全体がそれによって営まれていることは、いうまでもない。昔の日本人が書物の上の知識やいくらかの

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「思想史講座」のお知らせー7月のご案内 

著者: 子安宣邦

*だれでも、いつからでも聴くことのできる思想史講座です。 だれでもというのは、聴いてみようという目的意識をもった人ならだれでもということで、その目的も無く、あるいは別の目的をもって来られる方はお断りいたします。 *「明治

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明治維新の近代・11 なぜ「明治の精神」なのか―漱石の『こころ』を読む

著者: 子安宣邦

「私は殉死という言葉を殆んど忘れていました。平生使う必要のない字だから、記憶の底に沈んだ儘、腐れかけていたものと見えます。妻の笑談を聞いて始めてそれを思い出した時、私は妻に向ってもし自分が殉死するならば、明治の精神に殉死

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