【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第15号】 (2015年7月8日)
- 2015年 7月 9日
- 評論・紹介・意見
- 杉原浩司
7月8日に行われた衆議院安保法制特別委員会の一般質疑のダイジェストを
お送りします。ぜひご一読ください。
国会がいよいよ緊迫してきました。維新の党と民主党は昨夜から一転して、
「領域警備法案」を共同提出しました。また、維新は安保法案の対案を独
自に提出しました。8日の質疑の最後に、出された法案の趣旨説明がさっ
そく行われました。10日の集中質疑で実質審議に入ります。なお、13日
(月)午前9時から11時55分には中央公聴会が衆議院第一委員会室にて行
われます。
維新、安保対案を国会提出 「領域警備」は民主と共同で(7月8日、日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS08H0C_Y5A700C1MM0000/
※維新の対案と「領域警備法案」については以下の批判をぜひご一読くだ
さい。
「違憲立法」成立に加担する維新の党――「独自案」の本質
(水島朝穂さん「今週の直言」、7月6日)
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2015/0706.html
【声明】[維新独自案]法案の修正ではなく、閣議決定の見直しを
(川崎哲・集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=283
★発売中の『世界』8月号に当研究会の論考が掲載されました。こちらも
ぜひご一読ください。
<安全保障法制の焦点 3>
http://www.sjmk.org/?p=300
論点12 殺し、殺されるリスクは増大するのではないか
論点13 なぜホルムズ海峡にそれほどこだわるのか
論点14 中国の「脅威」はどこまでリアルな話なのか
論点15 行政権力の肥大化は「いつか来た道」ではないか
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【7月10日(金)「安保法制」特別委員会質疑】
※総括的集中質疑(7時間):首相出席、NHK中継あり
衆議院インターネット中継 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
9:00~9:25 小野寺五典(自民)
9:25~9:45 上田勇(公明)
9:45~10:45 岡田克也(民主)
10:45~11:35 細野豪志(民主)
11:35~12:00 大串博志(民主)
休憩
13:00~13:34 長島昭久(民主)
13:34~14:08 辻元清美(民主)
14:08~14:38 松浪健太(維新)
14:38~15:08 村岡敏英(維新)
15:08~15:35 井上英孝(維新)
15:35~16:01 小熊慎司(維新)
16:01~17:00 穀田恵二(共産)
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【7月8日(水)「安保法制」特別委員会 質疑ダイジェスト】
一般質疑(7時間):NHK中継なし
衆議院インターネット中継(7月8日アーカイブ)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45112&media_type
◆北側一雄(公明)
「安保環境の変化の一番の要因は軍事技術の高度化だ。北朝鮮の弾道ミサ
イル能力は?」
中谷大臣「長射程化、高性能化、多様な攻撃手段の開発などをしている。
核兵器の小型化、弾頭化に至っている可能性もある。対処については新ガ
イドラインで日米協力を強化するとしており、BMD対応イージス艦の増強
や経ヶ岬(京都府京丹後市)、車力(青森県)にTPY2レーダー(Xバンド
レーダー)配備などを行っている」
◆原口一博(民主)
「宮沢財務相(当時)は平成12年(2000年)に「日本が外国で武力行使す
ることは決して日本のためにならない」と答弁されていた。どう思うか?」
中谷「戦争体験者の貴重な発言だ。海外派兵は一般的に必要最小限度を超
えるものであり、憲法上許されない」
◆原口一博
「1997年のガイドラインと2015年の新ガイドラインを読んだが、英文の
「兵站」を和文では「後方支援」に、「双務的責任を負う」を「主体的に
判断する」に、「諜報をシェア」を「情報を共有する」と訳している。言
葉のニュアンスがかなり異なっている。齟齬があればオペレーションに支
障をきたし、国民の理解を妨げる可能性がある。表現を改めるべきではな
いか」
中谷「例えば、「後方支援」と「兵站」はどちらも作戦部隊への補給、整
備、補給と内容面では共通する。97年のガイドラインで用いた表現を今回
も使っている」
◆国会図書館職員
「新ガイドラインに「戦闘捜索活動を含む捜索救助活動」とある。97年の
ものには「捜索救助活動」のみだ。いったん開始したら実施区域を外れて
もできる書きぶりであり、法律ができないとガイドラインを実行できない」
中谷「いずれか一方を利する状況での戦闘捜索は念頭にない」
◆原口一博
「米兵に対しても戦闘捜索活動を行うのか?」
中谷「重要影響事態では法律に従い支援する。自衛隊自身が戦闘捜索する
