紅葉のシーズンは終わったはずだが~久しぶりの京都(2)平等院から三月書房へ 宇治上神社から平等院へ
- 2016年 12月 25日
- カルチャー
- 内野光子
「山宣」墓参の後は、「花やしき」の山本氏と別れ、部屋の窓から見えていた朱塗りの喜撰橋を塔の島へと渡る。辺りは護岸工事たけなわで、観光シーズンを外して実施しているとのこと。対岸へは、朝霧橋を渡る。橋の下は、天ケ瀬ダムからの流れでかなりの早さである。橋を渡り切ると右正面に福寿園の店と工場があり、製茶の手順が分かる展示室もあった。
反対側に進むと宇治神社、境内ですれ違った女性に、新しい鈴が奉納されたばかりなので、お参りしてください、と声をかけられた。なるほど、新しく太い鈴緒であった。早速拝礼の後は綱を振ってみるが、鈴の音が鈍い。房が閉じられた木枠には奉納のスポンサー「山崎製パン」などの文字が見える。さらに、奥の宇治上神社へ向かうと、今度は、数人で、赤い鳥居に太いしめ縄をしつらえているさなかであった。先の鈴と言い、初詣の備えなのだろうか。広い境内を一回りした後、与謝野晶子の歌碑にむかう。この辺りも、まだ、紅葉が残る。斜面の上から、何やら元気な声がと思えば、朱色のスモックの園児たちが列をなして、手を振ってくれていた。保母さんとともに、「コンニチワー」の大合唱である。
宇治神社、奉納されたばかりの鈴
宇治上神社の鳥居を出た帰り道にも出会った別の園児たち、素晴らしい散歩コースですね、「コンイチワ」と先に声をかけられ、「イッテラッシャーイ」を繰り返す
ふたたび二つの橋を渡って、散策路から平等院に入った。ここはさすがに、観光客が多い。鳳凰堂の見学はスルーして、源頼政の墓所や鳳翔館を回り、池の前のベンチで一休み。昼食は、どこにするか迷いながら、表参道半ばのお茶の中村藤吉店の茶そばに決め、スイーツの誘惑にも負け、二人で一品、いただくことに。
源頼政墓所から鳳凰堂を望む
茶そばとスイーツを。前の店では、「中村茶」を勧められてました。〇に十の商標は、中村藤吉の「藤」の
音読みに由来するとか、店員さんは、「はっきりしないのですが、と言われています」とのことでした
夕食は、娘と京都で約束しているので、早めに戻り、立ち寄りたいところがあった。島津製作所の資料館と三月書房だった。
島津製作所創業記念資料館
今日の宿、八条口前の新都ホテルに荷を預け、地下鉄の市役所前下車、京都ホテルオークラ、日本銀行の角をぐるりと回る。老舗の京都はテル、夫は、いつ「オークラ」が付いたんだろうというので、後で調べてみたら、業務提携をしたのが2001年だったらしい。島津製作所創業記念資料館は、なかなか風情のある建物で、その展示内容も充実していた。1975年、創業百周年記念としてオープンしたという。ノーベル賞の田中耕一さんのコーナーもあるが、明治のものづくりの精神を脈々と受け継ぐ企業の面目躍如といったところか。学校の顕微鏡から家庭の電化製品、病院の医療機器、航空機器にいたるまで、どこかで島津製品にお世話になっていたような気がしてくるほどである。
中京区木屋町二条南、創業時の社屋で、近代化産業遺産に認定されたそうだ
資料館2階から望む
三月書房
そしてすぐ近くのはずの本屋さん、三月書房に向かった。詩歌関係の書籍が充実していることで知られる。そのホームページの短歌コーナーで、私のブログを歌人のブログの一つとしてリンクしてくださっていることを知って以来、一度訪ねたいと思っていた。店に入って、そのことを伝えると、「まもなく帰るはずですが、主人は、いま出かけていまして」とのことだったが、ほんとにすぐに戻られ、ご主人の宍戸氏にお会いすることができた。三月書房は新刊の本屋さんなのだが、つい、いただく歌集の始末を、皆さんどうされているのだろうという話になってしまった。「出版される歌集の90%以上は、古書店でも買い取りません」ときっぱりおっしゃる。たしかに、数年前、私も東京の古書店に発送した6箱目以降断られた経験がある。
ようやくたどり着いた三月書房、中京区寺町通二条上ル西側
娘と待ち合わせたレストランでは、その夜からクリスマス・メニューをはじめたところとのこと、私たちは、まず、ワインや特製カクテルで、乾杯となった。
中京区河原町通理に条下ル一之船入町、フォーチュンガーデンにて
初出:「内野光子のブログ」2016.12.24より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/12/post-b193-1.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔culture0381:161225〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。