国民の知る権利、情報公開法を踏みにじる最高裁判決 ―情けないNHKの報道姿勢
- 2014年 7月 17日
- 評論・紹介・意見
- NHK坂井定雄西山事件
元毎日新聞記者西山太吉さんほかが「日米沖縄密約文書」の公開を国に求めた、情報公開請求訴訟で、最高裁判所は14日、「探したがなかった」という国の主張を認めた2審判決を追認し、原告側の上告を退ける判決を下し、非開示が確定した。外務省が否定し続けてきた、沖縄返還のさいの基地用地の原状回復費とVOA放送移転費など4,000万ドルを日本政府がこっそり支払った密約について、米国立公文書館で密約の原文(吉野文六外務省アメリカ局長とスナイダー駐日米公使の署名入り)が公開されているにもかかわらず、国側の「外務省でそういう文書は探したが、なかった」という主張を2審同様支持した。沖縄返還交渉の重要な両国代表の署名入り記録文書を、いい加減に失ってしまうほど外務省の文書管理がずさんなはずはなく、意図的に秘密廃棄したか(廃棄記録があるはず)、存在しているのに「見つからない」と嘘を言っているに違いない。さすがに最高裁も、米国立公文書館で署名入り原文が公開されている事実を無視することはできず、1,2審同様、密約の存在そのものを疑うことはなかったが、重要な密約文書を失ったことも、失った経過も明らかにしないで「ないものは仕方がない」を押し通す国、外務省を批判することは一切なかった。
それ以上に最高裁判決が許し難いのは「行政機関が存在しないとした文書の開示を裁判で求める場合は、請求した側が文書の存在を立証する責任がある」という判断を初めて示したことだ。沖縄返還での核兵器持ち込み密約、それに伴う繊維密約のような政府間の重要な密約だけでなく、市役所や区役所まで行政機関が国中に存在し、さまざまな文書が残されている。その中には行政側あるいは行政の長が住民には開示したくない文書も多々あるに違いない。情報公開法に基づき、住民がその文書開示を要求した場合、行政側が「そんな文書はない」と開示を拒否したら、住民はどのようにして、「文書の存在を立証する」ことができるのか。役所に押し入って文書保管場所のカギを全部押し開けろ、とでも最高裁は言っているのだろうか。今後、この最高裁判決を利用して、「そんな文書はない」といって文書公開を拒否する行政機関が上から下まで、増える危険がある。これでは情報公開法が骨抜きになってしまう。そんなことをさせないために、私たちは、もっともっと情報公開を政府省庁から末端の役所まで、要求していかなければならないと思う。
今回の最高裁判決は、国民の知る権利に対する真っ向からの挑戦だ。秘密保護法を強行施行した安倍政権におもねる、あるいは便乗した判決ともいえる。この重要な判決の報道では、NHKの控え目な報道が気になった。TBSの6時台は、判決の内容、西山さんの発言、NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長の鋭い批判を伝えていたし、NHKの6時台も、判決の内容を短いがきちんと伝えていた。しかし、NHKの7時台は、4番目ぐらいにごく短く伝えただけで、9時台のニュースウオッチ9では触れもしなかった。安倍首相ご用命の悪名高い新会長に、ニュース現場が遠慮したのだろうか。
さすがに毎日新聞も朝日新聞もしっかりしていると思ったが、なぜ、朝日(13版)は1面ではなく社会面トップと社説にしたのだろうか。1面トップは「経団連『女性登用計画を』」、1面左肩は「歯止め首相・公明に溝」。社会面を軽視するわけでは決してないが、これは経団連のPRのような記事よりもはるかに重要な、一面のニュースでしょう。
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