汚染水の海洋流出の難題解決を急げ
- 2013年 7月 27日
- 時代をみる
- 池田龍夫
福島第1原発事故から3度目の夏。暑苦しい防護服を着ての屋外作業を昼間に行うことは、とても出来ない。このため、夜間から午前の涼しい時間帯で作業を進めているという。しかし高濃度放射性物質に阻まれて、作業は難航。汚染水の海洋流出が、当初から心配されていた。
隠蔽体質の東電、やっと流出を認める
東京電力は7月22日、「井戸の地下水位と海の潮位データとの関係を分析した結果、地下水の汚染物質が海へ流出していた」と初めて公表した。原子力規制委員会には18日に報告したというが、東電の対応の甘さだけでなく、隠蔽体質は相変わらずで、情報公開が遅れるとはとんでもない話である。原発事故直後、各国から汚染水の海洋流出を怖れる声が寄せられていたのに、2年以上経過した時点での公表は余りにも遅すぎる。国際的信用を失墜させた責任は極めて重大だ。
廃炉に向けた最重要課題
毎日新聞7月24日付社説は、「福島第1原発では、汚染水が毎日100㌧ずつ増え続けている。地下水の海に放出する計画は地元漁協の理解を得られていない。地中の土を凍らせて壁を作り流入を防ぐ『凍土流水壁』(地下ダム)の完成は15年度の見通しだ。政府は廃炉の工程表作りに関わっているが、汚染水対策は廃炉に向けた当面の最重要課題。地元への説明や予算措置を含めて政府がもう一歩前に出て、でき得る限りの対策が求められている」と警告している。
日経も24日付社説で、「汚染水の発生を減らす抜本策を講じないと、増え続ける汚染水のせいで福島原発の収束作業が滞る事態が予想される。東電の汚染水対策は破綻にひんしていると政府は認識すべきだ。もはや東電だけでは手に負えなくなりつつある。政府が一歩前へ出て世界の知恵を集め、長期的な展望にたった対策を考えて実行に移していく必要がある。汚染水流出によって、海産物の風評被害の再燃が懸念される。福島県外の市場でも、水揚げした水産物の放射能を調べて消費者の信頼回復に取り組んできた。新たな汚染水流出は水産業の復興をめざす関係者の努力を台無しにしかねない。海の汚染状況の把握に政府と東電はもっと力を入れ、風評の払拭にも努めるべきだ」と指摘していた。
鬼気迫る〝潜入ルポ〟に戦慄
また日経は20日付朝刊で、1~2面にわたって〝潜入ルポ〟を展開。「冷却水タンク限界に迫る」と報じていた。「炉心は今も高熱を発し、安定した冷却は円滑な廃炉作業に欠かせないが、循環させる冷却水に1日で400㌧の地下水が流れ込む。冷却水は海に流す処理方法が定まらないまま増加を続け、現在30万㌧。35万㌧現状の容量は目前だ。80万㌧までの増設計画がある半面、自転車操業が避けられない」との報告に戦慄を覚えた。当事者能力のない東電、積極的対応を示さない政府――新たな危機にどう対処すべきか、衆知を集めなければならない。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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