わが国における感情の起伏としての三角関係と聞いて、すぐおもいつくのは折口信夫の宗教論のことである。 ≪常世のまれびとと精霊(代表者として多くは山の神)との主従関係の本縁を説くのが古い呪言である。呪言系統の詞章の宮廷に行は
本文を読む宮内広利の執筆一覧
書評 ニッポン思想の源流
著者: 宮内広利梅原猛の日本文化論を読むと、このような考え方は、今ではほとんどのひとの内面に、過不足なく定着しているのではないかと納得してしまう。彼は、西欧文明は科学技術に裏づけられた合理的な理性文明であって、自然に対する力の原理で世
本文を読む評論 非戦の条件
著者: 宮内広利かつての大東亜戦争が、なぜ、あのようにナショナリズムを高揚させ、あたかも破滅への道筋をまっしぐらに進むかのように国民を駆り立てたのであろうかと考えるとき、現在のわたしたちなら、かつてのソ連邦や現在の北朝鮮など社会主義を
本文を読む評論 柳田國男と転向
著者: 宮内広利柳田國男の民俗学は、山人や漂白民に対する関心からはじまったとされているが、彼が山の生活に興味をもちはじめたのは、法制局の参事官になり犯罪の特赦に関する事務を担当していた頃、のちに『山の生活』の中で知られている事件に遭遇
本文を読む評論 静かな戦争批判
著者: 宮内広利柳田國男は遠い先祖の霊を繋ぐには水と米が絆だったという。だから若水迎えに該当する儀式が魂祭りに付随していた。彼はそれを先祖の霊と呼び、その霊は稲作の霊と深く結びついていた。ひとは亡くなってから33年目、あるいは50年目
本文を読む評論 大東亜戦争の思想
著者: 宮内広利明治以降、わが国が歴史観において普遍主義(インターナショナリズム)とナショナリズムのいりくんだ関係を突きつけられたのは、後から出発した近代国家の宿命のようなものであった。この関係はある場合には開化と攘夷、左翼と右翼、都
本文を読む書評 「大人の平和主義」について
著者: 宮内広利ともすれば、政治的プラグマチストを自認するものにかぎって、反対に抽象論におちいっていることが多いが、国際政治学の立場から世界の戦争と平和の問題を考えようとすればどうなるか、藤原帰一の穏健な平和主義がよく示してくれる。彼
本文を読む評論 戦争とポスト・モダン
著者: 宮内広利戦前、戦中の京都学派は、近代国家への不信感から戦争と世界史の理念を継ぎあわせようとした。その際、わが国を世界史の中に位置づける方法として、「世界史の哲学」という大きく身構えた姿勢をとった。また、彼らは西洋哲学史の知識を
本文を読む評論 究極の戦争理念
著者: 宮内広利戦争をなくすにはどうすればいいかという設問を公開の場にひきだすと、あるものは戦争と平和という概念そのものを壊して、ひとそれぞれの善意に委ねようと言ったり、また、あるものは国家間の生存競争がなくならないかぎり人類の戦争は
本文を読む評論 戦争の想像体験
著者: 宮内広利平和運動家たちは、たくさんの人命、財産を失ったかつての戦争からあらゆる遺物を蒐集して教訓を引き出そうとした。そればかりか、良心的なひとびとは遺物によっては見えない精神的事実を補うため、従軍した兵士たちに戦争責任はないと
本文を読む評論 戦争と従軍慰安婦
著者: 宮内広利戦争とか国の防衛の問題を大上段にふりかざして議論すると、いくつものタブーに突きあたる。うんざりして、もうそろそろ、作り話と決別しなければならない時期だとおもう。米国が現在イラクやアフガニスタンで行っている戦争のことを考
本文を読む書評 世界を裁く作法―フーコー
著者: 宮内広利≪西欧における権力の大形式、権力の大よそのエコノミーを、次のように再編成することができるかもしれない。まず、封建的タイプの領土性において誕生し、概ね掟の社会―慣習法と成文法―に対応し、約束と争いのゲームを繰り広げる、裁判
本文を読む評論 プロレタリアートとマルチチュード
著者: 宮内広利ドゥルーズは、国家の起源をマルクス同様、「アジア的専制国家」と認めているが、その「原国家」について次のように述べている。 ≪国家はすでに出現する前から、これらの原始人社会がその社会の存続のために祓いのける現勢的な極限と
本文を読む評論 帝国とマルチチュード
著者: 宮内広利ネグリのいう「構成的権力」とは、一口に言うと、ひとが生きることを第一においた世界に向けて、協働的な力を高め政治的民主主義を結晶させる力のことである。かつて、資本主義がうみだした生産能力をより発展させ民主主義を実現する過
本文を読む書評 『叛逆』 アントニオ・ネグリ マイケル・ハート著
著者: 宮内広利≪ヘーゲルにおける<他者>のドラマおよび、主人と奴隷のあいだの抗争は、ヨーロッパの拡大とアフリカ、アメリカ、アジアの民衆の奴隷化という歴史をその背景とすることによってのみ生じたものなのだ。言葉を換えるなら、ヘーゲル哲学の
本文を読む評論 戦争と「家」
著者: 宮内広利わが国の近代において戦争に対する視線の問題にいちばん意識的だったのは、「常民」の思想を紡ぎだした柳田國男であった。柳田が歴史学と呼んだのは、戦争や飢饉や大災害のような一回性のものではなく、むしろ、見慣れた光景ではあるが
本文を読む評論 戦争と社会主義
著者: 宮内広利1914年7月、第一次世界大戦が始まったときレーニンを何よりも驚かせたのは、左翼政党と呼ばれていた第二インターナショナルの諸政党、特にドイツ社会民主党の指導者カウツキーをはじめロシアのメンシェヴィキも、自国の開始した戦
本文を読む書評 『国家と革命』レーニン著
著者: 宮内広利かつてわたしたちは、「プロレタリア独裁」という直截な歯切れの良さに心酔していた時期があった。当然のように言葉を包む暴力の予感も抑圧の危険さも知っていたはずなのだが、なぜか革命に対する片思いの時期を思い出しても、どのよう
本文を読む戦争を無化する思想
著者: 宮内広利どこか天井が抜けて青空が見えるような考え方はないのだろうかという内省が、どちらが頭か尻尾かわからないで頭の中をぐるぐるめぐっている。そして、その場合、天井とはどんな障壁なのか、わたしたちには明瞭には見えているはずもないの
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