ベールに覆われた「中国式民主」の総本山 ― 闇?から現れる次期指導者 第20回中国共産党大会について 5
- 2022年 10月 20日
- 時代をみる
- 中国共産党田畑光永習近平
16日に開会した中国共産党大会は、途中、17日に発表されることになっていた今年7~9月の経済成長率などの経済指標が理由の説明もないまま発表が延期されるというハプニングはあったものの、おおむね順調に進んでいるようである。すくなくとも習近平総書記以下の幹部たちは、通常どおり全体会議の合間には各地方別の会議に出席して意見を交わすという任務を遂行している。
とはいえ大会といえば気になるのは、トップ以下これから5年間の指導部人事がどうなるか、それがどういう形で決まるのかだが、中國共産党の場合、その過程はまったくベールに覆われている。
最終日に結果だけが発表され、閉会後、政治局常務委員会に決まったメンバー(多くて9人、少なければ5人、直近のメンバーは7人)が順位に従って、記者会見に現れるのが最初の顔見せである。
しかし、報道の隙間から多少のヒントはあるので、それをご紹介しておこう。
大会の模様をテレビあるいは新聞紙面でご覧になると、人民大会堂のホールには勿論、2300人近い「代表」がホールの1階席をぎっしりと埋め、二階席には報道陣などが陣取っている。これは普通の風景であるが、やや奇妙に感じられるかもしれないのが、客席に向かい合う舞台が異様に大きく、そこにも雛壇のような階段席があって、すくなくとも100人以上、あるいは200人にも達するかという多数の人たちが、客席に向かい合って着席している光景であろう。
そしてその最下段に居並ぶのが、前・元首脳たちで、その前の横一列が現政治局員らである。
問題はその舞台の雛壇に座る面々が誰か、である。それについての説明を私は聞いたことも、読んだこともないのだが、察するにその人々は大会の「主席団」と呼ばれる人々で、言うなれば大会運営委員とでもいう人々らしい。
そこで人事の話だが、19日の新華社電によると、18日の午後、その大会主席団の2回目の会合が開かれ、今度の大会(第20回党大会)で選ばれるべき中央委員とその候補委員、そして中央規律検査委員(汚職摘発に特化した委員会に所属)の候補者名簿が配布され、代表間での討議に回された、とのことである。
ということは、舞台上の雛壇に着席している「主席」というのは、各地あるいは各部門から選ばれた大会代表の地域、部門各グループの代表であろう。その人たちを通じて、次の5年間をリードする中央委員と同候補、そして規律検査委員の候補者リストが各グループに下達されたのだ。
そこで「討議」となる。じつは討議と訳した元の中国語は「酝醸」(日本語の訓読ではウンジョウ)という言葉で、意味は「酒を醸(かも)す」である。日本語の討議という言葉のもつ堅苦しさはない。酒を醸すようにじっくりと、あちらからこちらから品定めをして、最後は阿吽の呼吸で手を打つといったニュアンスである。と言っても、この言葉は中國では普通の政治用語である。じっくりというニュアンスはぬぐい切れないが。
問題は各代表団内部で「酝醸」して、この人間はだめだ、あるいは誰それを入れるべきだ、と主席団が納得したリストに強い反対論あるいは代替案が出されたときにどう処理するのか、それは分からない。最終結果は得票数の発表なしに、当選者のリストが公表されるだけである。
というと、投票などは実は行われないのではないか、という疑いも生ずるが、先の新華社電は今次大会の投票監視人や総監視責任者を決めたとも報じているので、選挙は行われる。現に中央委員に欠員が生じた場合には、同候補に当選した人間の中から得票順に昇格することになっているから、投票は行われ得票数も意味を持つのだ。ただそれは一般人には藪の中なのだが。
中國は民主には各国それぞれの方法があり、これでなければだめという決まりない。中國には中国式民主があり、それは「全過程民主」である、と主張する。
「全過程民主」という意味は、西側の民主は選挙の時だけ政治家は国民に目をむけるが、選挙で当選すればあとは次の選挙まで国民のことなど考えないのに対して、中國では幹部はたえず人民の声に耳を傾けるから全過程民主なのだと言い張っている。
しかし、われわれから」すれば、選挙こそ民主の始まりであり、「全過程民主」などという言葉は誤魔化しとしか聞こえないが、それはまあ言ってもしかたがない。
ともかく、今頃は「酝醸」も佳境に入って、次期の中央委員200人の顔ぶれが決まりつつある頃だ。200人といっても、何百人も国会議員のいる国とはちがって、その200人は今後5年間、政治・行政はもとより、国営企業、司法界、国立機関など、いたるところの実権を握る人たちである。「酝醸」にはさぞ熱が入っているであろう。(221019)
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