原発再稼働の条件は整っていない
- 2014年 7月 19日
- 時代をみる
- 世界平和アピール七人委員会原発
原子力規制委員会が7月16日、九州電力川内原子力発電所1・2号機(鹿児島県)について、新たな規制基準を満たすと認めたため、安倍政権は1・2号機の再稼働を急ぐ方針だが、世界平和アピール七人委員会は18日、「原発再稼働の条件は整っていない」と題する以下のアピールを発表した。
アピールは、「(新たな規制)基準を満たしたからといって、原発再稼働にともなって必要になるその他の事項などは、原子力規制委員会の権限外として何らの検討も行われていないことを指摘したい。これら未解決の課題は、1950年代に日本の原発計画が開始され1960年代に運転が始まった時に問題にされたにもかかわらず、事故は起こらないと根拠なく主張して、技術発展を期待して先送りにされてきたものであり、責任の所在をあいまいにしたまま、これ以上積み残しにして先に進むことは許されない」と述べている。
世界平和アピール七人委は1955年に平凡社社長・下中弥三郎氏、湯川秀樹博士、日本婦人団体連合会会長・平塚らいてうさんら当時の日本を代表する知識人7人で結成された、無党派の知識人グループ。人道主義の立場から平和と核兵器廃絶を内外に訴え続けてきた。
現在の委員は武者小路公秀(元国連大学副学長)、土山秀夫(元長崎大学学長)、大石芳野(写真家)、小沼通二(慶應義塾大学名誉教授)、池内了(宇宙物理学者)、池辺晋一郎(作曲家、2014年7月就任)の6氏。
2014年7月18日
原発再稼働の条件は整っていない
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀 土山秀夫 大石芳野 小沼通二 池内了 池辺晋一郎
原子力規制委員会は、審査を進めてきた九州電力川内原子力発電所1・2号炉について「新規制基準を満たしている」とする審査書案を7月16日に了承し、ただちに科学的・技術的意見の公募を開始した。8月中にも正式な審査書として決定すると伝えられており、政府と九州電力は、これを受けて速やかに再稼働させるとしている。
しかし原子力規制委員会の審査は、過酷事故の防止と発生した場合の拡大を防止する技術的方策について、東電福島第一原発の事故の実態が不明のまま1年前に決めた新規制基準への適合性を調べただけのものである。安全対策設備の中には、審査の終盤に新たに設置がきまったものもあり、九州電力は7月末までの完成を目指して工事を進めていると報じられている。事故時の対策の拠点となる「オフサイトセンター」の改修完了は2015年3月と言われている。これが事実なら、工事完成の確認をしないまま審査終了の結論をだした原子力規制委員会は、責任を持って審査をしなければならない権限を放棄していることになる。
さらに、これらの基準を満たしたからといって、原発再稼働にともなって必要になるその他の事項
① 事故が発生した場合に、影響が及ぶことが予想される範囲の住民の安全な避難計画、
② 発生する放射性廃棄物、特に高濃度廃棄物の処理方法、
③ 使用済核燃料の処理と管理、
④ 廃炉後の解体処理、特に過酷事故を起こした原子炉の処理
などは、原子力規制委員会の権限外として何らの検討も行われていないことを指摘したい。
これら未解決の課題は、1950年代に日本の原発計画が開始され1960年代に運転が始まった時に問題にされたにもかかわらず、事故は起こらないと根拠なく主張して、技術発展を期待して先送りにされてきたものであり、責任の所在をあいまいにしたまま、これ以上積み残しにして先に進むことは許されない。
この審査によって原子力発電所の安全が保証されたものではないことは原子力規制委員会自身も認めており、原発再稼働の条件が整ったかのようにすり替えて喧伝する政府、電力会社、財界などの姿勢は完全な誤りである。
東電福島原発事故から3年を経過したのに、この事故の実態は解明されるに至らず、放射能によって汚染された大量の水や瓦礫などの処理の見通しは立たず、事故収束にはほど遠いままであって、被災者は生活再建の目途すら持てないでいることを忘れてはならない。
2011年以来、事実上原発を稼働せずに今日まで来ることができた日本は、二度と過酷事故が起こることはないだろうという根拠のない願望に頼って、原発の必要性についての合理的説明を欠いたまま原子力社会に戻るのか、原子力に依存しないエネルギー戦略を追求する世界の潮流に沿って進むのかの重大な岐路に立っている。私たちは、国民一人ひとりがこの事態を真剣に考え、未来の世代に対して責任の負える判断と行動を行うよう要望する。
連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
メール: mkonuma254@m4.dion.ne.jp
ファクス: 045-891-8386
URL: http://worldpeace7.jp
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