平成29年から令和2年まで何年? すぐわかりますか?
- 2019年 6月 27日
- 評論・紹介・意見
- 天皇制澤藤統一郎
何度も繰り返すことになるが、元号という代物。使用期間限定、使用地域限定という致命的欠陥をもった紀年法。日常生活にもビジネスにも、不便極まりない。こんな欠陥製品、みんなでボイコットするに如くはない。
ところが、国家は国民に、こんな不便な欠陥製品を使わせたくてしょうがない。事実上の使用強制である。なぜか。元号が天皇制と結び付いているからだ。天皇制という、統治の道具の一部として極めて有用だからなのだ。権力にとっての有用性は、被治者国民にとっての有害物である。
だから、元号とは、不便であるだけでなく、有害なのだ。国民主権に、民主主義に、精神の自由保障に有害なのだ。
大上段に、天皇制イデオロギーの危険やナショナリズムへの警戒を前面に出しても、通じない人には通じない。そのような人にも、元号の欠陥性、元号を使用することの不便は、よくわかってもらえる。
本日(6月26日)、ある消費者関係の弁護団メーリングリストに、こんな投稿が掲載された。その弁護団で共通に使用している書式の日付欄を、「平成」から「令和」に変更するという事務手続に関しての意見。
△▼先生、お疲れ様です。茨木です。
書式の微修正の中味は「平成」を「令和」に変更したということのようですが、純粋に合理的に考えれば、元号表記より西暦表記の方が容易(4桁の数字だけだ)且つ便利ですから、元号部分を省いたらどうでしょうか。4桁の数字では、何か不都合がありますか。
例えば、平成29年に受任した事件が、令和2年に解決したという場合、何年かかったんだ、とすぐわかりますか。頭の中で「平成29年を西暦に換算すると2017年だな、令和2年を西暦に換算すると2020年だな、すると2020から2017を引くと3だから、3年もかかったんだ」と、無駄な作業を強いられるのではないですか。西暦をつかわないことを徹底するならば、何年かかったんだということを、頭の中といえども、西暦に換算することなく算出する必要があります。面倒ではないですか。元号表記を徹底するという人は、多分、「2020年オリンピック」と言わず、本年4月迄は「平成32年五輪」、5月からは「令和2年五輪」とでも言ってるのでしょうが、そこまでこだわる意味がわかりません。
書式の話に戻ると、上記の意見は、純粋に合理性の観点からの意見であって、ここでは、その観点からだけで決めても特に不都合はないのではないか、西暦表示にすれば△▼先生がわざわざ時間と神経を使って微修正作業をする必要もないのではないか、と愚考するものです。
年の前を空白にしておけば、どうしても元号を使いたい人は、4桁の数字の代わりに、2文字の元号と1又は2桁の数字も記載できますから、不都合はないでしょう。
ちなみに、みずほ銀行の預金口座の入出金年月日の表記も、元号から西暦に移行しました。三菱UFJ銀行は、依然、元号ですから、31年から1年に戻りました。ある程度時間がたった時点で、三菱UFJ銀行の預金口座入出金年月日を見ただけでは、平成なのか令和なのか判断に迷う事態が生ずる可能性があります。
なるほど、分かり易い。わざわざ、「上記の(私の)意見は、純粋に合理性の観点からの意見」と強調するなど、心憎い。投稿者は、親しい茨木茂さん。私も見習いたい。
**************************************************************************
茨木さんの発言は、端的に「不便な元号使用を止めよう」というもの。似て非なるものに、「国の機関は『西暦併用を認めよ』」とする要求の運動もある。そのような運動体から、6月23日に次のような連絡があった。
「西暦併用を求める会」は、「西暦併用を求めるアピール」を2019年6月6日に議員会館において記者会見して発表し、東京新聞、しんぶん赤旗、クリスチャン新聞、社会新報でその模様は広く報道されました。
「元号さよなら声明」への賛同者は833人に及びました。当初は賛同者数が数万のオーダーで増えていくと思っていましたが、なかなか賛同者数が伸びない結果となりました。
しかしながら、私たちの以下の3項目要求は2番目の項目が眼目であるという理解がじわじわと広まっていき、多くの仲間を得て、新たに「西暦併用を求める会」として出発していくことになりました。
1.届出や申し込みの用紙、Web上のページなどにおける年の記載は、利用者が元号を用いなくても済むものとし、また利用者に元号への書き直しを求めないこと。
2.公の機関が発する一切の公文書、公示における年の記載は、元号を知らない者・使わない者にも理解できる表示とすること。
3.不特定多数を対象とする商品における年の記載は、元号を知らない者・使わない者にも理解できる表示とすること。
立法・行政・司法の三権の国家機関、地方公共団体の元号のみの年表示をやめさせ世界標準の西暦表示にさせていくことを最終目標にしながら、まず西暦の併用を実現していくことを、粘り強く、様々な団体や市民の有志のみなさんとともに運動を今後とも進めていきたいと思います。
Changeキャンペーンによって、みなさまのご賛同をいただいたことは大きな支えです。今後の運動の発展と継続を決意することができました。特定の立場や団体をベースにしたものではない、市民発の運動を作っていく契機や基盤が構築できたという面では、今回のキャンペーンは成功を収めたと考えます。
何十年もの間元号のみを年表示として恬として恥じない公的機関(国会・内閣・政府・裁判所や諸々の地方自治体)の頑な姿勢を改めさせ、西暦表記もあわせてすることを実現していくという私たちの運動はまだまだ多くの方々の協力と知恵が必要です。
引き続き、「西暦併用を求める会」として活動していきますので、「西暦併用アピール」へのご賛同・ご支援をお願いします。
Changeキャンペーンも、「西暦併用を求めるアピール」として続けていきます。よろしくお願いします。
いろんな人が、いろんな場で、いろんなやり方で、「元号不使用」の声を上げていくことを期待する。
なお、「西暦併用を求める会」は、賛同署名を継続している。趣旨に賛同していただける方は、下記の西暦併用を求める会ブログをご覧になっていただき、ネット署名を。
https://seirekiheiyo.blogspot.com/p/blog-page.html
(2019年6月26日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.6.26より許可を得て転載 http://article9.jp/wordpress/?p=12867
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8764:190627〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。