「改憲か、護憲か」ではなく、いま敢えて「壊憲か、活憲か」を問う。
- 2016年 9月 3日
- 時代をみる
- 澤藤統一郎
明日(9月3日)、下記のとおり「壊憲か、活憲か」(ブックレットロゴス)の出版記念討論集会がある。
と き 2016年9月3日(土)午後1時30分
ところ 明治大学リバティタワー6F(1064教室)
司 会 平岡 厚
参加費 700円
小さな集会だが、お越しいただけたらありがたい。
なお、同書は次の4編から成る。
「〈友愛〉を基軸に活憲を」
村岡 到(季刊『フラタニティ』編集長)
「訴訟を手段として『憲法を活かす』─岩手靖国訴訟を振り返って」
澤藤統一郎(弁護士)
「自民党は改憲政党だったのか」─「不都合な真実」を明らかにする
西川伸一(明治大学教授)
「日本国憲法の源流・五日市憲法草案」
鈴木富雄(五日市憲法草案の会事務局長)
集会では、各執筆者が30分ずつの持ち時間で各テーマにしたがって報告し、「壊憲か、活憲か」について意見交換する。
同書は、四六判128頁、価格は1100円+税。
詳細は、下記URLをご覧いただきたい。
http://logos-ui.org/booklet/booklet-12.html
お申し込みは、下記まで。
ロゴス〒113-0033東京都文京区本郷2-6-11-301
tel 03-5840-8525
fax 03-5840-8544
**************************************************************************
さて、「改憲」とは憲法の改正手続に則って憲法典を改正することである。天皇制を廃止したり、生存権規定を具体化したり、形式的な平等ではなく実質的な平等原理を導入するなど、主要な憲法理念を深化させる真の意味での「改正」もあり得るが、今の力関係ではその実現はなかなかに困難と言わざるをえない。
日本国憲法誕生以来、政治日程に上った「憲法改正」の試みのすべては実質的に「改悪」の提案であった。大日本帝国憲法への復古であったり、9条2項を改変して軍事力を保持する提案であったり、統治機構における権力分立から統合への試み。あるいは、民族の歴史・伝統・文化を憲法に盛り込もうというもの。国民の側からの発想ではなく、権力を握るグループの側からの仕掛け。
だから、「改憲」の対語が「護憲」となる現実がある。「護憲」とは、「憲法改悪阻止」とほぼ同義となり、国民意識を一歩抜きん出た水準にある憲法を改悪させることなく精一杯守ろう、という守勢のイメージを払拭しえない。
ところで、憲法はあくまで手段である。社会が目指すべき理念を確認しこれを実現するための手段。だから、大切なものは憲法典それ自体ではなく、その理念が政治や社会にどう生きるかということである。
「改憲か、護憲か」の対抗軸だと、憲法典の改正手続の有無にばかり目が行って、肝心の社会に憲法理念がどう根付き、どう生かされるかが見えなくなるおそれがある。典型的には、改憲が実現せず憲法典の字句は護りえたが、憲法の解釈はすっかり変えられ、本来の憲法の理念は逼塞してしまうという事態。アベ政権の戦争法成立とその運用が典型事例といってよい。
だから今、立憲主義をないがしろにし、憲法の解釈をねじ曲げて、憲法の理念をことごとくぶちこわす「壊憲」と対置した、「活憲」の理念を打ち立てたい。「護憲」の守勢のイメージよりは、随分と積極性が感じられるではないか。
「活憲」は、解釈改憲を許さない、というだけでなく、日々の暮らしの中に、あるいは政治に、社会に、地方自治に、司法に、教育の場に職場に家庭に、憲法の理念を活かそう、という呼びかけでもある。そうすることによって、憲法は人びとに身近で大切な存在となり、活憲の試みの積み重ねが、護憲=憲法改悪阻止にも結実するものと思う。
明日(9月3日)の討論集会は、そのような問題意識の集いになる…はずである。
ブックレットの執筆者4人が、それぞれに報告する。持ち時間は各30分。
なお、同社は、「友愛を基軸に活憲を!」をテーマに、季刊『Fraternity フラタニティ』(友愛)を発刊している。最新号は、No.3 2016年8月1日。
ここにも、「私が携わった裁判闘争」を連載している。
下記のURLを開いていただいて、出来れば定期購読していただけたらありがたい。
http://logos-ui.org/fraternity.html
(2016年9月2日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2016.09.02より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=7411
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔eye3629:160903〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。