東京にて三月を迎えた。初春の気に満ちている。 野に生えて苦み走りぬ春菊も 春菊の野生の苦みと、世を渡り単純でいられなくなる人間の様とが重なる。暖かい日に家のそばをそぞろ歩いて。 白梅のひとつらなりに伸び上がり みて
本文を読む俳文の執筆一覧
【俳文】札幌便り(16)
著者: 木村洋平二月四日の立春を迎えるも、円山公園では積雪が腰まで達していた。今年は雪が少ないと言われていたから、「これでやっと真冬だ」とかえってほっとする心地。 初午や白樺枝を天に寄す 今年の初午(はつうま)は二月四日で立春と同じ。い
本文を読む【俳文】札幌便り(15)
著者: 木村洋平汽車に乗って旭川へ来た。大晦日の暮れた街にイルミネーションが灯っている。たしか去年まではクリスマスで消灯されていたことを思うと、なんとなく明るい気分になる。とはいえ、人影はなく商店街も閉めきった店ばかりだ。 除夜の鐘どこ
本文を読む【俳文】札幌便り(14)
著者: 木村洋平12月を迎えた。東京はいままでになく暖かく感じるが、やっと身体が札幌に慣れてきたためだろう。季節が二ヶ月分はちがう。 東京のアスファルトにも霜降りて 札幌では雪が降っているだろう。 冬晴れや白髪吹き上げそよぐ風 霰降る晴
本文を読む【俳文】札幌便り(13)
著者: 木村洋平立派な洋梨を見つけて色も形も申し分なく、見ようによっては少しいびつなのもおかしとて家に持ち帰り切るけれども、じゃりと言うばかりで味の淡泊なること甚だし。 洋梨の切るまで味のわからなさ 同じように、はと麦茶もいい加減
本文を読む【俳文】札幌便り(12)
著者: 木村洋平本の執筆が佳境を迎えて。 書き上げても書き上げても青蜜柑 「分け入っても分け入っても青い山」(種田山頭火)の真似をしてみるが、これはきちんと熟さないと困る。 旅に出でなんとす紅葉かつ散れば 丸いのもハートの型も紅葉か
本文を読む【俳文】札幌便り(11)
著者: 木村洋平誰もいない秋夕焼の広場かな 雑木林の向こうは色に染まって。この秋は空から降りてくる、だんだんに。 数えればひふみよいくつ星月夜 なんの日か秋桜みんな咲いている 都会の夜空は星も見つからないようでいて、探せば増える。「今日
本文を読む札幌便り(10)
著者: 木村洋平北海道の七夕は8月7日にやってくる。もっとも、函館は例外で7月7日らしい。商業施設のなかでは笹が飾られて、誰でも短冊をかけられる。子供は思い思いのことを書く。 プリキュアになれますように星祭り 「プリキュア」は日曜日
本文を読む【俳文】札幌便り(8)
著者: 木村洋平松落葉ベンチのうえで寝るひとも 五月、長く雪に閉ざされていた円山公園が、茶色い大地を剥き出しにしているのには、力強い季節の移りゆきを感じる。 誰(たれ)よりも遅くて蝦夷の桜かな 日本でおそらく一番、遅い桜はエゾヤマザクラ
本文を読む【俳文】札幌便り(6)
著者: 木村洋平茫漠とした気持ちで迎える三月。まだ雪は積もったまま、これより積もることはないものの、溶けゆく四月までは間があります。 二月尽はじまるものもないままに ブーツを履いて出掛け、ひとと行き交うときにはどちらか雪の壁に寄ります。
本文を読む【俳文】札幌便り(7)
著者: 木村洋平雪解けの松葉の先の雫かな 円山公園はいまだに腰まで雪があった。四月の初め。帰り道では、 凍て山の向こうにありぬ春夕焼 稜線のうえには春の夕焼けが穏やかに、その下は薄暗く、白雪と枯れ木の厳しい表情を湛えた山。 凍てゆるみキ
本文を読む【俳文】札幌便り(5)
著者: 木村洋平大雪にオレンジ色の灯しかな と詠んでいた北海道の冬ですが、旧暦でははや、立春を迎えました。 江戸とはひと月、ずれる暦で動いているような札幌。いまだに、NHKでは「昼間、外出される方も、長時間ですと水道凍結の恐れがあります
本文を読む【俳文】札幌便り(4)
著者: 木村洋平年始のご挨拶を申し上げます。北海道から、今年初めてのお便りをお届けしたいと存じます。 のびのびと仕事始めや晩の月 さしたる趣もないようで、感慨あり。僕の思いなしだろうか。 ななかまど子供の夢をこぼれさす 街路を歩いて、北
本文を読む札幌便り(2)ーー公園の街 美瑛へゆく汽車
著者: 木村洋平札幌へ来てふた月。ここは、公園の街でもある。札幌駅の方から、繁華街のすすきのをくぐり抜けると、中島公園に行き当たる。緑にあふれて、芸術にも触れられる。隣接する渡辺淳一文学館は、安藤忠雄の事務所が設計。園内のコンサート・ホ
本文を読む札幌便り(俳文)
著者: 木村洋平*俳句誌「ゆく春」に掲載予定の文章を、許可を得て転載。 私の作でない句は、作者名を明記。[太字] 札幌は開けた街だ。広々とした街並みに、木々の葉が揺れる。ここは緑の街でもある。大通公園は、市街地の真ん中を横切っているけ
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