かつて「ちきゅう座」に「周回遅れの読書報告」を、何回かの中断を挟んで20数回掲載してもらった。数年前(2014年)「その24」で休止したままになっている。休止した理由は今となっては不明であるが、どうも自身の怠慢が最大の理
本文を読む脇野町善造の執筆一覧
周回遅れの読書報告(その24) 古本を巡る因縁話(鈴弁事件のこと)
著者: 脇野町善造神保町の古書店街に行くたびに寄る古本屋がある。名前は知らない。本を買って、袋に入れて貰うこともあるが、その袋にも名前は入っていたことがない。数冊しか買わないときは、袋さえ貰わない。買うのは100円か200円の均一価格の
本文を読む周回遅れの読書報告(その23) 西田信春と岡崎次郎
著者: 脇野町善造夢野久作(杉山泰道)の秘書に紫村一重という人物がいた。非合法時代の日本共産党九州地方委員会の活動家だった男である。その紫村が同委員会の委員長だった西田信春のことを書いているものを、鶴見俊輔が『夢野久作 迷宮の住人』で紹
本文を読む周回遅れの読書報告(その22) 現状分析の一つの試み
著者: 脇野町善造「百年に一度の津波に襲われたようなものだ」。これはアメリカの発券銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の元議長グリーンスパン氏が、2008年の金融危機に対する責任を問われた際に、吐いた言葉である。「百年に一度の危機」と
本文を読む周回遅れの読書報告(その21) イングリッド・バーグマンの箴言
著者: 脇野町善造「座右の銘などは持たない」のが「座右の銘」だ、とキザに言いたいところだが、実は一つだけある。「後悔とはしなかったことに対していうものであって、やったことに対していうものではない」というのがそれである。もともとは女優、イン
本文を読む周回遅れの読書報告(その20) クロンシュッタトの水兵と埴谷雄高
著者: 脇野町善造クロンシュタットの水兵の話を続ける。久野収と鶴見俊輔の対話集『思想の折り返し点で』で久野が埴谷雄高から貰った手紙を紹介している。久野の発言は次の通りである。 ベルリンの壁が落ちたときに、埴谷氏がぼくにくれた葉書に、「あ
本文を読む周回遅れの読書報告(その19) クロンシュタットの水兵の反乱
著者: 脇野町善造2月26日という日は、日本では1936(昭和11)年の2.26事件の起きた日として記憶されているのが一般的であろう。その15年前(1921年)の2月26日に、ロシアのクロンシュタット要塞の水兵達の艦隊総会で歴史に残るよ
本文を読む周回遅れの読書報告(番外その6) 佐野誠氏と猪瀬直樹氏
著者: 脇野町善造2010年から2011年の3月5日まで「周回遅れの読書報告」を書いていた。昨年の9月に二つだけその「続編」を書いた。その間の長い中断の理由については、9月14日の(番外その4)を見て頂ければいい。しかし「続編」は、たっ
本文を読む周回遅れの読書報告(2-1) 「野垂れ死にする自由」と経済ジェノサイド
著者: 脇野町善造中山智香子の『経済ジェノサイド』は、フリードマン流の新自由主義がいかに経済弱者を皆殺しにしていったかを、読みやすく書いた好著である。ただ、次の文章は気になった(282頁)。 自由を謳う統治が社会の一部分を見棄て、見殺し
本文を読む周回遅れの読書報告(番外その4) 古い百科事典のこと
著者: 脇野町善造2010年の秋から2011年の3月にかけて「周回遅れの読書報告」という雑文を合計20回近く投稿した。最後は3月5日付けになっている。その6日後の大きな災害のあと、雑文を書く状況ではないと思い、投稿は控えてきた。30か月
本文を読む嵐の前、嵐の後始末──先週の新聞から(19)
著者: 脇野町善造この報告書を「書き直す」ということは原則としてしないことにしている。第11信でも触れたことだが、「ろくに検討もせずに、勝手なことを書いている」のであって、「書き直す」ことなど最初から眼中に無いのである。しかし前便(第1
本文を読む周回遅れの読書報告(その18)
著者: 脇野町善造ある会合で某出版人と話をしていたら、「伝説の思想家」大池文雄のことになった。大池は旧制水戸高での梅本克己の弟子で、早い時期に日本共産党を批判して党から除名された「思想家」である。彼が思想的活動を止めてもう久しい。 私が大
本文を読む事件を見る視角(続き)──先週の新聞から(18)
著者: 脇野町善造かなり貧弱な知識で外国の新聞を眺めていることは過去のこの報告で既に触れたと思う。今回はその貧弱さがいかにひどいものであるかをさらけ出すことになるが、そしてまたそれ故に、「翻訳できなかった文章」を外国語のままで伝えることに
本文を読む事件を見る視角──先週の新聞から(17)
著者: 脇野町善造西はモロッコから東はイランまで、マグレブから中近東まで、アラブ世界は、油ではなく、「反政府」の大衆運動の火の海にある。こんなこときに「世界金融」の話をしていてどうするのかと自問せざるを得ない。しかし、「亭主(女房)の葬式
本文を読む周回遅れの読書報告(その17)
著者: 脇野町善造最近、5夜にわたって、総放送時間20時間という『銀河鉄道999』のTV放送があった。放送時間中に全部を見ることはとてもできなかったが、全編を録画し、折に触れて見ている。そのなかで、『銀河鉄道999』の原作者である松本零士
