【報告】院内ヒアリング集会「使用済み核燃料を問う~核のゴミを放置して原発稼働してはいけない~」
- 2016年 12月 24日
- 評論・紹介・意見
- kimura-m
経産省前テントひろばが12月20日(火)に実施した院内ヒアリング集会の報告です。
是非ご欄願います。
●2016年12月20日(火)対経産省・資源エネルギー庁ヒヤリング 使用済み核燃料問題について(報告)
淵上太郎
今回は今までの事実関係の把握に少し突っ込んだ質問が行われましたが、最初に11月25日の回答の再確認(質問0)から始めました。
1.質問0について
全量直接処分(ワンススルー)の場合に比べて、全量再処理する場合の高レベル放射性廃棄物の容量(重さではなく)が4分の1に「減容」されるとい経産省の主張に関連して、その説明は、「使用済燃料」の燃料集合体を収容した(PWRの場合は4体)キャスク(又はキャニスタ)の1本の容量(イとする)と、再処理をして出来上がる高レベル放射性廃棄物としてのガラス固化体を収納したキャスクをさらにオーバーパック(炭素鋼)で包んだもの(ロとする)1本の容量を比べて「明らかに4分の1である」と主張するものでした。今回の再確認は、「もしそうならば、明らかにイの本数はロの本数(22,700本)と同じと考えて良いか」と確認するのものでした(そうでないと、線量直接処分の埋設容量に比較にいて再処理の場合は4分の1にはならない)。
だが、「1GWhの発電量に対して云々」と説明が始まったので、時間が相当にタイトで十分な時間がないため、「そういう新たな概念を持ちだして説明されても困る。全量直接処分の場合のキャスクの数を教えて欲しい」と質問を繰り返すことになり、結局約「2万本」ということで、容量において「まあ大体に於いて4分に1になる」ことが確認されました。
但し、全量再処理の場合は、「高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)」の他に、膨大な「低レベル放射性廃棄物」も発生します(全量直接処分の場合は原理的に「低レベル放射性廃棄物」は発生しない)。しかし、ヒアリングの経過として、高レベル放射性廃棄物について糺すという流れであったので、これまでは「低レベル放射性廃棄物」については問題提起をしてきてはいません。
次の確認は、前回(11月25日)の質問は「泊原発以下の原発についての1炉心の装荷燃料の重量が記載されていますが、重量ではなく幾つの燃料集合体が装荷され、その集合体の燃料棒の本数は幾つか教えてください」というもので、泊原発、女川原発、福島第1原発について、再度確認したいということでした。けれども今回(12月20日)の質問書には「泊原発と女川原発及び福島第1原発における使用済核燃料集合体の数についてもう1度教えて下さい」と書かれていて、こちら側に誤解を与えることになったと思われます。本来今回の質問書は「泊原発と女川原発及び福島第1原発の炉心に装荷される燃料集合体の数についてもう1度教えて下さい」とするべきでした。山崎久隆さん(以下Yさん)がおっしゃったことは自身はその通りなのですが、あらぬ誤解を与えるような質問文でした。
次に、六カ所再処理工場の竣工延期問題で、前回では単に「トラブル等による延期ではなく、原子力規制委員会審査によるもの」という回答であったのに対し、「そうではないでしょう?」というものでした。回答は「(3・11)原発事故以前の延期は、設計変更、新たな課題の発生」ということでした。
しかし設計変更も新たな課題の発生も決して軽々しい問題ではなく、設計自体に極めて厳しい内容が要求されるのは当たり前のことであって、また設計予定通りに実際がつくられるか、設計通りに各機器が稼働するかは別の問題であり、フランスからの直輸入(現に数名のフランス技術者が再処理工場に常駐している)であっても簡単なことではないということが如実に示されてきたのであって、「わが国において再処理術は完成している」などということは断じて言えない、ということが引き続き追求されなければなりません。
2.質問1について
①の質問は、使用済燃料が行き場もなく溜まり続けている現状について、「このような状態に立ち至っている根本的な原因についてどうお考えか」というものだが、「根本的」ということについて全く理解しないまま、単に「最終処分場が決められなかったのは、最終処分場の決定において、手あげ方式がうまくいかなかったということ」「今度は政府主導で」と言っても、回答にはなっていない。
②③の質問については、経産省・資源エネルギー庁の守備範囲ではない、ということだが、誠にケシカランことである。Yさんが追求した「乾式キャスクと貯蔵プールではどちらが安全か」についても、これは「原子力規制委員会の問題で経産省としてしての回答は差し控えたい」という。今後も「安全性とか危険性」ということについては、「一切答えない」という構えなのだろうか。経産省を追求する論理構造をしっかり確立していかねばならないのはわれわれの課題である。
④乾式キャスクについての運用状況は、現在福島第1と東海原発のみである、玄海や川内では建設・運用されてはいない、リラッキングは既に行われており、その結果としての数字が、示されている(資料の「1)使用済燃料貯蔵能力の拡大 各原子力発電所(軽水炉)の使用済燃料の貯蔵状況」)との回答。
⑤使用済燃料の貯蔵プールにおける冷却期間は一概に言えないが、7年間以上である。燃料貯蔵プールとの対比については答えなかった。
3.質問2、3、4について
これらについては、殆ど内容ある回答は得られませんでした。すなわち、使用済燃料の置き場の逼迫についての危機感を持っているかどうかには答えず、「(使用済燃料対策に関する)アクションプランで引き続き努力していく(実は、乾式キャスクにしてしまうと各原サイトが原発のゴミ捨て場になってしまうことに対する地元の反発は避けられなくなる――Yさん指摘)」、「規制委員会が認めたものは引き続き再稼働を進めて行く」等にとどまりました。
4.質問5について(リサイクル原料としての使用済燃料の価格について)
電気事業会計規則取扱要領51条で「備忘価額として千円が計上されることになっている」が、これ以上については解らない、との回答でした。回答になっていません。
5.質問6について
各原発等で発生する濃縮廃液や固形物は、ドラム缶に詰めて「六カ所」に送っている、との回答。こちらも原発現地と六ヶ所の量を尋ねているのに回答になっていなかった。
●感想及び反省点
1.質問等に対する担当の回答者は、前回(11月25日)のヒアリングでも感じたことなのだが、質問を十分に理解していないか、あるいは十分な検討をした上での回答がなされていない、と感じられた。
2.①経産省側の回答時間20分、②此方からの若干の確認・再質問に20分、③会場からの提起や質問20分という予定で、この按分にかなりこだわって進められたが、②の時間が余りにも短かった。全体としての時間が短すぎるのである。制限時間が1時間ということであるとすれば、逆に質問事項を更に絞って対応しないと、追求は中途半端に終わってしまうということを強く感じた。
3.質問書は出来るだけ正確であることも重要な要件となるし、この点でも一定の不備があったと思われる。また参加者の立場を尊重するとすれば、こちら側の事前の打ち合わせについても出来るだけ質問の趣旨等について共有しておく必要がある。
4.安全性や危険性について、経産省の「一切応えない」という構えをどうのように突き崩していくのか。一工夫必要である。
5.参加者が多くなかったという問題と経産省の態度(報道等に関する規制の強化)を直ちに結びつけて評価するのは、如何かと思う。参加者が少ないのは開催内容等が必ずしも十分伝わっていないことや年末における様々なバッティングや2週連続という問題もあったと思う。
6.同日の運営委員会でも若干の問題となったが、次回の「ヒアリング」では、報道等に関する規制の強化に反対して「民主主義的な開催の回復」をテーマとし、これ1本で開催されるよう要求していくことが確認された。
以上
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6426:161224〕
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