物理学者入口紀男氏の汚染土と国益への所見
- 2019年 6月 4日
- 評論・紹介・意見
- 山端伸英
- 栽培されてバイオマス発電の燃料となる植物が汚染されると、大気の放射能汚染が発生するので、汚染土は栽培される植物の根が届かないように「深く」埋設することが必要です。
- 汚染土は地下水に触れて汚染が地下で広がらないように、「浅く」埋設することが必要です。
日本政府・環境省とNHKは共謀で次のような放射能汚染土(除染土という言葉に騙されているのか、国民は???)の農地利用を5月24日発表している。それについて物理学者入口紀男氏に聞いた。
除染土の再生利用の作業を公開
05月24日 19時23分
除染で出た土などを再生利用する実証事業が全国で唯一進む飯舘村の長泥地区で、土の放射性物質の濃度を測る作業などが報道陣に公開されました。
環境省は、福島第一原発の事故にともなう除染で出た土を全国で再生利用する計画ですが、各地で反発が相次ぎ、実証事業は飯舘村の長泥地区だけで進められています。
長泥地区では、村で行われた除染で出た土を汚染されていない土で覆い、農地として利用する計画です。
再生利用される土は1キロあたり5000ベクレル以下のものに限られ、24日は「再生資材化施設」と呼ばれる施設で、異物を取り除いて、放射性物質の濃度に応じて分別する作業が公開されました。
環境省によりますと、濃度が基準を下回った土をこれまでにおよそ100立方メートル確保したということで、来月以降、こうした土が埋まった農地で、バイオマス発電などの燃料として使う作物が栽培される予定です。
長泥地区の鴫原良友区長は、「もろ手を挙げては安全安心とは言えないが、住民の同意を得て決断した。環境省には落ち着いて事業をやってもらいたい」と話していました。
環境省福島地方環境事務所の細川真宏中間貯蔵部長は、「住民と、思いや情報を共有しながら、事業をさらに前に進めていきたい」と話していました。
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入口紀男氏のコメント::::
1キログラムあたり 5,000ベクレルですが、土の比重を考えると 1リットルあたり5,000~10,000ベクレルですね。
セシウム137とストロンチウム90が半減期(約30年)を繰り返して 1,000分の 1になるには少なくとも「300年」かかります。今から300年昔は徳川吉宗が享保の改革をやっていたころですね。
そのように「深く」埋設して、かつ「浅く」埋設することなど、できるわけがありません。
また、雨水で濡れたり、天日で乾いたりすることを長い年月をかけて繰り返すと、局所的に濃淡ができて、濃いところは放射性物質の「鉱脈」となり、国の基準を上回る箇所もできるでしょう。
*入口紀男氏のFACEBOOK 5月27日より承諾を得て投稿。
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また、次の判例を挙げて『国益』をめぐる司法の姿勢についても紹介しておられる。
同じく入口紀男氏のFACEBOOK、5月27日分より(御承諾済み):::::
大飯発電所3・4号機の第一審(福井地裁)の判決理由
第一審の判決主文はその後第二審で覆(くつがえ)りましたので「既判力」はありませんが、樋口英明判事の「ヒューマニズム」がその「判決理由」(下記)の中に今も生き続けています。
判決主文: 「大飯発電所3・4号機の原子炉を運転してはならない」
判決理由(抄録):
「被告(政府・関西電力)は本件原発の稼動が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている。
このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。
また、被告は、原子力発電所の稼動が CO2排出削減に資するもので環境面で優れている旨主張するが、原子力発電所でひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」
― 裁判長裁判官 樋口英明(2014年5月21日)―
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30数年前、日本から離れる際、本の整理をせざるを得なくなったとき、武田泰淳氏の『滅亡について』という装丁の立派な本を手にして古本屋で一瞬躊躇したことがあるが、現在の日本と日本国民が、異常な元気さで国土を破壊している姿に驚くほかない。何という人間性に対する集団的裏切りなのだろうか。この集団が一部の利益にしたがっているのか、国民の多数が小選挙区などの保守的手段で騙されているのかは、もはや『戦後』に考えればいいのではないか。もちろん、悲観するのは早いかもしれない、しかし、この官僚たち、大手メディアの保身主義的堕落の平常心を目の当たりにするとき、早すぎもしないのだ。国土は明らかに破滅に瀕している。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8693:190604〕
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