本文を読む想像を超える現実──先週の新聞から(16)
著者: 脇野町善造経済紙を含め、エジプトの大衆デモによるムバラク大統領の辞任(2月11日)が先週の大ニュースとなった。ムバラクの退陣と世界金融の関連はしかしここでの対象にするつもりはない。エジプトや、中東情勢がどうなるか、まだ誰にも分か
本文を読む2月4日にブリュッセルで何が起きたのか──先週の新聞から(15)
著者: 脇野町善造普段は経済紙としての日経は読まない。しかし、どうにも気になり、2月5日の日経を読んだ。気になった理由は、2月4日にブリュッセルで行われたEU首脳会議のことを伝えたこの日の朝日新聞がエジプト問題のことにしか触れていなかっ
本文を読む周回遅れの読書報告(番外その3)
著者: 脇野町善造大学で理科系の教育を受けた(したがって経済学を専攻しなかった)経済研究者は決して少なくない。古くはヒルファディングがそうであるし、ケインズに先立って有効需要の原理を論証したとされるポーランドのカレツキもそうだった。これは
本文を読む中国問題とダボス会議の「悪趣味」──先週の新聞から(14)
著者: 脇野町善造1月22日付けのEconomist に、「中国人民元:小説よりも奇なり」という記事が掲載された。内容自体はそんなに興味のあるものではないが、このなかで、1月16日のWall Street Journal(WSJ)(とワ
本文を読む周回遅れの読書報告(その16)
著者: 脇野町善造前回の報告を続ける。ヘルマンはアメリカ人をこう評価する(訳書125頁)。 われわれ[アメリカ人──引用者]は過去を記憶に留めておこうとしない民族だ。アメリカでは、過ちを覚えているのは不健康、それについて考えるのはノイロー
本文を読む長いだけで無意味な記事、長短にかかわらず考えさせられる記事──先週の新聞から(13)
著者: 脇野町善造先週は、胡錦濤(フー・チンタオ)中国国家主席の国賓としての米国訪問が紙面をにぎわした。21日の朝日の「天声人語」で、40年前は資本主義だけが中国を救うとされたが、今は中国だけが資本主義を救うと言われているという趣旨の話
本文を読む周回遅れの読書報告(その15)
著者: 脇野町善造一冊の本を1回で報告することを原則としているが、今回は2回に分けて報告する。どうしても紹介しておきたい文章がいくつかあるからである。 アメリカにリリアン・ヘルマンという戯曲家がいた。名の売れた戯曲家だったらしいが、私は彼
本文を読む背景を考えること、楽観的に見ること──先週の新聞から(12)
著者: 脇野町善造1月11日の昼過ぎ、この日の閣議後の記者会見で野田財務相がアイルランド支援のための「欧州金融安定化債」を買うことを決めたというニュースに接した。「へぇ―」と思って、Webサイトを覗いてみた。Handelsblatt(H
本文を読む周回遅れの読書報告(その14)
著者: 脇野町善造まだフルタイムで働いていたある時期、給料は出るが、仕事も部下もなく、日中は新聞か本を読むか以外にすることがないという奇妙な経験をした。時間的余裕がある割にはたいしたものを読んだわけではなかったが、本屋にはよく行き、現実
本文を読む暗い話と悪い話──先週の新聞から(11)
著者: 脇野町善造この報告の(9)で「年の最後くらいは明るい報告にしたいと思う」と書きだし、経済に明るい話は本来ないから、そんなノー天気なことを報告することはできないとして諦めた。とはいうものの、年の最初こそは多少なりとも希望の見える報
本文を読むドイツの強腰の背景──先週の新聞から(10)
著者: 脇野町善造2011年元旦の朝日新聞を眺めていたら、全面広告に「経済は理系を求めている」という大きな文字が躍っていた。この「経済」というのは「産業」の間違いではないか。少なくとも「経済学」は理系を求めることはないはずだ。社会科学の
本文を読む周回遅れの読書報告(その13)
著者: 脇野町善造薄田泣菫『茶話』(ちゃばなし)には私の知る限りでも、岩波文庫版と冨山房百科文庫版の2種類がある。ただ私は岩波文庫版を読んだことがない。どこかの書評で、谷沢永一が岩波文庫版は所詮は抄録に過ぎず、泣菫が『茶話』で伝えようとし
本文を読む周回遅れの読書報告(番外その2)
著者: 脇野町善造正月だから「笑い話」をしたい。もう10年以上も前の話であるが、1999年10月3日付けの『読売新聞』に、「笑い話がある」という書き出しで、次のような記事が掲載されていた。記憶に残る出色の「笑い話」である。 〈引用開始
本文を読む放漫、怠慢、傲慢──先週の新聞から(9)
著者: 脇野町善造これが2010年の最後の報告となる。最後くらいは明るい報告にしたいと思うのだが、ノー天気なことばかりもいっておられないようだ。 「科学としての経済学は陰気な学問である」と言ったのは、トーマス・カーライルだそうだ。ある
本文を読む周回遅れの読書報告(その12)
著者: 脇野町善造『去年マリエンバートで』という映画をはじめて見たのは、一体何年前のことかもう定かではない。早稲田の小さな劇場に、あるイタリア映画を見るために入った。そしたら、『去年マリエンバートで』を併映していた。この映画のことはそれ
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