のは想定しておらずできない」
原口「法が成立しても米兵を助けないのか? それは法文のどこで担保さ
れているのか?」
中谷「戦闘現場では活動しないが、新3要件に該当する場合はできる」
◆原口一博
「イラクでの空輸活動に関する名古屋高裁の判決について、「傍論だから
規定されるものではない」との外相答弁がある。今回問題になっている砂
川判決で判決理由と傍論はどこで区別されるのか?」
中村最高裁総務局長
「判決の文言上、外形的には区別できない」
岸田外相「名古屋高裁の傍論は判決を導くのに必要がないのに、付随的に
述べられたもの」
◆渡辺周(民主)
「後方支援で自衛隊員はジュネーブ条約上の捕虜に当たらない」との答弁
があったが、重要影響事態から存立危機事態になった場合は紛争当事国に
なるのではないか?」
岸田「ジュネーブ条約上の紛争当事国だ」
渡辺「同じ自衛隊なのにジュネーブ条約が適用されたりされなかったりする」
◆渡辺周
「大綱や中期防は見直さないのか? 今後、合同演習を増やそうとか、同
じ装備品を使おうとの要求が増えるのではないか? 法案は極東条項を超
えるものであり、日米安保の見直しまで行くのか?」
中谷「大綱、中期防は法改正の方向性と軌を一にしている」
岸田「日米安保も極東条項も変えるつもりはない」
◆寺田学(民主)
「他国による掃海は、第2要件(他に手段がない)を判断する際の考慮要
素になるか?」
岸田「掃海はみんなで協力するものだが、考慮要素にはなる」
寺田「掃海の際に安全を確保する行為は必要最小限度の範囲内か?」
中谷「武力行使に当たるものは憲法上できない」
◆辻元清美(民主)
「沖縄での地方参考人会で「法案が成立すれば沖縄が標的にされる」との
意見が多かった。沖縄の負担軽減担当大臣としてどう思うか?」
菅官房長官「法が成立すれば日米同盟が強化され抑止力が高まる。沖縄を
はじめ我が国全体が攻撃される可能性は低くなる」
◆辻元清美
「安保法制を先取りする日米共同訓練が始まっているとの指摘もある。法
案は沖縄の基地機能の強化、固定化につながる。政府は矛盾しているので
はないか?」
菅「約束通り基地負担は軽減できる」
辻元「菅さんらは「PKO法の時も反対が多かった」などと言うが質が全く
違う。元法制局長官や元自民党防衛族までが「今回はちょっと待て、ダメ
だ」と言っている」
菅「いろんな意見の一つひとつには答えない」
◆辻元清美
「国会議事堂内でもテロ対策訓練が行われた。先日中谷大臣はこの法案で
テロを減らせると答弁したが認識が甘い。イラク戦争後、テロは10倍に増
えた。日本でもテロは排除できないのではないか?」
中谷「テロはいつ起こるか予測できない。国際社会が一丸となって抑止力
を発揮してテロ発生を防ぐべきだ」
◆辻元清美
「この法案はテロを呼び込むと見る国民の方が正しい」
中谷「国際社会が協力して対処する事がテロのリスクを下げることになる」
辻元「公海上で自衛隊艦船が爆撃されたら武力攻撃事態になるのか?」
中谷「我が国への組織的計画的な攻撃が発生したかで判断する」
辻元「それでは後方支援が一挙に戦争になりかねない」
◆辻元清美
「安倍さんの自民党の番組での「菅くん、麻生くん」の例えは軽すぎる。
国民はよほど勉強している。こんな事はやめさせるべきだ」
菅「理解を進める一つの手法ではないか」
◆辻元清美
「日本には54基の原発があり、核爆弾を抱え込んでいる状態だ。有事に米
イージス艦は来援を含めて多数になる。日本のイージス艦は常時動けるの
は3隻。米艦防護は現実的に無理だ。ユニットで動く米艦隊に自衛艦が入
っていくのか? 無理がある」
中谷「だから訓練し計画を立て安全確保していく」
◆辻元清美
「後方支援の際にジュネーブ条約が適用されないなら、自衛隊員は「武装
した文民」ということか?」
岸田「国際人道法の原則に則って考える。拘束されたら即身柄の解放を求
めていく。基本的に捕虜と同等に扱われると思う」
◆足立康史(維新)
「民主党の枝野幹事長が7日に「(維新は)非常識だ」と発言された。我
が党執行部は大人であり反論しないが私は子どもだ。「与党に手を貸すこ
とになる」のはどちらか? 維新は採決に応じるとは決めていない。維新
案を含めて十分審議されれば当然採決に応じるが、審議が尽くされぬ時は
考えなアカン」
◆畑野君枝(共産)
「米軍等の武器等防護は米側のニーズで盛り込まれたのか?」
中谷「我が国として主体的に判断したもの」
畑野「新ガイドラインに平時からの「アセット防護」が入ったことに応じ
て盛り込まれたのではないか。平時から米艦を防護するのか?」
中谷「個別具体的に判断する」
◆畑野君枝
「第七艦隊の洋上司令部がある横須賀基地の米揚陸指揮艦ブルーリッジに
海自司令官を派遣している」
中谷「相互運用性向上のため、連絡官として派遣している」
畑野「交わしている覚書を出してくれと言っているのに出さない」
中谷「細部を申し上げるのは控えたい」
畑野「覚書を出すよう要求したい」
◆畑野君枝
「米イージス艦にCEC(共同交戦能力)という、敵ミサイルの情報を共有
し即時に反撃できるシステムが搭載されており自衛隊も導入する。予算は?」
黒江防衛政策局長「1隻14億円で2隻」
畑野「自衛隊のCECは日米共同運用するのではないか?」
中谷「憲法上問題ない」
◆宮本徹(共産)
「原口議員の「墜落した米軍パイロットは救援しないか」の問いに答えて
