本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(428)
- 2023年 9月 22日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
バブルと神話
人々の意識と行動が偏り、価値観が統一化された時に、「バブル」が発生し、また、「神話」が産み出されるものと考えているが、具体的には、「大東亜戦争における『軍拡バブル』であり、また、この時に発生した『神の国』の神話」などのことである。つまり、「明治維新」以降、「富国強兵」のスローガンのもとに、日清戦争や日露戦争、そして、第一次世界大戦に勝利した日本では、いつの間にか、「日本は神の国であり、決して、戦争に負けることはない」というような偏った考えに支配されていたことも見て取れるのである。
また、その後の「戦後の経済成長」においては、「日本の土地と株式のバブル」が発生し、この時には、「土地や株式の価格は永遠に上昇する」、あるいは、「日本の銀行が倒産することはあり得ない」というような「神話」が誕生したことも理解できるのである。しかし、実際には、「バブルの崩壊とともに、神話も崩れ去った」という状況でもあったが、この事実から気付かされることは、「現在のバブルと神話」とも言えるようである。
具体的には、「デリバティブとデジタル通貨のバブル」でもあるが、この点については、「バブルの特徴」とも言える「バブルの崩壊後に、バブルが存在していたことに気付かされる状況」も指摘できるようである。つまり、「ハイパーインフレによるデジタル通貨の完全消滅」という事態が発生した時に、初めて、「人類史上、未曽有の規模でのデジタル通貨のバブル」が認識される可能性のことである。
そして、今回の注目点は、「デジタル通貨のバブルは、どのような神話を産み出したのか?」ということでもあるが、実際には、小さな神話が「逆イールドがリセッションを産み出す可能性」であり、また、大きな神話が「DX革命」のようにも感じている。つまり、「デジタル革命により、世界が飛躍的に進化する」という認識のことだが、実際には、「0と1との間に存在する情報を切り捨てることにより、情報処理のスピードや効率性を早めた状況」だったようにも思われるのである。
別の言葉では、100年ほど前から始まった「量子力学」や、その後の「分子生物学」などで取り上げられている「アナログ的な0と1との間に存在する情報」が抜け落ちている状態のことである。つまり、「西洋的な唯物論的認識」のもとでは、「富の象徴であるデジタル通貨」が尊重されたものの、一方で、今後の「東洋的な唯心論的認識」のもとでは、反対に、「神の象徴とも言える、11次元にまで進化した高次元の世界」への関心が高まる展開も想定されるものと思われるのである。(2023.8.21)
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金利とインフレ
現在、マスコミで言われていることは、「金利を上げれば、インフレ率が低下する」ということであり、この点については、「1980年前後に実施されたボルカー元FRB議長による高金利政策」が参考にされている状況とも言えるようである。つまり、「インフレ率を上回る水準にまで金利を上げれば、その後、自然にインフレ率が低下を始める」という理解のことでもあるが、私自身は、この点について、大きな注意が必要なものと感じている。
具体的には、「米国の中央銀行であるFRB」が誕生した「1913年」以降の世界を、「貨幣」の観点から俯瞰すると、実際には、「1933年に米国の金貨本位制が廃止され、また、1944年のブレトンウッズ会議により、金地金本位制から金為替本位制へと変更された」という状況だったのである。そして、その後の「1971年のニクソンショック」では、「約6000年の歴史」を持つと言われる「貨幣」において、人類史上、初めて、通貨と商品との関係性が断たれる「金本位制からの離脱」までもが実施されたのである。
その結果として、過去52年間の「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」の期間に発生した現象は、「未曽有の規模でのマネー大膨張」であり、また、「借金漬けの経済成長が産み出した地球の環境破壊」だったことも理解できるのである。つまり、「自然は征服すべき対象である」という「西洋的な認識」のもとで、「経済的な成長」や「物質的な奪い合い」などが発生したことが、「マネー大膨張」の真因だったものと考えられるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「過去100年余りの期間に、どのような商品が産み出され、また、経済成長に伴って、どのような貨幣が創り出されたのか?」を正確に理解することとも言えるのである。別の言葉では、「お金の性質」である「貨幣がストック(残高)であるために、ハイパーインフレにより、最終的に価値を失う可能性」を考慮しながら、今後、「どのような貨幣が、どのような商品に向かうのか?」などを、詳しく、かつ、正確に理解することである。
そして、これから想定される展開としては、「大量に存在するデジタル通貨が、きわめて小さな実物資産の市場に殺到する事態」であり、このことは、「劇場の火事」に例えられる「ボトルネック・インフレ」を意味しているものと理解できるのである。つまり、「影も形も存在しない『単なる数字』が、現代の通貨となった現状」において、「裸の王様」のような転換が発生する可能性のことでもあるが、実際には、「バブルの崩壊後」に、初めて、どれだけ異常な事態が発生していたのかに気付かされる可能性も想定されるようである。(2023.8.24)
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ゼロ金利終了後の世界
現在、多くの人が模索し始めたことは、「ゼロ金利の終了後に、どのような時代、あるいは、どのような世界が訪れるのか?」ということでもあるようだが、この点を理解するためには、「なぜ、過去40年余りの期間、先進各国の金利が低下を続けてきたのか?」、そして、「なぜ、日本で20年余りの期間、実質的なゼロ金利が継続可能だったのか?」の分析が必要な状況のようにも感じている。
より詳しく申し上げると、「1913年に創設されたFRBが、過去100年余りの期間、どのような役割を果たしてきたのか?」を理解することでもあるが、今回の「約40年間の金利低下」に関しては、「日本におけるバブルの発生と崩壊」が、前半部分に対して、大きな影響力を持ち、また、後半の「先進各国のゼロ金利」に関しては、「デリバティブのバブル」が、大きな役割を果たしたものと想定されるのである。
別の言葉では、「1997年にタイから始まった信用収縮」以降、「デリバティブの大膨張」が発生し、その時に創り出された「大量のデジタル通貨」が、「金融抑圧」という「金融市場の価格コントロール」を可能にしたものと考えられるのである。つまり、「金利を始めとして、すべての金融市場で、メガバンクが価格を統制した可能性」であり、現在では、この点に関して、さまざまな犯罪が判明している状況とも言えるのである。
このように、今までは、「大量のデジタル通貨」が、「コンピューターネットワーク」と「デジタル通貨」が作り出した「金融界のブラックホール」という仮想現実の世界で活躍していたわけだが、最近の「世界的な金利上昇」がもたらした変化は、「金融界のホーキング放射」である「実物資産への資金移動」とも想定されるのである。つまり、「実体経済の約10倍」にも達する規模の「世界のデジタル通貨」が、急激に、実物資産へ流れ始めている状況のことである。
そのために、「今後、どのような変化が、世界的に発生するのか?」という「時間と空間の変化」に関しては、「複雑系」の学問が示す「秩序の形成と崩壊のメカニズム」のとおりの展開が想定できるものと考えている。つまり、「2010年前後にピークを付けたデリバティブの金融タワー」が、その後、約10年間で、「約330兆ドルもの世界的な債務残高というもう一つの金融タワーを作り出した状況」に関して、「2023年8月15日から始まった中国版のリーマン・ショック」が、今後、あっという間に、「目に見えない金融ツインタワー」を崩壊させる展開のことである。(2023.8.24)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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