国連人権委員会、学校行事における「日の丸・君が代」強制に是正勧告!
- 2022年 11月 5日
- 評論・紹介・意見
- 日の丸君が代澤藤統一郎
- The Committee notes with concern the reports of restrictions of freedom of thoughtand conscience in the State party. It is concerned that as a result of passive, non-disruptiveacts of non-compliance of teachers to stand and face the flag and sing the national anthem atschool ceremonies, some have received punishment of up to six months suspension of duties.
Furthermore, the Committee is concerned of the alleged application of force to compel
students to stand during ceremonies (art. 18). - The State party should guarantee the effective exercise of freedom of thought and conscience and refrain from any action that may restrict it beyond the narrowly
17 CCPR/C/JPN/CO/6, para. 23.
CCPR/C/JPN/CO/7
construed restrictions permitted under article 18 of the Covenant. It should bring its legislation and practices into conformity with article 18 of the Covenant.
(2022年11月4日)
セアート(ILO-UNESCO合同専門家委員会)に続いて、国連人権委員会も、学校行事における国旗・国歌(日の丸・君が代)強制の是正勧告を出した。これは、画期的なことである。
各国の人権状況を審査している国連人権委員会(United Nations Human Rights Committee 「自由権規約委員会」とも呼ばれる)が、定期審査の結果を踏まえての各国に対する「最終見解」(勧告)を公表している。日本政府に対しては、昨日(11月3日)付けでの勧告が出されている。話題になっているのは、もっぱら入管行政の非人道性への指摘であるが、勧告は多方面にわたっている。あらためて、我が国の人権後進性を嘆かざるを得ない。もっとも、下には下があり、中国やロシア、北朝鮮などよりはずっとマシではあるのだが…。
多方面にわたる日本の人権侵害状況の問題の中に、学校儀式における国旗国歌への敬意表明強制がきちんとしたかたちで取りあげられている。この勧告獲得に努力を重ねてきた関係者が歓声を上げている。世界には、真っ当な意見が通じるのだ。
日本も批准している国際自由権規約(B規約)18条には、思想・良心・信教の自由の保障が明記されている。その保障された自由の制約を合理化する事由は、厳格に制限されている。
この点について、勧告は、国旗国歌強制の人権侵害を問題視して、「許容されうる厳格な制限を超えて、思想良心の自由を制約しうるあらゆる行為を中止しなければならない」とする。さらに、「また、締約国は自国の法律及び運用を規約18条に適合するものとしなければならない」と明言している。愛国心を煽る日本の教育行政のみならず、最高最判例も、国連人権委員会から、「国際基準を遵守せよ」とその姿勢の転換を迫られているのだ。これは、大事件ではないか。
国連人権委員会は、国連総会で採択された「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(自由権規約)28条に基づき、同規約の実施を監督するために設置され、1976年から活動を開始している。4年任期の18名の委員から構成され、通常年に3回、3週間ずつの会期を開く。規約締約各国は、規約第40条に基づき、5年ごとに同委員会へ定期報告書を提出する義務がある。委員会はこの各政府からの報告書と各国のNGOからのカウンター意見を踏まえて、規約の履行状況、即ちその国の人権状況を審査する。その上で各締約国に対し「最終見解」と題する文書により、懸念事項及び勧告を提示する。今回の日本国政府に対する「最終見解」は、7回目となる。
ところで、自由権規約第18条【思想・良心及び宗教の自由(Article 18)は以下のとおりである。
「すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、 儀式、行事及び教導によつてその宗教又は信念を表明する自由を含む。
何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。
宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であつて公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。」
これを踏まえた、今回の「最終見解」第38・39パラグラフの仮訳は以下のとおりである。
第38項 委員会は、締約国において思想・良心の自由が制約されているとの報告に憂慮の意を表明する。また、学校儀式において、教員が国旗に向かって起立し国歌を斉唱しないという、式を妨害することのない消極的な行為によって、最長6ヵ月の停職処分を受けた教員もいることを憂慮している。さらに委員会は、式典の間、生徒学生らを強制的に起立させているという報告に憂慮している。(18条)
第39項 締約国は、本件規約18条に従って、思想及び良心の自由の行使を十分に保障し、許容されうる厳格な制限を超えて、思想良心の自由の制約となるあらゆる行為を控えなければならない。また、締約国は自国の法令及び運用を規約18条に適合するものとしなければならない。
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2022.11.4より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=20226
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion12517:221105〕
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