いない。法案に戦闘現場でも捜索救難すると盛り込んだのは米国からの要
請か?」
黒江局長「捜索救助活動の途中で放棄して休止するかどうかについては、
人道的な側面を勘案して、部隊の安全確保を前提に救助可能とした」
◆宮本徹
「米軍が捜索救難を軍事作戦の一環と位置づけていることを認識している
か?」
中谷「承知している」
宮本「大変危険な活動であり、携帯型の地対空ミサイルでの撃墜もあり得
る。戦闘現場での活動であり、自衛隊に戦死者が出るのではないか?」
黒江局長「既に救助を開始しており安全が確保できる時に限る」
宮本「戦闘現場で安全確保などできるのか?」
◆宮本徹
「(捜索救難で)どうやって上空から相手の武器を判断できるか?」
黒江局長「空中のセンサーだけでなく様々な手段で情報を得て判断する」
中谷「一概に言うのは困難だが、救助活動の実施区域で武器の射程などを
判断できる場合を想定している」
宮本「憲法9条を持ち海外での武力行使が禁じられている自衛隊が行うべ
きことではない。米軍がやればいいだけの話だ」
「法案にある「既に遭難者が発見され救助を開始している時」のスタート
時点はいつか?」
中谷「捜索救助を行う部隊等が遭難者の所在する場所に到着し、既に救助
活動を始めている場合を言う。まだ発見できずに捜索を続けている場合や
遭難者の所在する場所に向かっている段階は含まれない。そうした場合に
戦闘が始まれば部隊等が現場に赴き救助活動することはない」
◆宮本徹
「戦闘現場での捜索救難活動の際、武器使用は?」
中谷「自己や自己の管理下に入った者を防護するための自己保存的な武器
使用ができる」
宮本「戦闘現場での任務遂行の武器使用であり武力行使そのものだ。自己
保存なら活動中断ではないか。活動継続の武器使用が自己保存として成り
立つなら、今までの政府解釈の積み上げは崩れる」
中谷「捜索救助活動は人道的見地から敵味方の区別なく行うもの。仮に戦
闘行為が行われている現場で安全確保される限りにおいて例外にあたる捜
索救助活動を継続しても武力行使に当たらない。任務遂行の武器使用では
ない」
※一般質疑終了後、那覇市とさいたま市での地方参考人会について、今津
寛、江渡聡徳議員からわずか5分ずつ早口で形式的な報告。
※ここで質疑終了と思いきや、続けて本日8日に提出された法案(維新対
案、維新民主共同案)の趣旨説明。10日の集中質疑で政府案と並行して質
疑する段取りの模様。
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<特別版 第14号(7月6日の埼玉参考人会質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=304
<特別版 第13号(7月3日の集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=297
<特別質疑版 第12号(維新独自案発表と研究会声明)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=290
<【声明】[維新独自案]法案の修正ではなく、閣議決定の見直しを>
http://www.sjmk.org/?page_id=283
<特別版 第11号(7月1日の参考人質疑・一般質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=278
<維新「独自案」に関わる3つの論点>
6月29日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=265
<特別版 第10号(6月29日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=275
<特別版 第9号(6月26日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=255
<特別版 第8号(6月22日の参考人質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=251
<特別版 第7号(6月19日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=247
<特別版 第6号(6月15日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=241
<特別版 第5号(6月12日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=239
<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
http://www.sjmk.org/
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◇発売中の『世界』8月号に当研究会の論考が掲載されています。
http://www.sjmk.org/?p=300
◇『世界』7月号、6月号にも論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5469:150709〕
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