「建国記念の日」に寄せて―2月11日は私の正月1日―
- 2020年 2月 18日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
新年の礼楽といえば、近年はNHKテレビ中継のウィーンフィル「ニューイヤーコンサート」のようだ。多くの同朋がその音楽を心から楽しめるらしい。
ところで2月11日は旧「紀元節」、現「建国記念の日」だ。「紀元」、「建国記念」にせよ、国旗、国歌と同様にヨーロッパ近代国制の直輸入の観念ではなかろうか。丁度それと符合するかの如く、倭国が日本国へ脱皮する時代、即ち1300年昔の「近代化」の時代、日本の文字文明創世の時代に出現した文献『日本書紀』に記された神話的事件に依拠して、2月11日が定められた。
私は、そんな日に、あるCDを毎年聞く。自分の年中行事だと勝手に決めている。それは、官中伝承の神楽歌だ。あいうえおの母音一音一音がとてつもなく長く引き伸ばされて、子音が殆ど消え去っており、耳だけでは歌の意味は全くわからない。ただただ倭古来の曲調につかるだけである。多忠麿によれば、六世紀から七世紀に完成した日本古有の歌曲だと言う。
1時間半ほどの【1】縒合(よりあい)から【9】篠波(さざなみ)に至る神楽歌を聞き終ると、2月11日を勝手に正月1日と観念して、やっと新年が来たように実感する。ウィーンフィルより深い世界だ、私にとって。
以下に神楽歌【5】閑韓神(しずからかみ)と【6】早韓神(はやからかみ)の歌詞と多忠麿の解説を写真版で提示しておこう。余談であるが、昨今はやりの「嫌韓日本人」がいかに「日本人離れ」しているか、実感できるであろう。
令和2年2月12日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://chikyuza.net/
〔opinion9462:200218〕
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