トランプ大統領、最後の1年(9) 軍事予算を大幅拡大、核戦力の使いやすさを強化、対人地雷の使用拡大など軍拡を推進
- 2020年 2月 24日
- 評論・紹介・意見
- アメリカ坂井定雄
トランプ政権は軍事予算を大幅増、中距離核戦力(INF)全廃条約を失効させ、使いやすい小型核兵器を原潜に配備、対人地雷の使用制限を撤廃した。オバマ前政権が8年間に進めた、核軍縮の取り組みを逆行させている。トランプ流の冷戦を推進しているのだ。中国も軍拡を進めている。今年に入ってから、“最後の1年”の仕上げのように、トランプ政権の発表が続いた。
1月31日、トランプ政権は、オバマ前政権が決定した、対人地雷の使用を朝鮮半島だけに限るとした規定を撤廃すると発表した。米軍は今後、世界どこででも対人地雷を使うことができることになった。国際社会は、人間を無差別に殺す対人地雷を禁止する流れになっていたが、トランプ政権は、その流れに逆行したのだ。米国防総省の発表によると、自動的に破壊される機能や自動停止の機能を持つ対人地雷は、製造,使用ができる。オバマ政権は2014年、朝鮮半島での対人地雷の使用を例外的に認めたが、それ以外の地域では、製造も使用もやめる方針を決定した。この日の国防総省の声明では、前政権の方針を「米軍部隊を危険にさらす」と非難した。
対人地雷については、その使用、製造、保有を禁止する対人地雷禁止条約がクリントン米大統領の積極的な努力もあって1999年に発効、日本を含む104か国が締結している。
トランプ政権の米国防総省は2月4日、原子力潜水艦に「低出力の核弾頭を実践配備した。米国と同盟国がいかなる攻撃を受けても、速やかに応じられる態勢が整い、抑止力が高まった」と発表した。これまで原潜に搭載されている核弾頭ミサイルは破壊力が巨大で、使用条件に柔軟性がなかったが、その小型化で使用しやすくなった、というのだ。トランプ政権は、クリントン政権からオバマ政権にいたる米国の核軍縮への努力をぶち壊し、ロシアや中国との核軍拡競争を再現しつつある。
1987年に発効した米国とソ連の「中射程および短射程核ミサイル全廃条約」(INF全廃条約)はトランプ政権が更新せず昨年夏失効した。米国とロシア間に残る新戦略兵器削減条約(新START)も来年が期限だが、トランプ政権は延長を約束せず、無条約状態に逆戻りするかもしれない。
英国際戦略研究所が2月14日に発表した年次報告「ミリタリーバランス2020」によると、2019年の世界各国の防衛費は総額1兆7千3000億ドル(約190兆円)で、前年比4.0%増。過去10年で最大になった。米国と中国はそれぞれ前年比6.6%増。
トランプ政権下、米国は防衛費の増額を続け、2019年は前年比534億ドル増の6、846億ドル。増額分だけで、英国やフランスの防衛費総額に匹敵している。中国も106億ドル増の1,811億ドル。増額分だけで台湾の防衛予算に匹敵する。
2019年の世界各国防衛費(1位―10位)(英国際戦略研究所ミリタリーバランス2020による)
① 米国 6846億ドル
② 中国 1811億ドル
③ サウジアラビア 784億ドル
④ ロシア 616億ドル
⑤ インド 605億ドル
⑥ 英国 548億ドル
⑦ フランス 523億ドル
⑧ 日本 486億ドル
⑨ ドイツ 485億ドル
⑩ 韓国 398億ドル
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〔opinion9479:200224〕
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